1/3

第一話

　薄暗い部屋の中、一人PCに向き合っている男がいた。

　織　修二、23歳である。

　彼が見ているのは世界的動画サイトであるMeTubeの動画である。

　画面に映るのは、化粧品レビューで人気急上昇中の女性MeTuberであるミコちゃんだ。

「みっこみっこちゃーんねーるはっじまーるよ～」

　なんとも気の抜けた声により、動画が始まった。彼女は恵まれた容姿をこれでもかと活かしながら新作コスメをレビューしていく。

　恐らく、この動画のメインターゲットは若年層の女性だが、新卒社会人1年目で精神が疲れ切っている彼はミコちゃんを視ることが毎日の癒しとなっていた。

　動画を食い入るように見ていたその時、動画の右下隅にアイコンが表れた。

「ん、なんだこれ？“異世界に行き、人気MeTuberになろう”？」

　なんともふざけた誘導広告だ。修二はそう思いながらも、少し気になってしまった。

　いつもならすぐにでもSKIPの文字を押していただろう。動画ではミコちゃんがリップのレビューを続けていた。そんな動画を背景に、マウスを動かし、広告の上にポインタを移動する。

「まぁ、すぐに戻れ(ブラウザバック)ば良いしな。」

　そう呟き、クリックをした。

　すると、PCから溢れんばかりの光が溢れ、彼の部屋を包み込んだ。

「うわぁぁぁぁ。なんだこれええええ！」

　悲鳴とも取れる声をあげながら、次の瞬間、彼の姿は消えていた。

「みっこみっこちゃーんねーるおっわりだよ～じゃあね～。チャンネル入会よろしく～！」

　部屋にはミコちゃんの声だけが響いていた。