新たな任務
8時00分
マスターは目を覚ました。毎日決まった時間に起きている。
「おはようございます、マスター」
「おはよう」
マスターはいつも起きると決まってデスクに置いてある写真立てに向かって「おはよう」と言うのが日課だ。その写真には小さい頃のマスターであろうか、それときらびやかな女性が写っている。
8時40分
準備を済ませると作戦会議室へ移動した、次の任務とそれの作戦を年密に立てているらしい。あーでもないこーでもないと言いながら、時折パソコンでリザ少尉へとメールを送っているらしい。
10時00分
図書館へ移動すると、戦術指揮や軍事についてかかれた本を読みあさっている。
11時10分
食堂で早めの昼食を取る。
「マスター、一つ質問を宜しいでしょうか」
「なんだい?」
「マスターは好きな女性などはいないのでしょうか?」
「ぶっ!」
質問をすると同時に水を鼻から吹き出してしまった。何かあったのだろうか。
「ごほっ、げほっ、な、何だって?」
「ですから、好きな女性などはいないのでしょうか?」
「何だってそんなことを聞くんだい?」
「マスターは毎日同じ時間に起きて、同じ時間に食事をとり、同じ時間に就寝しています。休日だというのに隙を見ては空いてる時間に筋トレをしたり、図書館へ行ったりしています。これでは、女性と遊ぶ時間がないのではと思いまして、毎日挨拶されている写真の女性がガールフレンドなのでしょうか?」
「あぁ、あの写真の女性は違うんだ彼女は僕の姉だよ、もういないけどね」
「…申し訳ありません」
「謝ることはないよ、昇龍は僕のことを心配してくれてたんだろ?ありがとう」
「ところで、ルナトマのメンバーの中では誰が一番タイプですか?」
「ぶほっ、げほっ」
「僕はルナトマの隊長だからそんな色目で部下を見てはいないよあはは、彼女たちを守るのが僕の任務だからね」
12時00分
部屋に戻ると少し仮眠を取るようだ。
14時00分
ランニングをしに町に出た、毎日3時間ほど走っているようだ。日頃の体力作りも、いざというときに役に立つからということらしい、マスターはとにかく真面目だ。
17時16分
帰ってシャワーを浴びた後、シミュレーション室で訓練しその後夜食を取る。
20時58分
決まって21時には就寝する。寝る前には朝と同様に写真の中の姉に挨拶をしている。こうしてマスターの1日は終わる。
「各員作戦会議室へ集合してくれ」
突然、そんなアナウンスが鳴った。
「皆、よく集まってくれた。これより新たな任務を説明する」
「ここより西にあるエリドという廃墟になった町を知っているだろうか、十年ほど前まではかなり栄えた町だったのだが、ブラギドの襲撃にあい町は壊滅、現在は廃墟となっているがそこにはまだたくさんの資源が放置されたままなのだ、それの回収が今回の任務になる」
「マジかよ…」
カナリアは横に座っていたアンリエッタからそう言うのが聞こえた。
「ここからは私が説明します。主に資源が多くあるであろうポイントは三ヶ所、旧軍事施設跡と、大きな病院があった場所、そして王家の屋敷跡です」
ダンッ
カナリアは突然の音に驚く、アンリエッタが拳を握りしめそれを机に叩きつけたのだ。
「つまり、墓荒らしするって訳か俺達の目的は奴等をぶっ殺すことじゃなかったのかよ!」
「勿論そうだ、しかし、現在医療機器やメイルコアに必要なレアメタルなどが不足している状態なのだ、よってこれも立派な任務ということになる」
「続きをいいかしら、私達は二手に別れて物資を回収します。私とカナリア、ドロシーは病院跡と近くにある軍事施設跡への潜入」
「僕とアンリエッタは王家屋敷跡へとそれぞれ向かう、しかしここで二つ程問題がある。一つはこの区画は微弱な電磁波が放たれておりメイルコアが上手く機能しない、よって生身での潜入となる。そしてもう一つはこれだ」
サリドがそう言うとスクリーンに写真が写し出される。
「なにこれ…」
「個体名グールと呼ばれているものだ。ブラギドの襲撃後に出現したと思われる。人が突然変異したようなもので、強い攻撃性を持っている。やつらの大群に襲われでもしたらひとたまりもないだろう」
「対抗手段はないの?」
「メイルコアが使えない以上は逃げるのが得策だ、ただ奴等は夜にしか徘徊しないらしい、昼間は一ヶ所に集まって眠っている。余程大きな音を立てない限りは出くわすこともないだろう。また、今回は銃の携帯も許可されている。ブラギドには効果の薄い物だが、奴等には効果的だろう。また、メイルコアは装着できないがサポートとして同行させることはできる。困ったときや連絡を取り合う時は随時利用してくれ」
「作戦開始時刻は明日5時00分、西にある廃墟エリド跡へと向かう各員準備にあたれ」
少し気がかりだったのはアンリエッタの様子だ、いつも出撃となると張り切るアンリエッタだったが、今回の任務を聞いたとたん明らかに動揺している様子だった。
部屋に戻ったカナリアは明日の準備に取り掛かる。一人一人に手渡された拳銃はずしりと重い。
「大丈夫ですカナリア、訓練通りにやれば問題はありません」
「分かってる」
明日は早朝からの任務ということもあり今日は早く寝ることにした。