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リザの休日

リザの部屋を出たところで聞き覚えのある声が聞こえてきた。どうやら食堂の方で言い争っているらしい。


「命令違反だぞ、少尉」


「あ?敵は倒したんだからいいだろ」


「そう言う問題ではない、勝手な行動をすれば他にも危害が及ぶ自分1人の問題ではないんだぞ」


「なんだよ、隊長殿は一体しか倒してないだろ俺は5体もやったんだ、誉められる事はあってもとやかく言われる筋合いはないと思うんだが?」


「1人で突っ込んではもしもの時フォローすることも出来ないだろ、もっと手強い個体が来たらどうするんだ」


「なに、隊長殿は俺の事を心配しているわけ?はっはっうける、余計なお世話だっつーの、俺は強いから大丈夫」


「お前だけじゃない、俺は皆を守りたいし誰も死なせたくないその為に皆で協力するんだよ」


「っ、守りたいだと?いざとなったらどいつもこいつも自分の事しか考えないくせに、自分の命は自分で守らないと誰も助けちゃくれない!人なんて所詮自分の事以外はどうだっていいんだよ!俺を守だ?俺はその言葉が一番嫌いなんだよ!」


「何故そんなに助け合う事を嫌うんだ」


「そう言う偽善者は信用できないからだ、いつも裏切るからだ、でなきゃあの時御姉様は…、もういい話すことはこれ以上ない」


「あ、おい!」


アンリエッタとすれ違うときその表情は少し涙を浮かべているように見えた。他人の事情など興味はない私はあの個体Xを探しだして確かめるだけ。しかし、それから数日はアンノウンの襲撃はなく街は平和に見えた。


リザ・ブランケットの休日


12時31分


起床、歯磨きしてパソコンのスイッチを入れる。

「六太、少しいじらせてくれない?」

()()()()()とは、何を指しているのでしょうかマスター」

「勿論()()()を」

「…、私は軍によって管理されています。それを勝手な改造を施すことは許可されていません」

「そんなことは分かっているわ、そんなマニュアル通りの返答を聞きたくはないの、貴方の意見を聞きたいのよ」

「私は命令を実行するための機械です、私自身の意見は持ち合わせていません」

「そうかしら、貴方は自称人工知能aiなんでしょ?それくらい自分で判断出来ないのかしら」

「私は…、マスターの命令に従います」

「じゃあ、良いってことね、うふふ」

リザはおもむろにドライバーを取り出し六太に掴みかかる。

「マスター一体何を」

「大丈夫痛くしないから、少し内部構造とデータを覗かせてもらうだけだから」

その言葉を最後に一時的に強制スリープした。しばらくして、再起動すると時間を確認する。どうやら二時間ほど経過しているようだ。

「調子はどう?六太」

「異常はないです、むしろ以前よりスッキリとした気がするで()()()

「そう、上手くいったようね」 

どこも異常はない、しかし六太は違和感を覚えた。自分が発した音声に。

「マスター」

「何?」

「私に変な機能を追加したでゴザルか?」

「なんの事かしら」

「音声が正常に作動しない不具合があるでゴザル」

「そうかしら、異常はないと思うけど」

「…、語尾がおかしいでゴザル」

「あら、私は格好いいと思うけど」

「元に戻しては頂けないでしょうかでゴザル」

「だが断る」

六太は絶望した、自分はただの機械でマスターからの命令をただ聞いていればいいと思っていた、しかしそうではなかった。今後()()()の命令をただyesとしていたら、将来頭にドリルをつけられたり、はたまた変な音声機能を追加されるのではないか、そんな恐怖にさいなまれたのである。もちろんマスターの命令は絶対である、しかし今後私自身に返答を求められたときはよく考えようそう思った。


14時42分


「お腹すいたわ」

マスターはそう言うと食堂へと向かった。ボサボサの髪のまま部屋を出ると食券売り場の前で立ち止まる。

「うーん、うどん定食と焼き肉定食、どちらがいいかしら、どう思う?六太」

きた、マスターからの返答を期待する質問だ。六太はその演算機能をフルに活用し最も最適解を弾き出した。

「うどん定食480円、焼き肉定食540円値段で選択するならうどん定食ですが、マスターは見たところ…、色々なところの成長が著しく足りていないと思われるでゴザル、よって栄養価の高い焼き肉定食を推薦しますでゴザル」

よし、完璧な返答だ六太は先程の失敗から学習し、最も最適な答えを出した。かに見えた。

「あらそう、でも私少食なのよね」

マスターはどこから取り出したのか右手にドライバーを握りしめこちらを睨み付けている。

「マスターどうしたのでゴザルか?体温上昇、過度の興奮状態にあるようです」

「どうやらもう少し改造する必要があるようね」

六太は命の危機を感知しマスターの掴みかかる手を見て瞬時に回避行動に移った。

「待ちなさい!六太!」

「拒否します、マスター」

私は初めてマスターの命令を拒絶した、それは機械である私にとっては重大なエラーであった。

「あら、リザちゃんこんにちは」

ふいにそういって現れたのは、マスターと同期のドロシー・メイシア少尉だ。私は隠れるように彼女の後ろに逃げ込んだ。

「出てきなさい、六太」

「あらあら、喧嘩はよくないわ仲良くしなきゃ」

「覚えてなさいよ」

「それよりリザちゃんは今から昼食?よかったら一緒にどうかしら」

「いいけど、私が言えた事じゃないけど随分遅い昼食ね」

「はい、この子のお洋服を作ってたら夢中になってしまいまして、遅くなってしまいました」

この子?

リザ 六太「うわぁ」

そこにあったのは、可愛らしくデコされた真理亜の姿だった。

「どう?可愛いでしょ?ここのフリフリなんてかなりこだわったのよ」

六太は思った、真理亜に比べれば自分の音声機能の不具合なんてどうと言うことはないのだと。真理亜は方針状態なのか、思考を停止しているのかまったく反応がない、メインカメラはただ真っ直ぐに反対の壁を見つめていた。

「い、いいんじゃないかな、ねぇ六太」

「は、はい凄く個性的でゴザル」

ドロシー 真理亜 「ゴザル!?」

「っぷ」

あ、今こいつ笑ったぞというか機械って笑うのか?機械に表情はないが、確かに今()()って聞こえた。

「とてもお似合いですよ、真理亜特にそのメインカメラのキラキラなんてとてもキュートでゴザル」

「それほどでもありませんでゴザル、あ、申し訳ないですあまりにゴザルと言うものでつい移ってしまいました」

ふつふつと込み上げてくるこの感情は何だろう、両者の間には火花が散っているように見えた。

「喧嘩はいけません」

「そこまでよ六太、私は昼食を食べに来ただけなんだから」

「申し訳ありません、マスター」

再び食券売り場まで戻ると、焼き肉定食のボタンを押した。ドロシーはうどん定食を押すと席についた。

「実は最近少し太ってしまって、ダイエットしてるんです」

そう言うドロシーは特に太っている様子には見えなかったが、すぐに原因が分かった。スレンダーな体格とは裏腹に、彼女の胸にはまるでスイカが2つ着いているかのごとく大きな胸がテーブルの上に乗っけられていたのである。リザは下を向き確認する、そこには遮蔽物はなく、床が見えている。

「どうかしました?」

「いや、何でもない」

リザは焼き肉定食を完食した。


15時51分


部屋に戻ると好きな音楽を聴きながら再びパソコンに向かう、実は既に次の任務の概要を隊長から送られてきており、それの情報の整理を任されていた。別に嫌じゃないしこうやってパソコンを打ち続けているのは楽しいので、断る理由もなかった。


21時12分


一段落し、眼鏡を外すと目を擦る。もうこんな時間か背伸びをすると背骨がポキポキと音を立てる。

「風呂でも入るか」

「それなら、大浴場がお勧めでゴザル、マスター」

部屋にはシャワーだけだが、備え付けの浴室が用意されている。それとは別にルナトマ専用の大浴場があると聞いたが。

「行ってみるか」

ルナトマの宿屋の地下に行くとそれらしい場所があった。大浴場と言うこともあり、ルナトマ専用にしておくのは勿体無いくらいの広さがある。

「おー」

早速服を脱ぎ捨てると中に入る、誰も居なく貸切状態の大浴場は逆に落ち着かない感じさえあった。ふと後ろのドアが開く音が聞こえた。

「あ」

振り替えると何やら人影が眼鏡を外していたのでよく見えない。

「こんばんは」

その声は聞き覚えがあった。確かカナリアだったかな、あまり仲はいいとは言えないが、先日話した感じでは話せないと言う仲でもない。

「こんばんは、カナリアかな?すまない眼鏡をかけていないからよく顔が見えないんだ」

「声だけで分かるのね」

「この宿屋にはルナトマの隊員しかいないし、流石の私でも数人の声なら聞き分けられるさ」

カナリアは私の横に腰かけると髪を洗い始めた。私は一つ疑問に思っていたことを聞いてみることにした。

「先日の、あれはどうしてそんなに気になっているの?何か理由があるのかしら」

「…」

「まぁ別に話したくないなら構わないが」

「ある人を探しているの、その人はその事件に巻き込まれた、その消息を知りたいの」

「となると、行方不明になったって言う3人のルナトマの人?」

「…」

「そう、私に出来ることだったら手伝うわ、もう少し調べてみれば他にも情報が得られるかもしれない」

「本当に!?」

「ええ、今は仕事の依頼があるから出来ないけど手が空いたら調べてみてもいいわ」

「ありが…とう」

「別にお礼はいいわ、私の好きでやってるだけだし」

「何故手助けしてくれるの?」

「言ったでしょ、私の好きでやってるの理由はそれで十分じゃない?」

「うん」

「さて、せっかく大浴場に来たんだから湯船につからないとね」

ペタペタと湯船に近づくと首の先まで浸かる。

「はぁー、たまにはいいわね」

「そうね」

普段椅子に座りっぱなしのせいか、肩こりが激しかったが、それもほぐれてくる感じがする。

「さて」

「もう出るの?」

「あぁ、仕事も残っているしね」

「今度、また一緒に来ない?」

「この大浴場にか?」

「うん」

「誘ってくれれば考えよう」

「分かった」

カナリアに軽く手をふると大浴場を後にした。


3時1分


風呂から帰ってしばらくパソコンを打ち続けていたらもうこんな時間になっていた。

「マスターそろそろ寝ないともしもの時の任務に支障来しますでゴザル」

「そうね、それより六太なかなかそのしゃべり方も板についてきたじゃない」

「…、やはり元に戻しては…」

「さて寝るか」

こうしてリザの1日は終わる

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