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始まり

初めての投稿です、よろしくお願いします。

「…な、……かな」


「ん…」


誰かが私を呼んでいる?誰?


「カナ、カナったら」


ゆっくりと瞼を開ける目が眩むほどの光が飛び込んでくるのを思わず手で目を覆った。


「眩しい…」


「やっと起きた、勉強もいいけど程々にしないと体に悪いよ?」


どうやら寝てしまっていたらしい、いつも閉めたままのカーテンが開いている道理で眩しいはずだ。


「あ、ごめんごめん、あんまり起きないからね、それにこんな薄暗いところにいつもいたら病気になっちゃうよ?たまには外に出て日の光を浴びなきゃ!」


そこで初めて話し掛けていた声の方へ目をやると、見慣れた顔の少女が立っていた。彼女の名前はトラマナ、昔からの幼なじみで小さい頃から何かと世話好きな友達…、そう友達、年は私の一つ上。


「余計なお世話」


そう言うと再びカーテンを閉めた。部屋の中は再び薄暗くなる、やはりこの方が落ち着く。


「私は幼なじみとしてカナのことが心配なんだよ、最近学校にもあまり来ないし」


「学校なんてなんの成果も得られないし、それより自分でやってる方が何倍もいい」


「そんなんじゃ立派な女性になれないよ?」


「私には私のやり方があるの、それよりマナなんの用事?」


「ひどいなぁ、可愛い幼なじみが今日も学校に来なかった友人の顔を心配になって見に来ちゃいけないの?」


「悪くはないけど用事がないなら私、やることあるから」


「まぁまぁそう言わず、ちょっと付き合ってよ!」


マナは私を軽々と持ち上げると頭上へ掲げる。昔から成長が早いと思っていたがしばらく見ないうちにまた背が伸びたのか、彼女の身長は見た感じ180いくかいかないかといったところ、対する私はいつからか成長が止まってしまったようで、147センチしかないこうやって持ち上げられるとまるで親子と勘違いされそうなくらいさえある。とても一つ上には思えない。


「おろして」


「だってカナ可愛いんだもん、こうぎゅーってしたくなっちゃうんだよ」


「く…ぐるしい」


どうやら成長しているのは身長だけではないらしい、私の顔と同じくらいのサイズの胸に顔が埋まってしまう。


「あ、ごめんごめん、可愛いからつい」


「まったく、いいからおろして」


「ちょっと付き合ってくれるならおろしてあげる」


「…」


困った外には出たくない、かといって抗おうと手足をばたつかせるが、宙に浮いた体は空を切るばかりでまるで抵抗出来ない、どうやら断ることはできなさそうだ。マナはニコニコしながら私を見上げている。


「はぁ…、分かった行くからおろして」


「さっすがカナちゃん!それでこそ友達だよぉ」


すると再び抱きつくのであった。私に拒否権は無かったのだが。


「ぐ、ぐるじい」


やっと地面に足がつくと少し足がふらつく、酸欠かもしくは貧血か一瞬目眩がした。直ぐにマナが腕を掴んで支えてくれる。


「カナ大丈夫?」


「うん、あまり大丈夫じゃないけど」


「そっか、じゃあ行こ」


マナは私の手を取るとそのまま外に出た。太陽は丁度頭上にあり、辺りはテラスで食事を楽しむ人や仕事合間の休憩をする人が目につく、どうやら既に昼になっていたらしい。


「マナ手を離して」


「だめよ、人多いんだから迷子になっちゃうでしょ」


「子供じゃないんだから、私だって今年で17になるんだよ?来年には()()()()になるための試験だって受けれるんだから、子供扱いしないで」


「でも私はカナが心配なんだよ、それに…」


「それに?」


「ううん、なんでもないとにかく目的地に着くまでは手は離さないよー!」


「はぁ…」


一つ溜め息ををつくとマナに引っ張られるまま街のショッピングモールまで来た、新しく立ったっていってたけど来るのは初めて、というより来ることなんてないと思ってたけどまさかこんな形で行くことになろうとは。


「到着!」


「ぜぇぜぇ…」


最近全く運動していなかったせいか、少しあるいただけで息があがってしまう、それに加えマナの一歩は私の二歩分あるせいで、常に駆け足状態、疲れるのは当然。


「少し休もうかあそこのベンチに座ってて飲み物を買ってくる」


マナはそう言うと人混みに消えていった。ベンチに腰かけると辺りを見回す、今日は確か休日かそのせいか辺りは人で込み合っている。こういう人混みは嫌いだ、ガヤガヤと騒々しい話し声同い年くらいの有象無象が、きゃーなんてはしゃぎながら走り回っている様子、目につくもの耳にはいるもの全て私をイラつかせる。


「帰りたい…」


私は目を覆い、耳を塞いだ。真っ暗、無音、やっぱり落ち着く、私は昔から一人でいる方が好きだった。友達なんていなかったしいない方が良いと思ってた。


人付き合いなんて面倒だし誰も私に興味なんて持たなかった。いつしか私は学校にいかなくなった。


そんなあるとき隣に一つ上の女の子が引っ越してきた。名前はトラマナ、彼女はすぐに私に興味を持ちよく家に遊びに来たが、今まで誰とも人付き合いがなかった私にとってそれは迷惑でしかなかった。


嫌悪する私に、マナはそれでもなお諦めず毎日毎日飽きもせず家に遊びに来た。そんなある日私は夜中に森の中へ1人で出掛けた。その森はいつも行く場所だったし迷子になる事もなかったが、お母さんと喧嘩してその日は無断で飛び出したのである。


虫の鳴き声と木々が風に揺れる音だけが辺りに響き私の心を落ち着かせてくれるのだ。


お母さん心配してるかな、そんなことを思いつつも草むらに寝転がる。


「カナー!カナちゃーん」


「…」


誰かの声が聞こえる、お母さんじゃないその声はよく聞いていたようで全く意識にとめていなかったものだった。誰だっけこの声、いつも家に引きこもってた私を呼ぶ人なんてお母さんくらいしかいなかった。それが今、誰かが私を呼んでいる。


「誰?」


起き上がると辺りを見回した。すると向こうから一つの光が近づいて来るのが分かった。


「カナ!」


その声は私を見つけるとすぐに駆け寄ってきた。そしてそのまま抱きつくと泣き出したのである。


「カナちゃん心配したよぉ」


「なんで泣いてるの?」


「だって、カナちゃん居なくなったって聞いたから私、もうカナちゃんに会えなくなっちゃうじゃないかってぐすっ」


私にはそれが理解出来なかった、私は一人ぼっちそれは嫌なことじゃなかったし、すすんでそうしてきた。だから、誰かが私を心配してくれるなんてこともなかった。


でも、この少女は泣いている私が夜中、居なくなったから、私という存在を心配して泣いている。そう思うと今まで感じたことのない感情が込み上げてくる。それは頬を伝い地面を濡らした。


「私、泣いてるの?」


何故泣いているのか自分にも分からなかった、ただ今まで感じたことのないその感情は、心地よく切ない気持ちなのに喜びを感じていた。それ以来マナは私の唯一の友達になった。


「おーいカナ、寝ちゃった?」


目を開くと再び雑音が流れ込んでくる。


「良かった起きてた、はいこれジュース」


「ありがとう」


ジュースを渡すとマナは隣に腰かけた。


「今日は暑いね」


「マナは…さ、なんで私なんかに構ってくれるの?」


私は昔から気になっていたことを聞いてみたが、そう言った後にひどく後悔した。マナは誰かに言われた訳でもなく自分の意思で私に接してくれている、そこに理由なんかあるはずもなく愚問だとすぐに気づいたから。


「ごめん、今のなし」


そう言ったが、マナは気にする様子もなく話し始めた。


「私、親がよく転勤しててさ直ぐに学校変わってたからあまり馴染めなくって、本当に友達って呼べる人がいなかったんだよね、周りはよく私に話し掛けてくれるんだけど、それは私の親が偉い人で気を使ってくれてるのは分かってたけどさ」


マナはそうやって初めて自分の過去を話始めた、今まで自分のことばかりで、マナの気持ちを考えたことなんてなかった。


「でも、隣にカナリアっていう可愛い女の子がいるって知って、あの時いてもたってもいられなくなって、今度こそお友達になるぞって押し掛けてさ、初めてカナの家に行ったときのカナの顔あれは笑ったなー、まるで()()()()でも見たような、ははは」


「そんな変だったかな…」


「そりゃもう、今思い出しても笑っちゃうよー」


「忘れて!」


「ダメダメ、もう完全保存されてるから無理」


「もー」


「カナはさ、私を特別扱いしなかったし初めて友達ができたって思ったの」


「でも私、マナのこと無視してたよ」


「そんなことないよ、カナはすぐ顔に出るから私が話しかけると少し微笑んだり、その表情がすごく可愛いだよね」


「え?私笑ってたの?」


「うん」


どうしよう、無意識のうちに顔に出てるのかそう思うと恥ずかしい。今もそうなのではないかと不安になり顔を隠す。


「それで、昔夜中に居なくなっちゃったときすごく心配で、せっかくできた友達がいなくなっちゃうんじゃないかって、いてもたってもいられなくなって、後先考えずに森の中を探し回ったよ、あの時は」


「ごめん、私自分のことしか考えてなくて」


「ううん、私も自分の気持ちばかりカナに押し付けてたしだからさ、おあいこ」


「うん」


「だから、カナリアもう居なくなったりしないでね、私本当はね、カナにはルナトマになってほしくないんだ」


いつも明るくて元気なマナの横顔は、その時だけはすごく悲しそうな表情だったのを覚えている。そして、マナがルナトマに選ばれたのはそれからすぐの事だった。

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