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ケモノビト  作者: 光月
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冒険の終わりは突然に


 赤ちゃんを育てた事がある。

 あるいは、知り合いの子の世話をした事がある。

 そういう人には、赤ん坊という存在がどれだけ信用の置けない存在なのか、きっと理解出来るだろう。

 赤ん坊というのは、目を離していると勝手に跳び跳ねるラグビーボールのようなものだ。

 あっちに行ったりこっちに行ったり、目的もなく興味を惹かれたままにふらふらするので、気付いた時にはもうそこにいない。


「――あれ? アルマ様!? どこに行ったんですか、アルマ様!?」


 この通り。

 だから、赤ん坊の世話をする時は、なるべく決まった部屋から出さないようにして、自分の手や目の届く範囲で行動させましょう。

 赤ん坊であるオレとの約束だぞ!


 さーて、それじゃあ探検といきますか。

 パッと見た感じ……うーん、2階かな? いやでも、3階かも。そこに階段の手摺みたいなの見えるし。

 どこ行こう?

 ……そういえば、この階層には父上の書斎とか姉上達の部屋があったはず。

 書斎で魔法とかこの世界についての本が読みたいから……姉上を利用しようかな。……最悪連れ戻されるか。

 くっ……ままならない我が身が憎い……!


 まあ、赤ん坊なんてそんなもんだし、いつまでも憎んでても仕方ない。

 えーと……姉上の部屋はどこだっけ?


 ……適当に移動するか。


「アルマ様!? アルマ様!」


 移動しようと横たえかけた身体を、寸前のところで元に戻す。あ……危ねぇ、せっかくの探検が打ち切りエンドを迎えるところだった。

『オレ達の戦いはこれからだ!』とか言って、『○○先生の次回作にご期待ください』ってアオリの文章が付くところだった。


 ライラめ……部屋を探して『居ない』とわかるや否や飛び出して来たな? 優秀なメイドじゃないか、ちくしょう。

 こうしてはいられない。早く父上の書斎に乗り込まねば、メイドネットワークを駆使して上から下まで探されてしまう……!

 そんな事をされたら、メイド長のベルナに確実に確保されてしまうからな……。それだけは、それだけは回避しなければ。


「アルマ様ー? どちらですか? アルマ様ー?」


 ……フフフ。ライラには悪いが、今のオレは自由を謳歌する赤ん坊! 冒険者さながら! いるかわかんないけど!


 ……おや? 書斎のドアが開いてる?

 もしかして、同じく掃除中なのか?


 ……ふむ?


「……………」


 左右確認オーケー、敵影なし、クリア。


 いざ、突・撃!


 部屋を出た時のようにころころと転がり、書斎の中へと進入する。

 中には誰もいなかったが、本棚に箒が立て掛けてあった。きっと、これから掃除を始めるところなんだろう。


 ……しかし困った。

 この書斎、父上用の机と椅子しかないから、隠れる場所がない。本棚は上から下までみっちり本が詰まってるし、どうしようもない。

 いやでも、隠れないと打ち切りエンドだし、背に腹は替えられないか……。


 仕方ないので、落ち着くまで――赤ん坊が1人消えてるから落ち着きようがないのだが――隠れられる場所に身を隠す事にした。

 すなわち、椅子と机の下。


 フッフッフ……今のオレはただの赤ん坊。こうして普通には目に入らない場所に隠れていれば、サイズの小ささも相俟(あいま)って、メイド如きに見つかるはずもない!

 ほとぼりが冷めた頃(そんな頃は来ない)にこっそりと這い出て、父上の蔵書を読み漁ってくれるわ!


 ……それより、なんか眠いなぁ。

 運動したからかな? 赤ん坊の身体にはステルスミッションはなかなか厳しいものがあったか。

 まあ、どうせすぐには見つからないだろうし、この、床の絨毯に横になって寝るくらい大丈夫でしょ。

 じゃ、おやすみなさーい。



   ◆



「いいですか、アルマ様。今日はなんとか見つけられましたけど、私達の目を盗んで勝手にどこかに行くのは控えてくださいね」


 目が覚めた頃、オレは居城『赤ちゃんベッド』の上で、ライラに説教されていた。

 ……おかしいな。オレは父上の書斎で寝ていたはずでは?


「今回は何もありませんでしたが、万が一お怪我でもなさったら、私達は旦那様と奥様に合わせる顔がありません。ですので、アルマ様も円滑なお世話のためにご協力くださいね」


 零歳児に何言ってんだ、このメイド。

 まあでも、素直なところは評価しよう。


「もぅ……聞いてらっしゃるんですか、アルマ様?」


 聞いてるよ? 聞いてるけど、言う事を聞くかどうかはオレの自由だよね。

 ……まあ、一応返事くらいはしておこうか。


「……あぃ」

「……い、今、やっぱり、お返事なさいました……よね?」


 返事をしたかどうかと訊かれたら、まあ、したんだけど……してないって事にした方がよくない?

 あ、でも、『アルマ様が私の言葉にお返事なさったんです!』なんて話を父上や母上が聞いたら喜ぶかな。

 うーん……悩み所だ。けど、別に何か不都合があるわけでもないし、返事したって事にしよう。


「あい」

「やっぱり……! 早速旦那様と奥様にご報告をしなくては……!」


 そう言って、さっさと部屋から出ていくライラ。

 まあ……なんだ。色々世話をかけるけど、頑張ってくれ。オレも……うん、微力ながら協力するからさ。


 とりあえず今は寝ますね。眠いので。

 目が覚めても微睡む時間があるから、その時間の内は眠いよね。

 というわけで、おやすみなさい。

 大体、この眠気って言うか睡魔って言うか、全然抗えな――

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