#7:公民館
漂流者研究ファイル6:ガイア
アークメイデン初号機。当初は採掘用重機として開発される。そのため装備はドリルやショベルアーム等資材採掘を前提としたものが多い。そのため換装用装備も多く開発されており、多彩な状況下での採掘作業が可能である。
時間は少し遡る。
ツバサ達が西側の港で黄昏ている頃、東側の山間部では、二体の機体が暗闇を照らしていた。
「こんなに暗い中でわざわざ調査することなんてあるのかい?」
ナイトライガーに搭乗しているレオは溜息をつきながらその機体を揺らした。
「この時間帯だからこそ、です」
採掘作業用に開発された機体【ガイア】は、左腕に装備されているパラボラレーダーを地面にかざし、探索を続けいた。
島の東部は日光が火山に遮られているということもあり、すでに夜のように暗くなっていたが、ナイトライガーの背中に取り付けられた作業用の照明のお蔭で、まるで昼間のように周辺が明るくなっていた。
「たしかここって、この間ボクが戦った……」
レオがモニターを見ると、一面に広がった森の一部が焼け焦げているのが確認できた。以前出撃した際、漂流者を焼き殺した跡である。
「でも、何でわざわざこんなトコ……」
『よく見てください』
「え?」
めぐみから言われ、焼け跡をよく見てみた。一見、普通の山火事で森の一部が焼失しているように見えるが……
「死骸が残っていない」
あれだけ派手に焼いたとはいえ、肉体が焦げた跡や骨くらいは残っている筈である。しかし、そこに広がっていたのは森の一部が焼失し、地面が露わになっている光景だけであった。
『あなた達は気付いていましたか?』
「気付いていたって、何を?」
めぐみからのその問いの意味がわからず、レオは首を傾げた。
「漂流者の死骸は、倒された後跡形もなく消滅するということを」
*
そして次の日。
リバイブバスターズの会議室として使われている公民館に集められた3人は、めぐみから昨日の調査の報告を受けていた。
「消滅……。言われてみれば今まで気付かなかったかもしれない」
ツバサはめぐみのその言葉に静かに首肯した。
「調査の結果、戦闘した跡地には漂流者のものと思われるものは何一つ残っていませんでした」
「でも可笑しな話だよね」
ツバサは手に持った紙の資料をひらひら仰ぎながらめぐみに問いかけた。
「あんなにでっかい怪物の死骸が跡形もなくなるなんて、だれか消えるところを見ている人は居ないの?」
「その事なんだけど……」
隣に座っているレオは資料から視線を落とさずに続けた。
「これまで出てきた漂流者って、殆どが海中かそれが変化して羽生えて飛んで行ったヤツなの。ソイツらを倒すということは?」
「えっと……、え?」
投げかけられた問の意味が分からずに、首を傾げているツバサを見て、レオは小さくため息をついた。
「ったく……。アンタらが倒した漂流者は海に落っこちるから消えたトコなんて誰も見る事ができないってこと!」
話の意図が伝わらなかったことにイラついたのか、レオは長く伸びた前髪をガシガシ掻き毟った。
なるほど、と大袈裟に首肯するツバサに対し、向かいに座っていた愛海はずっと浮かない顔をしていた。
(ツバサ……どうしてあんなこと)
唇同士が触れたことなんて、生まれて初めてだった。
島には同級生という存在も、あこがれの人という存在もなく、誰かを好きになるなんてどこか遠い世界の話に思っていた。だから、手をつなぐことも、キスすることも、幻想なんだと思っていた。
でも、彼女は簡単に自分のパーソナルスペースに入り込み、幻想を奪っていった。
それなのに……
(なんでいつも通りにしてるの?)
資料の内容も、報告も、愛海の頭には何一つ入ってこなかった。
触れたあの感触が、今でも唇に染みついている。
柔らかくて……
おーい?
ちょっとムズかゆくて……
まなみー?
そして
「「「愛海!」」」
「うぇっ!?」
気付かないうちに3人が目の前に詰め寄っていた。
「勉強で夜更かしはいいですけど、日中ボーっとしては意味ないですよ?」
「ごめん……なさい……」
めぐみの優しい苦笑いを見ると、自然とこぼしてしまった。
「で、次の指令聞いた?」
「指令……」
愛海のきょとんとしている表情を見て、ツバサはは残念そうに首を横に振った。
「やっぱり聞いてなかったかぁ~。アタシと一緒にデート行けるっていうのに……」
え?
「デート!?」
つづく
久しぶりの投稿です。何か月空いたことやら。仕事が立て込んでいて小説書くどころか続きを考えることすらままなりませんでした。
これからは、空いた時間にぼちぼちやっていく予定なので完結まで暖かく見守ってください。
感想等お待ちしております。よろしくお願いします。