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運に任せて平和に異世界で暮らしたい!!  作者: 鍵ネコ
第2章 王都に辿り着いても苦労は絶えない
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5話 大衆浴場

その後、日が暮れるまで俺たちは魔物を殺し続けた。


アルカナさんは直ぐに魔物を見つけると脚で魔物の動きを固定し、首根や心臓、兎に角的確な弱点を指示してくれたので、俺は指示通りそこを突き刺す。それの繰り返しだったが、決して楽では無い。初めよりは幾分か楽にはなった気がするものの、殺しは中々一苦労で、精神的負担もあれば身体的な負担もある。剣にこびり付いた血や脂もかなりの頻度で拭わないといけないから、疲れやすい。


「ふぅ……」


そして、時間もいい感じになった理由は魔物討伐だけではなく、討伐ついでに剣術の基礎の基礎である武器の持ち方、握り方、構え方、態勢。そこまできっちり教え込まれたので時間もそれなりにかかったのである。


また、大きな変化といえばステータスだろう。今現在、lvは41なのでHP等は41で、力などは10に変化していた。どうやらlv4毎に基礎能力のパラメータが上がるようだ。


ただ、微量といえば微量な変化。しかしながら、十分に力強くなった事を実感はできた。まぁ、大人のlv1平均にすら届いていないが……。


そうして32匹の魔物を袋に詰め込んで俺たちは、冒険者ギルドの素材換金カウンターに立ち寄っていた。


野兎(エルビット)が23匹ですね。こちら、状態が良いので統一100ラルクです。こちらは、岩兎(ロックビット)が9匹。同じく状態が良いので統一200ラルクで、合計4100(41000)ラルク()です」


道中ロックビットなる、硬質な体毛を持った兎と対峙した。この魔物は体皮は柔らかいのだが、生えている毛が岩のように硬い。

アルカナさんが弱点を教えてくれたので簡単に倒せたが、触ってみた毛は本当に岩見たく硬く、もし飛び掛かられたら死んでいただろうと思った。


「それにしても、4100(41000)ラルク()になるとは」


いや、対価に見合った報酬であると、戦って実感したけれども。


「まぁ、これだけ狩れば妥当ですね」


換金された袋は二つに分けられた。

多い袋の方がアルカナさん。

少ない袋の方が俺だ。


とは言えこれは実質彼女への依頼料に当たるお金。ライゼンさんからちゃんとした報酬が出ると言われているらしいく要らないというのだが、護衛料には変わりない。だから貰ってくれなんて言われても、なんか横取りしたみたいであまり良い気はしなかった。


しかし、いるいらないの話は2回目。ここまできたら、大人しくもらうしかなくなっていた。


「本当に、いいんですか?」

「ええ、貰ってください」


そして俺はお礼を言いながら1100(11000)ラルク()が入った小袋を頂いた。


これで今日の同行は御仕舞いだ。朝から夕方までほぼぶっ通しで教えてもらったけれど、まだ何も上手くなったモノはない。殺しも、剣の扱いも。だからまた明日9時から今日と同じ内容で、待ち合わせしましょう。そういう話だった。


今日一日、デスク仕事ではなく身体的仕事にかなり疲労していた俺は、早く帰ろうと思いお礼を言おうとした時、アルカナさんはひとつ提案した。


「今日はこれでお別れしようと思ったのですが、今から大衆浴場に行くので一緒に行きませんか?」


お、お誘い。


一瞬、そんなアホな事が頭を過る。しかし、それは無いと否定した。


勘違いするな。そんな(やま)しい事じゃあない。ただ単純に汗をかいて気持ち悪いからだろう。それに、俺はどちらかと言えば血だらけ。服なんてほぼ真っ赤だ。誘う理由としては十分だ。


そう思えば、俺自身かなり汚いのだという事に気付いた。時間が経って血が服にこびり付いてるし、生臭くなっている。こんなんで宿に帰っても逆に迷惑か。


「はい、是非」


そういう事で俺たちはギルドから徒歩20分の大衆浴場に赴き、その大きさに驚かされていた。


「大衆浴場だけに、大きいですね」

「私も、初めはここまで大きいものだと思ってませんでしたよ。流石王都ですよね」


アルカナさんはそう言って赤いカーテンを開けながら振り返る。


「後、私長風呂なので、遅くなります」

「あ、ああはい。ごゆっくり」


なんか、なんかその台詞にドキッとした。


少しばかり脈打つ心臓を抑えながら俺は青色のカーテンで仕切られた部屋へと入る事にした。


そうして中に入ると、かなり蒸し暑かった。

というか、漢どもの溜まり場な雰囲気が色濃く感じさせられる。


中は外観通りかなり広い。かなり広めに間隔が空いているが、基本ロッカーばかりだ。


「大人一人50ラルクね」


と、見渡していると左から手を差し出された。番台の叔母さんだった。銭湯ではよく見る光景で、少し高い場所に座っており、壁には大人50ラルク。子供25ラルクと表記されていた。


「あ、はい」


なので早速番台に50ラルク差し出してお風呂に入ろうとすると「ちょっと待ちな」と声を掛けられた。


「な、なんですか?」

「いや。お客さん服、随分と汚いね。着替えも無いみたいだし、洗濯するよ。80ラルクで」


え、まじか。丁度如何しようかとも悩んでいたところだったんだ。だけど……。


「時間が掛かるんじゃありません?」


コインランドリーみたいな乾燥機があるようには、見た感じない。だからそう聞き返すのだが、おばさんはクスリと笑って言い返した。


「魔法を使えば10分くらいで終わるさね。それようの魔法使いも雇ってるから安心しな」


そうか。そう言えばこの世界、魔法があるんだった。ステータスとか、そんな目の前の物のせいでこの世界の在り方を少し忘れていたが、10分で乾燥まで終わるなんて便利な世界な事で。


それに、10分で綺麗になるというのならお願いしようか。


「お願いします」

「あいよ。80ラルクね。服はそこの番号札のついたカゴに入れといてもらったらやって置く。番号だけは忘れないようにね」


番台の近くには山積みになった籠が沢山あった。その中から無作為に一つ取り出すと、そこに貼られていた番号は31番。そうしっかり覚えた所でロッカー付近で服を脱ぎ捨てる。積もった服の山は、番台近くにある洗濯の表記のある場所に置いていく。


そして俺は広場に入り、出入り口付近に溜められたお湯を桶で掬って身体の汚れを流した。

お湯の温度は少し熱いくらい。けれども、疲れた身体には丁度いい。


今日1日でこびり付いた汚れは、身体から出て行き、腕や顔についていた血は流れて行った。汗に固まりだした髪の毛もお湯で流し、汚れを限りなく落としてから俺は風呂の中へと入る。


「ふぅ……」


あったかい。温まる。


大衆浴場なだけあって、一つの風呂が30人位は入れるだけの広さがあり、他に3つの浴槽と、一つの効能ありの浴槽、柑橘風呂があった。

それらに浸かる子供や大人、老人まで風呂の暖かさに息を吐いているのも、開放感のある広さだからできるのだろう。


このあったかさ、気持ちが良すぎる。


そうボーッと暖かさに身を投じていると周りの音は少しずつ小さくなって行った。何かを考えている訳でもなく、ただ何も考えず、汗と息を流して。そして気が付けばウトウトしていた。


「あ、出ないと」


危うく風呂で寝てしまうところだったが第1関節を見ると、かなりふやけていたのでそう意識して、浴槽から上がった。


頭もボーッとするし、少し長風呂だったかな。でも、気持ちが良かったな。


俺は最後にぬるま湯、冷水と身体にかけて広場から出た。そうして、覚束ない歩き方で番台近くに行くと、汚かったはずの服が綺麗になっており、これまた丁寧に折りたたまれた31番の籠があった。


触った感じは冷たくなく、どちらかと言えば仄かに暖かい。


「ね、言ったろ。魔法は偉大さね」

「はは、そうですね」


ふんわりした服の着心地は、今のあやふやな頭と同じ様に心地よかった。

それから俺は外に出て風に当たることにした。のぼせている時はそれが良い。


「ありがとうございました」

「またきぃな」


番台のおばさんにそう言い残して外に出る。

外には腰掛けベンチがあるからそこに座ることにした。


「はぁ……」


良い湯だった。そう極楽と息を吐いていると、髪をタオルで拭く、色気のある服装のアルカナさんが目の前で立っていた。


「あれ、タツヤさん。待ってて下さったのですか」

「あ、いえいえ。僕も丁度さっき出てきたので」


ボーッとした意識も彼女との会話でかなり覚醒する。ダラリとした座り方も直し、しっかりと座る。

そして、なんというか彼女から大人な魅力を強く感じた。何というか、エロい。


風呂上がりの女性というのは総じて艶やかだ。


そうして煩悩に振り回されそうになる中、アルカナさんは「これをどうぞ」と言って優しい匂いのするタオルを俺に渡した。


「髪の毛を濡らしていると風邪を引きますから」

「良いんですか?」

「ええ。上げますので、気にせず使って下さい」


……ほんと、優しいなアルカナさんは。


「ありがとうございます」


俺はどうしようもなく抱いていた邪な気持ちを、頂いたタオルを使って豪快に髪の毛と一緒に拭うことにした。

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