32話 俺達と暮らしませんか?
「はぁはぁはぁ」
俺、生きてるよなぁ。
改めて実感した、生きた心地を。もしかしたら転生1日目よりも怖かったかもしれない。
そう安堵のため息を吐いていると、獣人の姉妹が話しかけてきた。
「おつかれ…お兄さん……」
この喋り方的に、俺を道案内した獣人だろう。
労わりの言葉はより生きている事を記してくれた。
「あ、うん。お疲れ」
そう言葉を返し、姉妹を見ると、姉妹は揃って深くフードを被っていた。
「なぁ、なんでフードそんなに深く被ってるんだ?」
疑問に思い聞いて見る。
別に見てくれなんて酷くないし、そこまでしてかぶる必要があるのか?
その問いに獣人の姉の方が俺に駆け寄って耳打ちをした。
「お兄さん私たちが獣人だって知ったでしょ」
「あ、うん。耳と尻尾ね」
スラムの家でフサフサ、というよりバサバサな毛だったが、尻尾と犬耳は確かに見た。
「そういう事よ」
「ごめん、話が飛びすぎて分からない」
急に「そういう事よ」なんて言われてもなぁ。
ちょっと、要領を掴めないわ。
「えーと。頭に毛耳や尻尾がある私たちは獣人って言うんだけど、獣人はここじゃ迫害されてるの。そういう事」
噛み砕いた言い方であったが迫害と言う言葉を聞き、驚いた。
迫害。人種的差別を行い、力で抑え痛めつける行為。
そう言う事を、昔はテレビなんかで取り上げていて、凄惨と言う言葉をよく聞いた。
だが、ここ最近では聞かなくなった。
迫害が無くなったものではない。メディアが報道しないだけ。でも、現代的に生きる、前の世界じゃ、それだけで知識から抜け落ちていく。
「それ、本当か」
「ほんと、ほんと」
俺が言いたいのは、こうして迫害と言う事を聞いて嫌な気持ちになった事だ。ましてや、こんな小さな子供達だ。散々な人生だったのだろう。
「なぁ、君たちはこの後どうするんだ?」
沈黙が続く中、気になることがあったので聞いてみる。
この子達は、あのスラム街で過ごしていた。
あの時、追ってきた男には「もう来たのか」と言っていたから、どのみちあのボロ屋から逃げ出す事は決まっていたようだけど、話を聞いてからじゃどうしても気にかけてしまう。
「実は、考えてないんだよね。ただ、スラムにはもう居られないのは決まってる」
「そう、なのか?」
「うん。色々あってね」
この無計画さ、聞けば呆れるが、実際は迫害と言うことがそうさせている。
死が間近に存在する区画。
この子達はそこでずっと暮らして居た。
人間がいていいような場所じゃない場所。
そんな場所に、ずっと居続ける理由となったのは迫害人種であるから。
だから、そんな所にしか行き場がなく暮らしていた。外の街を歩くだけで酷い目にあわされるくらいなら、環境がゴミのような場所でも在るだけマシ。
だけど、そんな場所は何かしらの理由で居られなくなった。
そして路頭に彷徨うが、助けは乞えない。
迫害人種だから。
言葉を、自分が見てきた聞いてきた情報とを結びつける。それと共に、痛い気持ちになっていった。
「なぁ、それならさ。俺達と暮らさないか?」
ふと、そんな言葉が出た。
いい者として気取りたいだけなのかもしれない。だけど、どうしても言いたくなった。
そんな俺の言葉に虚を突かれた顔をした姉妹。
「いや、大丈夫。こっちの事だからさ」
驚きながらもはっきりした口調で断られた。
名残惜しそうにではあるが、こっちの事を考えてくれたのだろう。
辛い思いをしているのに、人を気にかけられる人なんてそういない。
「そ、そうか……」
だが、そう言われてしまったらしょうがない。
考えていた事を諦める。
「じゃ、じゃ私たち行くね。お誘いありがとう」
そう言いながら俺に手を振って、身を翻した。
そうして、遠ざかる二人の子供の姿。
燦々と降り注ぐ太陽の光が当たり、二人の影が大きく、黒く現れる。
その影は何処から悲しいように見えた。
こんなもの、ただの錯覚だ。
自分が、今、こうして映っているのだと思い込んでいるだけ。
二人は二人で頑張って生きるさ。
だけど、やっぱり。
やっぱり。
「どうしても、見て見ないふりができないんだ!」
大きく息を吸い込み、声が聞こえるように張り上げる。
「少しだけでいい!俺と、俺達と、一緒に過ごしてみてくれ。それで嫌になったら、見捨ててくれていいから!どうか!お願いします!」
自身の気持ちを込めて土下座をする。
今、こうして考えると、なんとも酷い事を言ったな。
聞いてる自分が気持ちが悪い。
だけど、後悔するよりはマシだ。
後悔は先に立たない。執った行いは、一生物だ。
そんな俺の叫び。
姉妹は相当に困っていることが想像できる。
「あ、あの。えーと、その。ま、先ずは頭、上げてもらえますか?」
「わ、わかった」
人の気持ちを考えず、自身の気持ちを、自己中な考えを伝えた。そんな自分に反吐がでる。
そんなことを言った自分を後悔している。
震える脚を立ち上がらせる。
こんな事断られることぐらい分かってる。
だけど、脚が震えていた。
そして、獣人の子供は言葉を詰まらせながらも言った。
「あの、その……えーと。その、、、」
だが、そんな感じの方がはっきり言われるより良かった。
「えーーと、、、ほ、本当に、、、良いんですか、、、?」
「え?」
思わぬ答えに、豆鉄砲を食らった。
「え、あ。ダメですよね。す、すいません」
あ、いや。
「ち、違う。断られると思ってたのに、そういう事を聞いて、豆鉄砲食らっただけ」
良いのか。そうか。
それを聞いて心の何かが落ち着いたような気がした。
「そ、そうなんですか……えーと、じゃあ、良いんですか?お邪魔しちゃって」
「ああ、そのつもりで言った」
そう言うと、俺と話していた子供が深くお辞儀をし、それに続くようにして後ろの子もお辞儀をした。
「ありがとうございます!」
「あ、ありがとうございます」
こうして、俺達に仲間が増えたのだった。
キャラ後書き
ダメな方ピチュンしちゃって下さい
作者「お読みいただきありがとうございます」
達也「ありがとうございます」
女の子「ありがとうございます」
レスカ「ありがとうございます」
女の子「あれ?私まだ名前ないの?」
達也「あ、ないね」
作者「また明日ね」
女の子「そんなぁ」
達也「それにしても短いね」
作者「すいません、詰まりました」
達也「話に詰まるのか」
作者「詰まった」
達也「そうか」
32話でした
誤字脱字、変換ミス、言葉が変な所があったらがあったらお願いします
これからも読んでいただけるように頑張ります
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