幕間 王都キリア大会議
王都キリア中央部に聳え立つ白き城
その城の一室
王の執務室にて一つの報告書が届いた
それは、我が国の諜報員からの報告書だった
「聖教国の奴らめ」
聖教国
前からずっと問題視されていた国
名前からは神を崇め慎ましやかに暮らす国
だが正体はそんなものではない
事実は神の天啓などと謳いながら、戦争を仕掛ける血の気の多い国だ
それも、生半可な強さではない
一人一人の戦力が高すぎるのだ、剣にしても魔法にしても
聖教国は既に孤立した国
何処とも条約や同盟を結ばない。食糧不足や水不足などは自給自足の生活で他国との貿易などしない。聖教国が言うには「汚れた者の食物などいらぬ」との事だ
実に腹ただしい言い分だ
「はぁ、戦争か、、、」
今回の標的となったのはここ、王都キリア
何とも不運な事だ
兵士が無残に屍となる戦場の景色が目に浮かぶ
「はぁ、、、!」
ため息を気合いに変える
重役達との会議を開かねば
銀のベルを取る
チリーンチリーン
気持ちがいい音色が響く
ずっと、この静かで落ち着いた空間にいたい
そんな考えとは裏腹に、外から甲冑を着た何者かの足音が近づいて来た
コンコン
扉を叩く音
「入れ」
「失礼します!」
伝令兵
いつも通り早い登場だ
「伝令を伝える。今から重役達を呼び集め、「王都キリア大会議」を開くと伝えろ」
その王の言葉に一瞬ピクッと反応した伝令兵
言葉の意味を理解したのだろう
王都キリア大会議
その会議を開くと言うことは、戦争をすると言う事だ
縦に長い部屋に置かれる縦に長い机と、机の長さに合う数の椅子
縦の頂点となる席に座る
周りには20名の重役が揃っていた
「みな、揃ったな。これより、王都キリア大会議を始める!」
それと共に重苦しい空間に変わる
「失礼でありますが、王よ、この会議を開く意味を理解しての事であるのですか」
そう言うのは
軍事区をまとめ上げる、この戦争の勝敗を握る男。一等軍事総務官のピラティス
「ああ、我は戦争をするつもりだ。いや、せざるを得ない」
「どう言う事でしょうか?」
我が最愛する一人、我が娘のティアが言う
「諜報員からの報告書だ」
そう言いながら報告が記載された羊皮紙を出し、順番に見るようにうながす
それぞれは、それぞれの顔をした
共通点といえば見ると顔を青くする事だ
「皆、読み終えたようだな」
羊皮紙が手元に戻って方
もう一度軽く見るが、いつ見ても悍ましい報告だ
「では、財務官。経費は何処まで削れて何処まで当てられる」
「、、、、、、、、、、」
長く黙る財務官
だがこれは悪い事ではない
彼女、シルスティーヌ財務官の特技、高速演算
それはただ早いのではなく、最善の選択を出す事の出来る圧倒的な早さなのである
シルスティーヌの事は、ここに居る皆理解していた
だから咎めない
そしてシルスティーヌは口を開いた
「出ました。
予算が10000000000000ラルク(100兆円)
国の維持費には
1271809650425ラルク(12兆7180億9650万4250円)
軍事維持費は
8246593711526ラルク(82兆4659億3711万5260円)
締めて
9418403361951ラルク(94兆1840億3361万9510円)
になります」
その言葉に肩を落とす
「はぁ、、、白金貨が94枚も飛ぶのか」
この振り分け、軍事維持費が何故こんなに高いのか、皆見当がついていた
それをシルスティーヌが言ってくれるようだ
「軍事維持費の高さには理由があります。聖教国は技術力が圧倒的には高いのです。何処の国と見比べても圧倒的にです。対抗するのなら、数兆ラルクでは維持できないと見ました」
聖教国。恐ろしい国だ
独自の発展のため技術については分からぬが、最先端を行くことは知っている
そもそも、何故そんなに先端技術を持つのかという理由として
「勇者召喚」を行うためだ
勇者は強い
それでいて、この世界にない知識であふれている
そのおかげか、聖教国の技術進化は止まらない
そしてそれは、此方からしては、ただの殺戮兵器でしかない
だが、異世界から呼び出された「勇者」となるもの達はとても可哀想だ
魔王などと言うホラを吹かれ、聞き入れ、他国は洗脳されているなどとコレまたホラを吹かれて、我々を殺させる
いや、聖教国にとってはもう別の生き物でしかないのだろう
他にも「転生者」と言うのがいるが、そっちは稀だ
兎も角奴らは強いのだ
だから此方は足りない分に注ぎ込まなければいけない
最近では魔導兵器研究が進んだらしく、もう少しで完成するらしい
それは、魔楼を介して使用するもので、放つと大量の熱光線を放つらしい。つまり固定砲台だ
ただ、質量が大きく、魔楼も金額もバカにならないらしいが
まぁ、無いよりマシだ。購入予定である
「シルスティーヌ財務官の決定に異議のある者は」
周りを見るが誰も口を出さない
それが妥当であり最善であることを理解しているからだ
「これを持って財務を確定する。次、一等軍事総務官ピラティス。軍事力は如何程だ」
「はっ。ランク1が28万名。ランク2が16万名。ランク3が7万名。ランク4が1万5000名。ランク5が30名。総計53万5030名でございます」
「ふむ、、、」
さっきから言っているランクだが
ランク1 下位一般兵(基本的、戦闘経験のない兵の事)
ランク2 中位一般兵(基本的、戦闘経験のある兵の事)
ランク3 上位一般兵(戦闘技術の高い兵の事)
ランク4 最高位一般兵(戦闘技術、他能力が高い兵の事)
ランク5 最高戦力兵(全ての分野において能力が非常に高い兵の事)
なんだが、ランク5になれば人外も良いところだ
平気でここの城壁を飛び越えれる
やろうと思えば地形を簡単に帰れるだろう
最高戦力兵とは言うが、どちらかと言えば化け物兵の集まりだ
そんな奴らもいるのだが、、、アイツらと戦争するなら・・・ちと、足りなさすぎる
聖教国の軍事力はおかしすぎるのだ
「兵の増員は出来そうか」
これでも足りないと思いピラティスに聞く
「徴兵を掛けても集まるのはランク1が殆どでしょう。報告書を見る限りでは戦争開始まで後「5年」その期間で集めるよりも、技術の向上を目指す方が賢明でしょう」
「ふむ、なるほど」
たしかに、ランク1や2の兵士は聖教国の兵どもに蹂躙されるだろう。こちらの数が多かろうが少なかろうが、だ
それなら少しでも戦えるよう、そちらに力を入れる方が賢明だな
ここに揃う者達は皆、素晴らしき人材の集まりだ
「ピラティス軍事総務官の軍事方針に異議がある者」
誰も言わない
それが妥当で正しい意見だからだ
皆、それを理解できる
本当ならば論争がある
だがここに揃う者は意見が違う事が少ない
それぞれ考え最善と導き出した答えは同じだからだ
それからは細やかな戦略や配置、戦力兵器の購入など話し合った
「ふむ。流石シルスティーヌ財務官。1ラルクのズレもなく使い切った」
「有難き幸せ」
シルスティーヌ財務官。彼女は本当凄いの一言だ
必要なもの購入から、各予算の割り当て。全てにおいて無駄がない。寧ろ全て最終的に良案だと言ったものに振られている
彼女の才は天才としか言えないだろう
ピラティス軍事総務官もだ
彼の戦略にはいつも驚かされる
正に軍神が誇れる戦略だ
「ではこれで、「王都キリア大会議」を終了する」
始めてからどれくらいの時間を話し合ったのだろう
皆が直ぐに帰れるよう早く部屋をでる
外の空気を吸い込む
「すー、、、はぁ、、、」
会議中の重苦しい空気と違って、肺を満たしてくれる気持ちのいい空気
空を見上げると明るかった
いや、早朝だ
霞みがかった景色が見える
「長いこと話したものだな、、、」
あと「5年」
たった5年と見るか、5年も、と見るか
今後の仕事が増えたことに気を落としつつ、国のために、民のために、勝利を勝ち取る。と、気合いを入れたのだった
評価して貰えると努力と励みになります。
ブックマークもすると作者が喜ぶってタケシくんがリサイタルをしながら言ってた
感想などもありゃ嬉しいっぺよぉ
一応ですが、ツイッターログアウトしました
理由は単純に書く事がないからです。後何気に容量が大きい
米/閑話が入っても本編投稿はあります。17時ですね