23話 シルティーのお仕事
アインズの宿
そこは何とも普通の宿らしい
経営を始めてから5年程
売り上げや店の質も普通。客足も平均的でリピート率も普通。宿泊料も普通だ
普通といっても経営が5年続くのは好ましい
宿を経営するにあたって1年目が重要なのだ。その1年で客を増やさないと翌年からは客足が減る
5年というのはその1年を勝ち取り維持し続ける程の宿でもある
そんな宿の前に立っているのだけど、、、
フツー
敢えて声に出さない
普通であっても悪いわけじゃない
変に凝り過ぎれば高く見られるし、逆に質素にし過ぎれば質が悪く思われる
中身がどうであってもだ。だから第一印象が大切なのである
これは生き物の特性が関係している
未知なるものに対し潜在意識的に判断する。凝った作りは高いものだと、凝りもしない作りは安いものだと見えてしまう
どちらにせよどっちもの評価には良いところはある
だが、普通を求めるのが生き物の真理でもある
「すいませーん」
玄関扉を開けると鈴の音がなった
中は広すぎず狭すぎずちょうど良い広さだ
入ると受付カウンターがありその両端に階段がある。その先は廊下で扉が見える
作りは特殊ではある
が、これはこれでこの宿の特色だろう。面白い
装飾も程よく、無駄なものは無い
手入れは念入りにされている。5年続く理由の一つだろう
「いらっしゃい。君一人?」
カウンターの奥から女性が出てきた
ここの店主だろう
「実は私仕事を探していて、呼び子を探していると聞いたのでお邪魔させていただきました」
「ほうほう、なるほど、、、じゃあこっちにきてもらえるかい?」
店主の女性は蝶番で止められたカウンターの一部を開け、カウンターの奥にある扉に行くように促す
中は広すぎず狭すぎず
ロビーと同じような感じだった
机に椅子、キッチン、食器棚、便所の生活スペースと奥に扉があった
寝室だろう
「早速だけど面接をするから座って」
「はい」
無闇に雇用はしないか
呼び子が欲しいと言えどちゃんとした人を望む
当たり前であり疎かになる部分だ
魔界の方で暮らしていた時にお父様から聞いた話だけど、新設の宿が変な奴を雇用して経営破綻に陥ったとかいってた
そういう事のないようちゃんと人のステータスを見る
さすが5年
「じゃあ始めるよ」
「はい」
そう言った店主の女性が机に置いてあった紙を取った
審査の項目かしら?
「先ず、名前は?」
「シルティーです」
「出身は?」
出身か、、、
「名もないような村です」
「そう、じゃあ、、、次ね」
上を項目から下の項目へと目がいった
「どうしてこの宿の呼び子になろうと思ったの?」
この宿を選んだ意思を聞きたいのだろう
誰かに聞いて来たのは分かっている
だけどそれだけじゃ雇用はしない、と言いたいのだろう
「私はお金が必要で、仕事を探すために話を聞いました。その中でこの宿の話がありました。宿屋というのは始めの1年が重要と聞きましたが、それを勝ち取り5年続くというのを好ましく思いました」
「ふむふむ」
辺りは悪く無いようだ
「まずはどのようなものか聞くのではなく見に来させていただきました。外見は凝りすぎず質素すぎず、印象が良い作りでした。それが5年続く理由の一つだと思い、中を見てみようと入らせて頂きました」
「うんうん、分かってるねぇ」
店主は笑顔だった
まぁ、褒められたらどんなものでも嬉しいからね
「外もさる事ながら、中も広すぎず狭すぎず様々なところから良質な宿だと思いました。それに、ここの宿の作りは面白い。お客様を呼ぶ際にも一つの特徴として伝えられると思いました」
最後には此処で働く意思があることを伝えた
「それで終わりかな?」
「はい、以上です」
「分かった。じゃあ最後の質問ね」
「はい」
「此処で出す給料は時給で96ラルク、高くもなく安くも無い。あなたに一番聞きたいことは本当に此処で働きたいの?」
「はい。此処で働くことが良いと思いました」
店主の女性は私の目を見つめた
目は光らない。鑑定でも、他の意思を見るスキルじゃ無い
彼女自身の本質を見抜く力だろう
店主の女性は暫く見つめた後目を閉じて息を吐いた
「ふー。以上で面接は終わり。結果だけど、合格よ」
「ありがとうごさいます」
「中々に良かったわよ、ちゃんと見ているじゃ無い」
「働き先を見ずに雇用されるのは一番続かないですから」
「そうよぉ、まだ小さいのに分かってるのね」
「ふふ、ありがとうごさいます」
ふー良かったわ
こうして受かると嬉しいものね
緊張していた気持ちを解す
「扨。シルティーちゃん仕事のことなんだけど」
「はい」
「週2回以上5回まででお願いするわ。それと1日に8時間、1週間に40時間までだからね」
週40時間
週最低2回、最高が5回
2回で4時間程働くとすると、96ラルク(960円)×4=384ラルク(3840円)
それを1ヶ月すると384ラルク×4=1536ラルク(1万5360円)
5回で8時間程働くとすると、96ラルク×8=768ラルク(7680円)×5=3840ラルク(3万3840円)
それを1ヶ月すると3840ラルク×4=15360(15万3600円)
かしら
そうね、最高日数と最高時間で頑張りましょうか
「週5回で4時間、日払いでお願いします」
「が、頑張るわね」
まぁ、しょうがないわよね
週1万ラルクのキリキリな生活だから
今考えてみれば、1週間1万って鬼ね
ま、そういう話なんだから仕方ないか、、、
割り切ることにした
「すいません。仕事、今日からで5日程いいですか?」
そういうのも、話が決まった日から2日経っている。薬の処方の日が1日、翌日の事情聴取で1日
そして今日やらなきゃ3日目
週は7日しかない。後5日、それが今日もなければ後4日。4日で1万など死ねと言っているもんだ
それほどまでに不可能なこと
それを余計不可能にさせるのはただの馬鹿がする事だ
だけど下手な仕事だけは嫌だったから此処を選んだのよねぇ
お金が欲しいからと欲に駆られればロクなことがない
「そうね、、、何か事情があるのかしら?」
「すこし、色々とありまして」
「そう、、、分かったわ。じゃあ今日からよろしく頼むわね」
意見が通った。良かった
そうすると週の収入3840ラルク
週目標が1万ラルク
足りないのが6160ラルク
だからタツヤ、あなたに掛かってる
残りの金額をタツヤに託した
キャラ後書き
ダメな方はビューンっと飛ばして下さい
作者「お読みいただきありがとうございました」
シルティー「ありがとうございましたってあれ?達也は?」
作者「今回はシルティーにライトを当てたからね、独り占めだよー」
シルティー「と、言われてもねぇ」
作者「ま、そうだね」
シルティー「……」
作者「……」
達也「ただいまぁ」
作者/シルティー「やっぱり達也は必要!」
23話でした
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