なぜ彼女なのか
旅する猫
Ep3.なぜ彼女なのか
ランドの町は周りが草原で囲まれているのに町の中は砂が地面になっているという町
海はないらしいけど、川はあるみたい
まずは協会に行って報告をしないと
チィーはちゃんと着いてきている。この町は外より暑くないので過ごしやすいのだと思う。
色々見ていきたいけど後回し
丘の上にある白い建物がそれだろう、THE協会だ
「着いた!」
目の前の大きなドアは青色でガラスのような石が埋め込まれている、反射して海色に光っている
少しドキドキする
「失礼します、本部より書主様の救済および書物の発見で参りました、聖神書探人のシリアと申します!!」
……
あれ?
反応なし?
…
「あ、あの…私、本部かr」バンッ!!!
「ぐえっヲエィッ!!!!????」
思いっきりドアが開かれて思いっきり額が直撃しました。
無意識に電柱にぶつかるより何倍も痛い。
「お待ちしておりました!探人様!!心配して居たんですよ、もう心配で心配で…あれ?」
悶絶というかこの痛みで何も頭に入らない。
「あ!!ご、ごめんください!!」
私より小さいその子は100度ぐらいの角度で頭を下げた
「ダッ大丈夫ですよ、ダイジョウブです、だイジょウぶ。こちらこそおまたせしてしまい、申し訳ありませんでした」
だんだん痛みは引いてきた
目の前の小さい子の顔がやっと見えた。短髪でクリーム色の髪がドアの青い背景でさらによく見える。
「とりあえず中へお入りください、できる限りの事は我々が全て提供させていただきます。」
中に入ると
「うわぁ…すごい」
額を抑えながら思わず声が出てしまった。
中は天井が高く、窓のガラスも青い色で太陽の光を通して協会の中がトルコ石のような青色でまるで水中に入ったような感覚になる
「今、主人をお呼びしますね」
小さい子は左側のドアから出て行った。
不思議な協会だ
あの子の事ではなく、この空間がである
どこからか泡のような音がする、細かい泡、大きな泡、それぞれの形が混ざる音 これは本物の海の音とは違う気がするが、とても心地よい、立ったまま寝てしまいそうだ。
そして床はなんと草が生えている、芝?のようなものでずっと上を見ていたので今気がついた。
「あの人と同じ感じがする…」
ふとあの人のことが頭に出てくる
声しか聞いたことがないのにこことおんなじ雰囲気だったと思う
優しい泡のようなふわふわな声で、
声で…
「お待たせしています」
突然後ろから声がした。
慌てて振り向くと後ろには黒い髪の女性が立っていた。
すらっと立っているがフードをかぶっていて顔はよく見えないが、声の雰囲気からお年を召しているのがわかった。
横にはさっきの小さい子がニコニコしながら主人の手を握っている。
「よくぞいらっしゃいました、聖神書探人様。私はここの町の協会の主人をしているミユキと申します、この町の書物の救済に必要な事で我々を手足だと思って何なりと申しつけください。」
ミユキさんは頭を下げた。私も反射的に頭を下げる、顔を上げると2人の後ろに同じくフードを被った人たちが10人ほど立っていた。
「助かります、では早速通信機をお借りしてもよろしいでしょうか?」
はい、ではこちらへと招かれた先にはく白い電話があった、これは他の電話機とは違い、本部専門の通信機であり、協会の限られた人しか使えない。
私はフードを外して上着を脱いだ
すると後ろで わぁ…と声が聞こえた
脱いだ上着を協会の人に渡した、中に着ている聖神書探人の証でもある神衣を探人以外に見せるのは久しぶりかもしれない
「よし」
受話器を取り、手を乗せて軽く文字をなぞる、白い本体に彫ってある金色の文字が光り始める
頭の中に静電気のような光が線になって向こうに通じていく感覚が起きる。
ジジッ…ギギギィ…
カチッ
繋がった。
「はい、こちら中央本部聖書物管理局です。番号受信しました、局長におつなぎします。」
「……」
「あー、私だ随分と大変だったみたいだね」
局長はすぐに出た、普段は書物の管理で忙しいのだが電話には意外にもすぐにででくれる。
到着の報告をしなければ。
「はい、無事に到着しました、途中トウヤ殿に道案内をしていただきまして」
「ふふっ楽しかったんじゃないか??珍しくお前が道を間違えるなんて、また変な食べ物でも食べたんだろう?」
「えっい、いえ!違います違いますって、あれは仕方がなかったんです!、もう…やめてください」
「ふふふっまぁ元気そうで何よりだね、到着さえすればあとは目的をこなすだけだ、本題に入ろう。今回の目的は…」
この言葉を聴くと緊張する。胸がぐっと締め付けられて鼓動が抑えながらも早くなる感じ。
「その町に居るとされる書主、および書物の回収。もしくは救済だ」
そう、基本的にこの会話はよくあることだ。
ここまでは、
「だが、すでに書主は運命を早くに終わらせてしまい、残った書物が途中になり前にも後ろにも進まない状態になっているらしいんだ。」
「もし墨の奴らに塗りつぶされているとしたら、」
そうこのパターンがあるからいつも私の胸は締め付けられる
「破り捨てろ」
これは仕方ないことだ、書物が真っ黒になること、それはつまり直すことも進めることも戻すこともできない人間を作ってしまう事になるからである。
「はい、わかりました」
と私は答える、もちろん拒否や誰かに変わってもらう事はできない。
それが私の使命であり運命であるからだ。
「もちろん焼き捨ててもいいからな、ちり紙にしてもいいぞ」
と少し局長からユーモアに言われても私の気持ちは変わらない。
「大丈夫です、ではそろそろ時間ですので」
「あぁ戻ってからの報告を待っているよ。では健闘を祈る。最後まで探人であれ。」
「失礼します」
ブチっ…ギリギリ…
頭の中が静かになる。
「貸していただいてありがとございました」
私はどんな顔をしていたのだろう。
聖神書探人の目的の1つに書物の破壊がある、これは選ばれた人間であり運命が他の人と違う私達しかできない事で、3つある階級のうち他の2つの位では回収と救済が使命になっている。大歴史書本に触れたという事は神に近い存在とも言える、墨塗りの組織では塗りつぶして書物の運命を止めることしかできない、それではその書物の物語として生きている人はどうなるのだろうか、それを無理矢理破る事で物語を無かったことにできるのが、この階級に許された運命である。
「さて、商店街に降りて書主様の場所を探さないとね…」
足元ではチィーが顔を丁寧に掃除していた、目が合うと一度だけ鳴いた。
「ついでに美味しいものとか無いかなー」
とりあえず動いて探してみる事にした。
4へ続く
おまけ
2人が町に向かった後
「不思議な人ですね、主人さま」
青い窓から覗いていた彼女はそう呟いた。
「通信機をかける前の雰囲気とは違ってフードを脱いだ時の空気の流れがとても不思議でした、あたたかいようでとても鋭い刺さるような…」
ミユキは少し微笑みながら言った
「そうだね…あれが人間なんていまだに信じられないよ…まるで母親のような目で私を見ておられた、人の死や破滅、エゴや自分では理解できない道徳をいくつも見てきているというのに、常に運命に;生きている、こんな世界で運命なんて知らずに自分の意思で生きている方なのさ…」
「ねぇ主人さま!ー!私もあのお方のようになれる?私も早くあのステキなお衣装を着たいです!!」
小さい子は宝石のような目で聞く
「そうだねぇ、まずは好き嫌いを無くす事だね、あのお方は嫌いな食べ物なんてないんだよ?」
小さい子の眉間にシワが3本できた
「えぇ…やっぱりあれ食べなきゃいけませんか…あれはとても苦くてニガニガします…」
女性が呆れたように言う
「全く…あなたは勉強も嫌いでしょ文字も教えてもすぐ忘れるじゃないのよ」
「む…わ、わかりました…今夜のお夕食はあの緑のニガニガを食べてみせます 文字はもっと苦手です」
その頃町の商店街では
「おぉお嬢ちゃん他の国の人だね?サービスしちゃうよ!これ持っていきな!」
「あ、ありがとうございます(ピーマン…苦手なのよね…ニガニガ…)」
シアの抱える紙袋には鮮やかな緑が山のように入っていた