クロスボウが『直接射撃しかできなくて困る』理由が分からなくなった
◎想定しているクロスボウ
張力270ポンド 速度150m/s
(まあ、例によって重要なのは速度だけの簡単すぎる検討方法)
このクロスボウは2秒で300メートル先へ届きます。
2秒間に物が落ちる距離は20メートルなので、標的の20メートル上を狙った角度で射出します。
底辺300メートルで高さ20メートルの角度は約3.8°です。
イメージ的には150メートルの辺りで高さ5メートルな、超横長な放物線を描きます。
ちなみに、ほぼ全ての種類の弾は、射出された瞬間から落下を始めます。
なので直接射撃であろうと、0°では――完全な水平射撃はしません。
(玉をポップさせたり、翼を生やして揚力を発生させることもできる。が、浮き上がるほどの力を得るのは少数派……のはず)
また、放物線を描いているからといって、その頂点で力を使い果たしている訳じゃありません。
クロスボウが与える上向きの力は等直線運動、落ちるのは重力によって加速しているだけです。
どこで横向きの力を使い果たしてしまうかは、また別の話となります。
(空気抵抗を無視している以上、この考察では起きないけど……現実では使い果たすと、お辞儀して落ちる感じになる……らしい)
さて、この想定しているクロスボウですが約3.8°で射出しているので、標的には約マイナス3.8°で降っていくことになります。
前回で考えたロングボウは22°ですから、かなり浅い角度です。
ここで0°で降るパターン――標的に高所を取られたケースを考えます。
意外と計算が面倒臭くで……まず、高さ(20+?)メートルと斜辺300メートル、鋭角が約3.8゜の三角形から『?』の算出などを――
うん、誤差レベルだった!(苦笑)
300メートル弱の位置から、相手の20メートル弱上を目掛け約3.8°の倍、約7.6°で射出となります。
ようするに最初に描いた放物線を、全体的に約3.8°上向きにしたわけです。
◎浅い結論1 あれ? べつに高所とられても、普通に狙えないか?
変だなぁ……どこかで計算間違えたかなぁ?
と思いつつも――
これがライフルとかであれば、ほぼ間違っていないと思えます。
銃器でも角度は0.0……な浅いというより薄い角度ですが、放物を描いた……はず。
そして――
「ライフルだから高所の相手は撃てない」
「銃器相手には高所を取れ。それで相手は当てられなくなる」
なんて聞いたことがありません。
(作者が無知なだけで、金言としてある可能性も。まあ、高所の方が「地の利を得たぞ」しやすいのは言うまでもありません)
うんうん唸りつつも――
「でも、直接射撃の兵器って、すぐに降る角度が0°とかプラスに転じちゃうんだなぁ」
なんて気付きも。
この想定のクロスボウでの場合、相手が21メートル以上の高さだったらプラスの角度で標的に。
ライフルなんてプラスへ転じるのに1メートルも要らないでしょう。
そして――
◎浅い結論2 プラスの角度で降ってくる射撃兵器は、遮蔽物が100%機能する
でもあります。上から飛び越えてこなくなりますから。
なので第一次世界大戦は塹壕戦になった。
ライフル相手に最も有効なのは、遮蔽物に隠れること。そして最も良い遮蔽物は塹壕!
そしてクロスボウが高所を取られたら不利というのも、盾などの遮蔽物が100%機能しちゃうから!
おお、なんだ!
やっぱりクロスボウは高所を取られたら厳しくて、間接射撃ができないことが弱点となったのだ!
……と結論を出していた頃が、作者にもありました。
◎浅い結論3 いや、それは平地同士でも大して変わらなくないか?
想定のクロスボウでも平地で標的へ降る角度は約3.8°ですし、最初から遮蔽物越しに狙うなんてできません。
それだったら――
「クロスボウは遮蔽物に弱い」
というべきです。
いや、まあ実際のところ強くはないのだろうけど!
うーん――
そもそも間接射撃ができないと困ることってなんなのさ!(苦笑)
しかし、こんな作者でも一つだけ推論は持ちました。
それはスイートスポット理論!(苦笑)
最後に着弾する近辺で弾が通る『人間が存在できる空間』がスイートスポット(仮称)です。
200~300メートル射撃は狙う難しさの問題で、どうしても当たればラッキー的な性格を持ってしまいます。
やはり流れ矢も視野に入れるべきでしょう。
そして本来の標的以外へ当たるパターン――流れ矢として戦果をあげてくれる確率は、スイートスポットの形に依存するはずです。
降る角度がマイナスから0°だった場合だと――平地だと、横方向に強いクロスボウは有効な流れ矢になりやすい。
しかし、プラスな――それも極端にプラスな降る角度だった場合、標的を外したらあらぬ方向へ飛び去って行ってしまう。
(例えば城壁にいる敵兵などは、点で捉えるしかない。有効な流れ矢となる確率も、ほぼゼロ)
また、相手が高所の斜面へ陣取られると、横方向への流れ矢力(?)が機能しない。
(外したら地面へ当たってしまうため)
だが、ロングボウのように常に深い角度で降る場合、状況によるスイートスポットの増減は小さいので無視できる。
なので比較すればクロスボウは高所に陣取られると弱く、間接射撃できないのが欠点とも評価された。
これか? これなのか!?
………………マジ、もう無理。
突撃しよ。
ちょ、そこの剣とって。俺、相手陣地へ突撃してくっから!
「うぉぉっ! ファンタジーなら素直に剣を振るえぃっ!!!」
で、終わり(苦笑)