ルースの聖女
窓から眺め下ろしていると、鮮紅の長い髪の少女が、今日も飽きずに練習場で同年代の男に交じって凛然と立っている。
驚くほど姿勢が良い。背筋を伸ばして肩肘は張らず、肩幅ほどに脚を広げて大地にぴったりと足を着いている。微動だにせずすらりと模擬剣を抜くさまは、地に根を張った大樹のようなどっしりとした安定感があった。下肢の筋肉に無駄がない。それは、周囲の男と比べても飛び抜けてそうだ。
彼女の強さの一つに起因する立ち姿だ。
その光景を退屈げな琥珀の瞳に映し、ルースは自分の金の髪を指先に絡めて手遊びする。普段ならば自分の髪ではなく、細い栗色の髪を手慰みにしていたが、今日はその持ち主がいなかった。
黙っていると、談話室にいた男が口を開いた。
「なんぞ手が暇そうだな。ミディアは?」
ルースが視線を傾けると、いつも溜まり場にしている談話室にいた『キングオブクラブ』イヴリン・オーデリー……エヴァがこちらを見ていた。若干十五歳にして優に身長170を超えた彼は、いつもと変わらず気だるそうな顔つきだ。
椅子に掛けたまま脚を組み替え、溜め息混じりに答える。
「――どうしていつも一緒にいると思うの。知らないわ」
「そうか」
エヴァはそれだけを言った。相手の懐は探らないし、踏み込まない。常にそのスタンスを崩さないこの男は、この学年で上位に食い込むほど強い。
無意識の内に、ルースは自分が掛けていた椅子の肘置きを指先でコンと叩いた。
下町育ちで文武両道を極める偉才の持ち主、赤い髪の少女オデット。剣以外に弓術・槍術まで自在に使いこなし、オデットと完全に実力で拮抗するヨハン。両利きを生かした変幻自在の剣術で、『奇術師』との賞賛を受けるルース。
そして、その三人と並び、現在まで円卓試合全勝を保持し続ける同級生――それが、このエヴァという男だ。彼の言い分を信じるなら、どうやら次席のロイドとは『相性の問題で自分が勝つだけ』らしいが。
――そうなると、自分と彼は、一体どんな理由で勝率が三対七になるのだろう、とルースは少し思った。
「ねえエヴァ、あんた、家はどうするの」
「ん?」
唐突に尋ねると、彼は意外そうな顔をして本へと下げていた顔を上げた。ルースは肘掛けに腕を委ねる。
「オーデリー家の次男坊殿は、オーデリー卿になにか言われてるの」
ルースと並んでクラスの主席を張るエヴァは、どうやらルースの家と対立関係にある家の次男のようだった。
というのも、ルースの生家は、騎士の身で男爵の地位を叙された勲功爵のチェンバーズ家だ。チェンバーズ家の当主は騎士ながら貴族としての権利を認められ、議会の下院に席を与えられた。
それに対し、エヴァの家の長であるオーデリー卿も、商人の身でありながら下院の席に権利を持つ。お互いそれを気に入らなく思っているらしく、ルースの父はオーデリー卿の悪口を言うし、逆もまた然りだろう。
とはいえ、チェンバーズ家にいながらどこか第三者的立場にあるルースは、そんな悪口に冷ややかな立場でもあった。要するに色物同士なのだから、それならいっそ仲良く協力しながら議席に噛り付いていれば良いのにと、そんな投げやりな気持ちだ。という話をエヴァとすると、彼も同意してくれた。どうやら彼は自分と同種の、家の立場を背負わない性質らしい。
妙な敵対関係が生まれないことは、幸いであったが――
「……うちの話か?」
不思議そうな顔をするエヴァに、ルースは髪をくしゃりと掻き乱した。嫌に聡い男だ。正直に本題を打ち明ける。
「違うわね。正直、家が鬱陶しいっていうか……オーデリー卿の息子がいるってだけで、父様はけしかけようとするし」
「まあ、それでもお前さんの親だろう。わざわざいがみ合うよりかは、仲良くした方が良い。なんなら一丁、俺と仲の悪い演技でもご披露しておくか?」
「そうでもないのよ」
やんわりと窘められてげんなりしながら、ルースはひらりと手を振った。
「もともと士官学校なんて入らず結婚しろって言われながら、無視して入学したのよ。最近あんまり言われなくなったのに、円卓試合を見に来た時、花束とか色々貰ったの見てたみたいで――思い出したようにまた結婚せっつかれて」
円卓試合のほとんどは男子生徒ばかりで、女子生徒が珍しいのもあるのだろう。さらには金の髪の美貌のキングとなると、特別ギャラリーの目を引いた。円卓試合のたびにさまざまな贈り物を貰う人気ぶりだ。
それを見て、また改めて結婚を望む気持ちを思い出したらしい。学内で悪い虫がついても困るというのもあるだろう。ふざけている。
「はっはあ。親心だな」
眉尻を下げて笑うエヴァを、きりりと睨んだ。
「機嫌が悪いの。もう怒るわよ」
「おお怖い。……いや、悪かった。チェンバーズ男爵の気持ちも、分からんではないんだ」
おどけたように言いながらエヴァは本を閉じ、ゆったりとソファに掛け直した。ルースの方へと身体を向け、改めて会話に集中する。
「騎士で貴族の家の姫さん……というか自分の可愛い娘、さらに噂に違わぬ美貌の持ち主が、野郎の群れに身一つで飛び込んでいるわけだ。どんな親でも嫌がる」
「父様は騎士でしょ。自分の教育の賜物でしょ、喜びなさいよ」
「それとはまた別問題にしたいのが、親心ってやつだな。……それに、将来は騎士団に入る気でいる。このまま進めば手が届いておかしくない将来だ。でも、どうしてわざわざ危険もあるし不利だと分かっている男社会に行かせて、競わせようと思う?」
ルースは腕組みをして眉をひそめた。
体格や腕力を考えると不利なのは知っているし、反論もない。むしろ、逆境は覚悟している。けれど、危険があるのは皆同じだし、立場としては同じ男爵家のロイドも、騎士団を目指している。それについては自分と同じというより、継嗣としてより重要な立場を負うロイドの方が、危険性を重視してしかるべきだ。
納得がいかないと思っていると、エヴァはさらに続けた。
「ただでさえ男爵家の娘のお前さんが、さらに騎士としての地位を得れば、おかしな男も寄ってくる。分かるだろう。それでもって、結婚したいけど口説くより簡単なのは、既成事実を作っちまうことだな」
顔色一つ変えずに言い切ったエヴァに、ルースは反論を噤んだ。エヴァは緑色の瞳でちらりとルースの顔色を確かめながら、困ったように笑う。
「人によってその手段は、お前さんが思ってるより難しいことじゃない。……そんな輩が出てくる前に結婚して欲しいと思うのは、そんなにお前さんの意思を蔑ろにすることか?」
男爵家の娘というだけではなく、ルース個人の地位が加わることで、より『結婚相手』としての価値は高まる。エヴァの言葉は充分理解できるものだった。結局自分の生き方を自分で決めたところで、家というしがらみから逃れることはできない。
エヴァが商人の家に生まれつき、考え方が根幹から商人気質であるということも、当然のことで。
「俺も商人なら、手段の一つにする」
「……」
「考えるだけで実行はせんので、そんな目で見ないでくれんかね」
この裏切り者――という非難が目いっぱい込められた視線に、エヴァがさっと目を逸らした。あくまで、どうしても他に手段がない時の最後の奥の手だと顔を背けて釈明するが、それはそれで失礼だった。
「まあ、エヴァの言ったこと、理解できるわ。それに、父様がそれだけ心配しながら、それでも私の好きなようにさせてくれてるってことも」
愚痴っぽく零したのは失敗だったかと思ったが、エヴァの話を聞いて納得するものもあった。貴族の子息であるロイドや、同性であるオデットとも、自分は同じになれない。
それに、父は心配して口ではあれこれ言いながらも、決して強引にルースの将来を捻じ曲げようとはしていない。ルースの意思は蔑ろにされていなかった。
エヴァは目を細めて笑う。
「で、進路は?」
「帝国騎士団」
きっぱり即答すると、エヴァは「お前さんらしい」と笑みを深めた。ルースはふんと鼻を鳴らして頬杖を突く。今さら他人の言葉で迷う余地はない。他でもない自分の意思で、目指す場所を決めていた。
そのために最悪、悪さされないよう寝所にしこたま武器を隠しておこうと思っていると。
「……ルース。うちの当主は、俺みたいな出来の悪いスペアなんぞ、特に必要ではないらしくてな」
エヴァの言葉にふと顔を上げる。スペア、などという消耗品のような単語に釈然としない気持ちを抱きつつ、彼の言葉にじっと耳を傾けた。
彼の横顔は、普段と何も変わらず悠然としたものだ。
「円卓試合に来たこともなけりゃ、進路について口出ししてきたこともない。おそらく困った時に泣きついても、助けてくれることもなかろうよ。将来は自分の力一つで食っていかにゃならん」
大商家オーデリー家の次男坊。そんな立場の彼は、彼の親にかえりみられることがない。不出来な息子と自嘲していても、エヴァは学業も剣術も秀で、商売に必要な人心を掴む手段も知っている。けれど、愛娘を心配するルースの親とはまったく反対で、彼の親はエヴァの手をすっかり放してしまっている。
彼にしてみれば贅沢極まりないような悩みを零してしまった。ルースはそう後ろめたく思った。
「重くはないが、守ってもくれん。羨ましかろう」
「それは気の毒ね。私ったらあんまり美しくって、心配性の父様にそれはそれは大事にされて、果報者だわ」
臆面もなく言い切ると、面食らったような顔をしたエヴァが、次の瞬間には破顔した。
「はっは!」
なにか引っかかるところがあったのか、しばらく声を上げて笑っていた。彼には珍しく大声で笑っている姿を、ルースは意外に思いながら眺める。
ゆっくりと笑いの波が引いていったのか、エヴァは苦笑しながら尋ねてくる。
「気は変わったか」
「まあ、どっちがマシかは人によるけど。少なくとも私は、ちやほやされていたい方なの」
「そりゃ何よりだ。痛い腹を見せた甲斐がある」
けろりとしていたわりに、あれは痛い腹だったのかと思いながら、ルースはお礼を言った。自分と彼は似ていると思っていたが、この学校の中で、自分の素性を話すことは案外少ない。そのため、こうして改めて話をするのは珍しかったりする。というのも、生活している内に自然と耳に入ってくるからだ。無論のこと、同時に自分もそれだけひとの噂になっているということだが。
同じ進路を志す彼の顔を眺め、ルースはぽつりと口を開いた。
「……まあでも、将来のことを考え出すと、なんだか穏やかでないのよね」
エヴァの指先がぴくりと動く。それを目の端に掠めながら、ルースは頬杖を突いた。
「騎士団が派兵されているんですって?」
普段は王都で訓練している騎士団が、最近派兵されたばかりだという。駐屯先はイースランド帝国の隣に位置する同盟国ベルギットだ。ベルギットを挟んださらに地続きの国、ウェステーズの侵略を阻むためだろう。
エヴァがにべもなく答える。
「らしいな」
「同盟国といえど、どうして王は他国の情勢不安に首を突っ込むのかしら。ベルギットなんて、大した資源も技術もないし、陸路としても半端だし。田舎くさいところじゃない」
「山はある」
「山よりは川の方がよほど役に立つわよ。船が通れるし、雪でも陸路が閉ざされない」
「麦酒や食い物は美味いな。東側はイースランドの技術と混じって立派な産業地だ」
「にしたって地味な国だわ」
特別目立ったものはない、平凡で平和で、何ごとも起こらない地味で幸福な国だ。ウェステーズが本格的に侵攻しようという素振りも見られない。それなのに、イースランドの馬蹄が踏み荒らしている。
本来守るべき自分の国を離れて。
「……ベルギットを越えられたらイースランドに入る、というのは分かるの。でも、それなら国境の平地で構えれば良いのよ。騎兵は山では身動きが取りづらい。それなのにわざわざ積極的に出向いて山地のベルギットに騎兵を置く必要があるの?」
磨いても磨いてもどうしても歪になる爪を弄りながら、ルースは柳眉をひそめた。
「これじゃ、まるで……」
「戦争したがっている?」
エヴァの乾いた声に、ルースは思わずびくりと震えた。
焦る気持ちが声を尖らせる。
「口が過ぎるわ。そこまで言っていない」
窘めると、エヴァは軽く瞬きして応じた。自覚はあるらしい。けれど、否定する言葉は発せられなかった。
――疑っているのは、自分も同じだ。
「現王は、力に過信しているきらいがあるか」
「……お目見えした時、どう思った?」
三年期末の円卓試合を勝ち抜き、四年次生以上になったルース達は、他の学生たちより一足先に社交界に出ることが許されるようになった。社交期が始まってすぐに催された王城の祝勝会で、四、五、六年の王がそれぞれ四人ずつで十二人、王の謁見を許された。軍服を着込み、王と王妃の前に進み出て跪き、それぞれ短く玉音を賜る。その時、初めて王を目にした。
一時のあの印象で判断するには、少し厳しいかと思っていると、エヴァがすらすらと答えた。
「王の周りにいる者に、軍関係者が多かったような気はした。騎士団の、大元帥と軍師、陸軍・海軍の大臣、それから近衛として騎士が」
よく見ている男だ。素知らぬふりで、一瞬顔を上げた瞬間に、ざっと周囲を確かめていたのだろう。抜かりない商人の血筋を思い出しながら、ルースは首を傾げた。
確かに士官学校とはいえ軍の行事なのだから、関係する軍人たちが揃っていても不思議はない。けれど、エヴァが一瞬見て目に付くほど近く、王の周囲に侍るものだろうか。
不審が募るのは、自分たちの疑心がそうさせるのだろうか。
「王は足元が見えていないのかしら。帝国内ですら、侵略して奪った領土まで完全に統治しきれていない。貧しい国民がいれば、私腹を肥やす貴族もいる。軍は汚職を隠してる。国内に目が届いていない……それなのに、なぜ私兵を遣わすの」
どうして国内を取り締まる前に、他国にばかり目を向けるのか分からない。そこに利益があるというのなら、考えられる可能性は一つしかない。
「賠償金目的に、ウェステーズと戦争をしようなんて、そんなこと……まさか考えないでしょうね」
「……王の考えは分からん」
エヴァが嘆息交じりに呟いた。ルースは琥珀色の目を眇める。そう、王の考えがまるで理解できない。分からない。
「愚か者の王ではなかったはずなのだけれど……後ろにいた識者でもいなくなったのか、あるいは私欲で王を惑わす愚者でも現れたか。過去の政策を調べて、昨今は愚策と取れるような政策しかなさらなくなってしまったわ。なにかお考えがあってのことなら善いのだけれど」
「それが本当なら、あんがい帝国騎士団という進路も安泰でなくなる」
エヴァの言葉に、小さく頷いた。
王政は不穏な翳りを落としている。圧倒的な武勇を誇る帝国騎士団が、王の采配で危険に晒されるかも知れない。騎士団のみならず軍の弱体化も危惧される。そうなると、周辺国が侵略してくるだろう。
「死に体をつつく禿鷹は周囲に幾らでもいる。イースランドはさぞ喰らい甲斐があるだろうな。何分割されるもんか」
「……そんな時が来たら、この帝国内で完全に安全な職なんて一つもなくなるじゃない」
「違いないな」
国ごと傾くなら、帝国騎士団だろうがどんな仕事だろうが、絶対に安全な保証などはなくなる。エヴァはしれっと続けた。
「貴族や行商は他国に逃げられるが」
「……この地にしがみつくしかできない、弱い人だけが残るわけね」
富裕層は我先にと安全な他国に逃げ出すだろう。行商として各国を回る商人たちも、あえてこの国に残る理由はない。残されるのはこの地から動く力もない、無力な国民だけだ。
ぎり、と歯噛みして義憤を押し殺すルースを、エヴァはちらと横目で見た。
「正義感が許さんか」
「そういうのは分からないわ、その気になれば私も他国に逃げられる側だもの。……でもそうなった時、本当に悲しむ人がいるのは知ってる」
想像すると、胸が締め付けられるように痛い。けれど、自分より苦しむ人がいるのだ。戦火に蹂躙される弱者を見て、我が事のように悲しみ、絶望し、嘆く人がいるのだ。
その時に、自分にはその人の苦しみを退けることができない。
「それが耐えられないっていうことも想像が付くの」
ぐしゃりと前髪を掻き乱し、ルースは俯いて項垂れる。耐えられなくて苦しいのに、ただ見ていることしかできない自分を想像すると、屈辱でたまらない。
そう分かっているのに、可能性の芽をどうすることもできない。力がない。王政への不信を否定できる根拠が探せない。
いずれ訪れるかも知れない嵐に対して、今の自分はあまりに無力だ。
もどかしいのは、きっと彼も変わらない。
「耐えられないのはあんただって同じでしょ」
「そうだな」
ことのほかあっさり肯定したエヴァに、心底驚いた。
琥珀色の目を真ん丸にしたまま顔を上げると、エヴァの横顔は瞑目してぽつりと零す。
「想う人間がいる国は、愛しいに決まっている」
どこか情の感じられる呟きに、ますますはっとさせられた。エヴァにとっても自分にとっても、なにもおかしなことはない決まりごとだ。この国が愛しい。
想う相手がいる国だから余計に守りたいし、逃げることができない。情が命をこの国に縛り付ける。
国を愛する聖女を想う限り、自分はこの国を守って死ぬしかないのだろう。
そう思うと、急に頭が冷えてしまった。
溜め息を吐いたルースは、おもむろに組んでいた脚を解き、すっくと椅子から立ち上がる。腰に手を遣り、ぶすくれた顔で呟いた。
「……謝ってくる」
言った瞬間、エヴァが吹き出して笑い出す。
「はっは、やっぱり喧嘩してたか。それが良い」
ルースは声を荒げて喧嘩でなく持論の違いだと主張したが、エヴァは笑っていて聞いていなかった。
冷たい眦でエヴァを睨む。
「分かってたでしょ、あんた」
「知らないふりは得意なんだ」
こともなげに言う男が、自分の気持ちさえも知らないふりをすると知っている。ルースは目を細めて小さく答えた。
「そう」
自分を蔑ろにする彼を、憂う人がいることを知っていながら。
「じゃあ、今日の話もそうしましょ、お互いに。特にロイドあたりには」
彼の自己満足に付き合ってそう言ってやると、彼はやはりほっとしたように目を細めた。
「そりゃ助かる」
告げ口されたら恥ずかしい、などと平然とのたまう彼に、ルースは一つ嘆息した。
いっそ暴露してやればもう少しロイドも浮かばれるのではないかとちらと考えながら、白い脚をひけらかすように優雅に歩き出す。
ひらりと手を振るエヴァを一瞥だけして。
「バカね」
訝る彼など気に留めず、ルースはきっと前を見据えた。