2話_Smiletime_2_
今回は水着回(着ているとは言っていない)
「スクミズが最上でサイコーに決まってるだるぉ!!おらぁん!!!」
ガラガラバッシーンとドアを開け放ち、一声で己の欲望を解き放つ葉梨。忘れてはいけない、今開けたドアは教室へ繋がる扉で、そこには沢山のクラスメイトがいることを。
いや、クラスメイト達もまた馬鹿が一人増えたよ程度であんまり気にしてない。ソレで良いのかクラスメイト。
葉梨は、水着論争をしている件の二人が囲っているに近づくと、机に片手を振り下ろした。
「スクミズはなぁ、あの犯罪的な体のラインがくっきり出る造りをしているくせに、学校指定の水着だぞ?明らかに公的に認められたエロスだろうが!!」
そう。スクミズはプールのある学校なら一度は着させられるものだ。つまりはお偉いさん方も、このスクミズのエロスを推しているに違いない。との葉梨の弁。
水着論争していた2人に反撃させるまもなく言葉を続ける。
「考えてもみろ。着たくないのに着せられて。体のラインが浮き出るスクミズの上から、自分の胸を気にしている少女の姿を思い浮かべてみるんだ!…至高だろ?」
破壊力抜群。成長途中の女性を見ることの多い、学生ならではの意見だ。
机の上に片足を乗り上げて語る葉梨の姿が、より説得力を与えている。
「まぁ、確かにスクミズはやばい。けどな」
「どうした藤崎。この完璧な理論に穴があるとでも?」
肩をだらりと脱力し、ゆらりと立ち上がる水着論争の片割れ。
モテたいという一心でだて眼鏡をつけているが、元来の猿っぽいが邪魔をしてメガネザルにしか見えないこの男が藤崎 心咲。このクラスを誇る馬鹿の一人だ。
「ようっち、世の中はマイクロビキニなんだぜ?」
その眼鏡の中は齢16歳にして、全ての煩悩を悟るような目をしている。
「俺達男子高校生は、日々女子の全裸を求めている。ここに意見はないよな?」
「まぁ。そりゃあ誰だって求めるな」
「それでだぜ、頭の中でマイクロビキニと全裸の女性を思い浮かべてみろ」
葉梨は脳裏にウフーンでアハーンなお姉さんを想像してみた。その中でどこかのサイエンスな人形みたいに、着せ脱ぎをさせてみる。
「あれ…。何故かマイクロビキニの方がそそられる…」
「そうだぜ。マイクロビキニにはな、全裸とは違うなんか専門的な匂いがぷんぷんするんだぜ!寧ろノーマルなエロスの全裸より、ややアブノーマルで蠱惑的なモノを感じれてそそる!!」
豊満な胸を持つお姉さんがこちらを見て薄く笑いながら手招きをして、ベッドに誘い込む姿をクラス中の全男子が幻想した。それが実際にあり得るかは関係ない。男子高校生は夢を追いかけるものなのだ。
これは藤崎の勝ちかとクラスの男子が思っていると、先程まで不気味なほどまで黙っていたイケメン、香川 伸介が喋りだす。
「まじで分かってないなー、二人とも。確かにマイクロビキニもスクミズもやべーけど、タンキニの力に及ばないっしょ」
軽薄そうな口調でにやつきながら告げられた言葉は、明らかな宣戦布告。
ぴりついた空気が場を支配する。
「へぇ、言ってみるんだぜ。その根拠を」
「まず、タンキニを着ている女子を思い浮かべるっしょ」
その戦法は奇しくも藤崎と同じ、想像力による補完だった。
「で、どんなな女性を想像した?」
「ボーイッシュな短髪娘かな」
「俺は笑顔の似合う、金髪イケイケガールだったぜ」
「共通点は?」
「元気そうなとこだぜ?」
確かにボーイッシュもイケイケガールも元気だろう。藤崎の言葉に追従して、チャイムの鳴る中葉梨も首を振る。
二人の反応に満足したのか、益々笑みを深めて
「そう、共通点は元気そつなとこっしょ。水着は元々、水の中で遊ぶアクティブな人へと作られた物っしょ。水着を着て遊ぶような元気娘に、タンキニが似合うのは先程道理。つまり!水着界最強は、水着で遊ぶ系女子に一番合うタンキニっしょ!!」
需要と供給にピントを合わした理論に、ドアが開く音と共に唾を飲む音がする。
しかし、しかしだ。奴は一つのミスをしている。そんことを幽霊に追われて17年。神経を張らして生きてきた葉梨が逃すわけがない。
「…ふっ、ばかだなシンは。水着を着ているとき、誰しもが水で遊びたいわけでは無いんですよ。水で遊びに来た人の付き添いという可能性を見逃している!!」
そう。水場の利用者は別に泳ぐ人だけではない。砂場で遊ぶ人や、保護者として子供を眺めている人も居るだろう。
「そうだ…。俺も水で遊びたいわけでは無いのに、プールに行ったことがあったっしょ…」
「知ってるぜそれ。ただ女の水着を見たくて市民プールに行ったけど、健康志向のおじおばちゃんしか居ないって、TLで嘆いていたやつだろ」
どうやら香川はそのときを思い出したらしく、とても萎れた顔をしている。若さ故の過ちというものだ。
「スタンダードな水着娘と違って。え、大胆!みたいなギャップ萌を、付き添い人には期待できるだろうが!!」
「ギャップ萌!!ツンデレやクーデレなどの大御所も所属している、一大勢力だぜ!」
余りにも有名な由緒正しき萌えに、可愛いとは何だったのかと再認識させらせる発言だ。
「話をまとめよう。メインにスタンダードなタンキニ、サブにギャップ萌のスクミズ。夜にエロスのマイクロビキニでどうだ!!」
それは三人の意見が共存する、平和的なまとめ方だった。
どうだっ、とふたりの顔を伺う葉梨だったが、二人は息をつくと手を前に出してきた。
「共存できるんだし、無闇に争うことはなかったっしょ」
「これからも俺たちは友達だぜ!!」
三人が肩を抱きしめ合う。その光景は、もしかしてこいつらホモなんじゃね?と思わせるほどの熱さだった。
そうして何事もなかったかのように、各々席に座ると前を向く。
そこには既に担任の先生が黒板を書いており、授業が始まっていることが窺える。
「取りあえず一一、香川、藤崎の三人は頭冷やすために廊下に出てこい」
先生の生徒を思う心に舌打ちをするのであった。
今までの一部の平均文字数1715文字
今回の文字数2407文字
…仕方が無いね。水着大好きだし。