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鬼はいつも人の心に  作者: UVリキュール
12/15

4話_Rescue operation?_

 休みがあると小説を書くより、小説を見る方に手が伸びる気がしますね

 深夜徘徊。ナイトウォーカー。吸血鬼の異名とも扱われる、この行為は褒められたものではない。幽霊から逃げていつも間にか夜になった事はあるものの、自ら好んですることは葉梨にはあまりない。だから意外に思えたのだ。


「奇遇だね。こんばんわ、よう君」


 秤が深夜帯こんなじかんに外出していることが。

 夏が近づくこの頃でも夜はやはり寒いらしく、秤は手袋にマフラー、車いすだからこそ出来る膝掛けを装備していた。吐く息は白く、外に出てからそこまで経っていないのだろう。

 にしても無防備である。外に出てから四肢が動かなくなる事を考えなかったのか。


「私が外に出ているの意外に思ってる?ふふっ。私ね、夜はとても体の調子が良いんだ。昂ぶって寝れないくらいには」

「だから外に出て体を冷ますってか。夜道は危ないんだぞ、特に女性にとっては。誘拐事件が起きているとも言うし」


 恐らく橋姫であろう妖怪の霊が、悪事を働いていると知っている葉梨としては、気が気でなかった。

 そんな葉梨の心を知らず、ニコニコと帰る様子もない秤。


「連続無差別誘拐のことかな。怖いよね-、私としては同じ地区で起きている実感がしないんだどね。他人事のでしかなくって、私と私の周りにはまだ被害が出てないんだから。………よう君は違うんだろうけど」

(……………………)

「最後の方なんて言った?聞きとれんかった」

「いや、何でもないよ。それより、危険ならよう君だって危険なんだよ。同じ時間帯に出歩いているだけでギルティ」


 一瞬、ほんとに一瞬だが、秤の目が哀しそうにしてたのは気のせいだろうか。葉梨に判決を言い渡した姿は、いつも通りの秤に見えるが。


「買いのも袋持ってるけど、今から買いに行くの?」

「既に中身入ってるぜ。妥協案のキャベツたっぷり鍋に、日用品だ」

「キャベツたっぷり鍋ってお肉入ってるよね」

「当たり前だろう。……一割も満たないけど」


 食費に余裕などないのだ。(バキの)腹を満たすのを第一に考えないといけない。


「相変わらず貧相な生活だね…。……………良かったら、今度家に食べに来る?」

「秤ん家は裕福なんだな。確か親御さんは里子だろ」

「うん、紫藤さんには良くして貰っているよ」


 ブロンズの短い髪を揺らす彼女は捨て子である。日本で暮らしてすらいなかったのか、拾われた当時は英語しか喋れずに意思疎通に苦労したそうだ。

 五歳の頃発見された彼女はとても衰弱しており、なにかの事件に巻き込まれたのか、服には血が付着していた。その事件の衝撃か何かで、秤は四肢が不自由で一部の記憶を失った状態で国に保護されたのだ。

 聞く限り、その後秤を拾った五十代の夫婦である紫藤夫妻は秤を可愛がっているようだ。


「いつも学校でお世話になっている生徒がいるー、て言ったらその子を食事に誘ってきなさいって言うんだ」

「その言い方だったら、俺が男性であること知らないんじゃ…」

「あっ、そうかも。でも良いよね」


 突然行きたくなくなってきた葉梨。親御さん付の年頃の女の子の家に遊びに行くのは、少々どころでないぐらいハードルが高い。特にお父さんからの威圧が凄そう。

 先程の通り、里子の紫藤さん達は秤を可愛がっているのだ。可愛い娘が親しい男性を連れてきたら衝撃的だろう。


「えぅ、また今度で良いか。それ」

「遠慮しなくて良いんだよ。栄養不足で倒れちゃったら、私も困るし」

「だよねー。困るよねー」


 俺も困っちゃう。

 しかし、これでも幽霊とかアクシデントに慣れている猛者の葉梨。この程度の問題で止まるような器ではなかった。


「今、ホームステイしている子が居るから。その子ほっとけないし」

「その子も来れば良いよ。とゆうか外国人の人が泊まってるの?!」

「ロシアからの子でな。中途半端な日本知識しか持ってないから、迷惑かけると思うぞ」

「大丈夫だよ。お母さんはロシア語教師やってたから意思疎通できるし」


 はい積んだ。何でロシア語の教師しているんですかねえ。

 でもやっぱり怖い。何かを守るものは時と場合により恐ろしい力を出すのだ。はちゃめちゃシスター風香で体感済みの葉梨は、とても楽観視できなかった。


「それとも私の家なんか来たくないかな…」

「それだけ条件が揃っているなら断る理由がないわ。何時なら良い?」

(ほんとお主は、他人が負の感情を持つと相手を優先するのう。チョロインか)

(いーや俺の攻略難易度はかなり高いね。じゃないと俺に彼女が出来ていない理由が分からん)

(…確かに自信とゆうのも大切じゃ。例え過信だとしても進む燃料になるからのう)

(過信?そう思うならそうなんだろ。バキ姉の中ではな!)

(うざいのう)


 これも気の置けないやり取りなのだろう。それがバキの朝目覚ましの対応が、悪くなる理由になるとしても。


 ふと、顔を上げてみると、秤の後ろに燃える角の生えた着物の女が


「えっと、今週のど―――「危ない!!」きゃっっ!!」


 急いで横にある車椅子を葉梨側に引くが、思っていた以上に重い。結果車椅子は傾いただけで、葉梨に秤が倒れ込んできた。足に秤の胴体が当たり、ドミノ倒しのごとく倒れる二人。葉梨が秤を両腕で抱えると、二人の頭上20センチに白い手が通る。

 不意打ちの妖怪の襲撃だ。見る限り細部に違いはあれど、橋姫で間違いないだろう。


(奴の手に触れた車椅子が消えた!捕まったら一巻の終わりじゃ!!逃げろ!!)


 ナイロン袋を放り、なだれかかっている秤の両足を左手で持ち、右手は右脇をとおす。俗に言うお姫様抱っこをすると無我夢中で走り出す。心臓は走り始めたばかりというのに、ばくばくと鳴り煩い。


「あ、あ、あ、貴方!!!」

「なにが貴方だくそったれっっ。襲うなら俺が一人の時にしろよ!!」


 心なしか葉梨を見た橋姫の目の色が変わる。もう葉梨しか見えないとばかりに。


「愛しい貴方!!!何故私から逃げるのっ!!!」 

「ただでさえ面倒なのにさらに面倒事の香りがするぜえ!!」


 静かな深夜帯の都市の中で、命を賭けた鬼ごっこが今始まった。



 やっと戦闘パート(逃げているだけ)

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