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2話

1/2

 『B班実験経過報告』担当:酢払作治。

 レベル1、発現せず。

 レベル2、発現せず。

 レベル3、発現せず。

 レベル4、『No.11』の死亡を確認。実験失敗。

 以後、B班は『No.16』の実験に移行。

 レベル1、発現せず。

 レベル2、発現せず。

 レベル3、『No.16』の死亡を確認。実験失敗。装置の故障が原因だと思われる。復旧、確認完了。

 以後、B班は『No.19』の実験に移行。

 レベル1、発現せず。

 レベル2、発現せず。

 レベル3、発現せず。

 レベル4、発現せず。

 レベル5、発現せず。

 レベル6、発現せず。

 レベル7、発現せず。

 レベル8、発現せず。

 レベル9、発現せず。

 レベル10、発現せず。

 レベル11、発現せず。

 レベル12、発現せず。


  ■□■□■□■□■




 『現在、都市外のいくつかの地域で児童の失踪事件が多発しており……』

 普段は置物と化しているテレビから、物騒なニュースが流れる。

 男は言っていた。ここの人間は、『外』に疎いと。

 異能が、『中』だけの存在だとでも思っているのか、と。

 非日常という日常は、少しずつ、じわじわと侵食されている。

 異能。私達のような組織。『識別名』。境地。研究職。

 言葉はピースになり、やがて真実を形作る。

 玖桐はそんなことを考えながら、目の前の少女、アリサを見やる。

 「……これすごいおいしいむしゃむしゃ」

 「ギャグ漫画みたいな効果音を発するな、食うか喋るかどっちかにしろ」

 ここは、玖桐の棲むアパートの一室。

 そう広くない居間に、小さめのちゃぶ台を囲んで食に興じる少年少女が二人。いや、興じているのは少女だけか。少年の前には何も置かれていない。

 フライパンに乗せられたまま運ばれた豚肉と野菜が少々盛られた塩焼きそばは、すでに半分近い量が消え去っていた。

 アリサ=ステラリウムによって。

 「食べ過ぎだし、心なしかキャラも変わってないか……」

 「お腹減ってたんだから、しょうがなむしゃむしゃ」

 「せめて最後まで言ってくれ。お前そのうちむしゃむしゃとしかいわなくなるんじゃないんだろうな」

 食いしん坊キャラが行き過ぎてバカにならないか心配する玖桐。

 さっきまで薄幸の美少女みたいな感じだったのだが。

 しかし、当の食いしん坊少女は無視して食べ続け、フライパンの中身が三分の一ほどになったころ、やっと少女は話し始めた。

 「さっきのガードマン、どうやって殺したの?」

 「どうっつっても……普通に、ナイフで殺しただけだけどなぁ。種も仕掛けもない、原始的な殺しだよ」

 玖桐は、こともなげに、そう答える。

 「拳銃持ってなかったっけ」

 「先に動けばいいんだよ、相手の意表を突いて。まあそれでも咄嗟に照準を合わせられるぐらいの腕前はあったわけだけど、照準の先がお手本通り心臓だって分かるんなら、ナイフで防げるよなぁ」

 「銃弾を? ナイフで? ……防げるの?」

 「ちょっと手首が痛くなるけど、うまく身体から逸らすぐらいならできるよ」

 かろうじて人に止まっている玖桐から『拳銃を持った相手を殺す方法』を教授するアリサ。

 多分、というかまったくもって役に立たないだろう。

 「さて。で、これからどうするかなんだけど」

 「どうって?」

 「いや君の記憶だよ、他人事過ぎるだろ……。まあいいや。とりあえず、名前は分かった。アリサ=ステラリウム。それが君の名前」

 「…………アリサ」

 無感動に、そう呟くアリサ。

 他人事。それもそうだ。

 目の前の少女にとって、アリサ=ステラリウムは記憶に存在しない誰かなのだから。

 「そんでもって、アリサを狙うのは『外』の何らかの組織。多分、異能力関係だと思う。今『外』で起きてる事件とも、関連してるかもね。そして、そこでアリサは悪魔と呼ばれているわけだ」

 悪魔。

 一体、どういう意味でそう呼んだのだろう。

 玖桐には計り知れない何かが、この少女にはあるのだろうか。

 計り知れないもの。それは、人にとって最も恐るべきものだ。

 だとしても、玖桐は記憶を取り戻すのを辞めはしない。

 無知ほど怖いものもない。それもまた真実だ。

 何より。

 「美少女だし」

 「……?」

 「とりあえず。仮説をあげるとすれば、アリサは異能力開発組織の実験体で、そこから逃亡する過程で記憶を失ったってとこかな。だとすると、記憶を取り戻す糸口はどこにあるんだ? ……組織の研究室とか?」

 情報は少ないが、それでも、有る程度の背景は見えてくる。

 後は、どうやってそこに現実を作り出すか。

 仮説でも、積み重ねれば立派な定説だ。

 「……鍵」

 「かぎ?」

 「……そう、鍵。鍵が、何処かにある、はず」

 「ふーん……記憶の残滓、ってやつかな」

 玖桐はそう呟いた。

 鍵。

 その言葉は多分、アリサの記憶に残っていた何かで。

 アリサの記憶喪失に関わる何かだ。

 意味としての鍵ではなく、存在していた言葉。

 元から記憶にあった、鍵という単語。ワード。

 それが何を示すのか、まだ分からないが。

 「ま、今はいいや。とにかく、その組織のとこに行こう」

 「組織の場所、分かるの?」

 「分からん。から、調べてもらう」

 そう言って、玖桐は電話を取り出した。

 「もしもし、玖桐だけど。…………あーはいはい、また今度また今度。で、依頼なんだけどさぁ。……いや、だから次会った時には払うって‼︎ だから依頼! …………えーっと、『外』で異能力開発関連の組織を片っ端から教えて欲しい。この都市から十キロメートル以内で。……じゃ、お願いねー」

 「お金、払ってないの?」

 「安定した職についてるわけじゃないしなぁ。入るときは入るんだけど」

 「かわいそう」

 「うるせー。……うーん、じゃあどうしよっかなー。あいつでもさすがに探し終えるのには時間かかるだろうし…………あ」

 「どうしたの?」

 「学校行くか」

 学校、といっても、普通の『外』にあるような学校ではない。

 そんな平和なものは、この都市には存在しない。

 そう、平和などないのだ。

 どこだろうと。

 例え、それが。

 家であろうと。

 「ひゃひゃ。よお、あんちゃん。お食事中悪いんやけど、殺しに来たで。」

 殺し合いは、唐突に始まる。

 

 

中二病です。自分で決めたルールをもう破りました。

文章量が少ないのが悩みです。もっと地の文をたくさん書けるようになりたい。

ここまで読んでくださりありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

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