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会議

カイトと話していると、ようやく順番が回ってきた。

「紅月さーん、どうぞー」

呼ばれて立ち上がった。片手に大ぶりの銃を持って待ち構えている副担任、朝倉の元へ。短い黒い髪の、紫のつり目が印象的な女性だ。シャツにネクタイ、タイトスカートと言った出で立ちで手に天秤の様な形が模してある杖を持っている。

「紅月な、はいそんじゃあ始めるぞ」

「はーい」

すると周囲に電気を纏った紫の球が現れる。これと戦わなければならないようだ。朝倉が杖を浮かす。それを見て神田が手を挙げた。

「それではよーい、始めっ!!」

号令と共に球が動いた。ぎゅんっと紫吹目掛けて一直線に駆け抜けて来る。当たれば痛そうだ、と紫吹は走った。

ルールは単純。現れる球を撃ち落とすか避けるかして攻撃者である朝倉を倒す。

簡単なルールではあるが、実際にやるのは難しい。距離にして30m弱、その間に襲い来る球を全て避け辿り着くのは苦しい。よって撃ち落とすしか無くなった。紫吹は走りながら銃を握る。

迫っているのは背後と右側。まずはそこから。がんっがんっと撃ち鳴らす。球は弾丸に撃ち抜かれ四散する。

「遠過ぎだと思うんですよ先生!!」

「おーそう言わずに頑張ってくれ」

悠長に返してくる朝倉に密かに舌打ち、速度を上げる。向かい来る球を撃ち落とし避け朝倉は目前。

銃口を向けた。

「このまま撃ったらアウトっすな」

「そうだな、よしよし測定終了。次!!」

紫吹は銃をしまい人垣を抜けた。待っていたカイトが近寄って来る。

「お帰り紫吹ー、難しかった?」

「うんまあ難しかったかなあ。あんなのまだまだ手加減されてるんだろうなあ当然」

頭をかいて座る。次はカイトの順番待ちになった。まだカイトは銃をがちゃがちゃいじっている。

「それどこで買ってんの」

「ん?あーこれね。私学園の援助生でね、これも必要な分だけ月一で配給してもらってんの」

「へー……」

援助生、それは家庭の事情や成績優秀者などの学校から支援を受けている生徒が対象の制度である。どういった理由かは知らないが、紫吹は軽く聞き流した。

「あ、そろそろだ。行ってくるねー」

「ん、いってら」

カイトが人垣に消えた。何となく立ち上がって見てみると、元気に返事をするカイトの姿が見えた。

そして球が現れる。神田の号令がかかり、球がカイトに向かって一直線に駆け抜ける、と

「え」

カイトが取り出したのは所謂機関銃。がしゃん、と音を立て引き金を引いた。途端に鳴り響く爆音。襲い来る球を全て撃ち抜きその後は間髪入れずに走り朝倉に向かって腰当たりから取り出した小銃を突きつけた。

怒涛の勢いに神田も朝倉も、紫吹も口をぽかんと開け固まった。

カイトが帰ってくると、紫吹を見て首を傾げた。

「どしたの紫吹、変な顔しちゃって」

「や、えーと……すごいねお前」

「え、まじ?いえーすごいって言われちゃったー」

えへへと笑ったカイトに周りからも何人か声がかかる。カイトは驚いていたが、ごく普通に馴染んでいった。


測定が終わり、教室に戻ると、神田が大きな箱を持って入って来ていた。

「えーとこれから配るものがありますので継承者のみなさんこちらまでー」

神田の声に、紫吹や彰介、彪、その他の数人が立ち上がる。神田が箱から出したのは腕時計の様なもの。

「何ですか?これ」

彰介が聞くと、神田がはい、と一人一人手渡した。

「まずは各自席に戻って。えーでは説明ですが、それはあなた達継承者には付けることが義務付けられている物です。名前は簡単にリミッター。それが何なのかと言いますと、能力を持つ子達の暴走を防ぐためにあります」

神田の言葉にそれぞれがリミッターを見た。ノーマルの子達もきょろきょろと見回し始める。

「これは大体の継承者が着けています。みなさんはまだ子供ですのでいつどんな時に何が起こるか分かりません。思わぬタイミングでその力が暴走した時収めるのは難しいでしょう。先生達もずっとみなさんに付いて回るわけには行きませんから、そうした時のための言わば安全装置です」

そう言って神田は来ていた白衣の袖を捲った。そこには紫吹達と同じリミッターがはめられていた。

「あのー、先生このリミッターって風呂の時とか寝る時ってどうすれば良いんですか?」

「あーそれは勿論外して頂いて結構ですよ。義務とは言いますけれどもそこまで強要する事でも無いので」

彰介が聞くと神田が手をひらひらさせながら答えた。

説明が終わると紫吹達はリミッターを着けた。利き腕だと邪魔になるので逆の手に。重さもさほど気にならない程度。そのうち慣れるだろう、と紫吹は軽く手を振った。



職員室。生徒達が帰った後の時間、教師達が集まって話をしていた。

「この通り魔、何者なんですかね」

「さあ、ただ気になるのは"黒龍"と言う単語ですね」

「何が目的なのか……」

皆頭を悩ませていた。近頃よく名前を聞くこの通り魔。その存在は教師達をも混乱させていた。

「取り敢えず生徒達に被害が及ばない様に注意しておく様に、担任の先生方はよろしくお願いします」

そこで会議は終わった。職員室を出ながら神田は考えていた。この通り魔の目的は?正体は?しかし考える材料が不足し過ぎていて全くこれといった答えにたどり着かない。

「月光龍かあ」

「誰なんすかね」

朝倉も隣を歩きながら思案顔。二人揃って頭を捻った。

月光龍、それは様々なところで浸透し始めていた。


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