家
カイトの家から車を走らせようやく自分の家まで着いた。
表札には"紅月"と黒い筆文字で書かれており、家も純和風の大きなもので門を潜って紫吹と雲行は中に入っていった。
「「ただいまー」」
二人が同時に挨拶をすると、奥からぱたぱたと足音がした。小さな子供の影が二人目掛けて、正しくは紫吹目掛けて吹っ飛んできた。
「「おかえりっ!!」」
「おうふっ…ただいまただいま」
引っ付いていた子供を剥がすと、赤い髪と青い髪が目の下で揺れた。笑って紫吹を見上げる子供達は離れて紫吹のバッグを持っていった。
「居間で良いからなー」
「「はーい!!」」
元気な声が家に響いた。制服から着替えて紫吹は居間へ向かった。テレビでアニメが放送されており、そこに数人の子供達が食い入るように見ていた。
紫吹が帰ってきた事に気付くや否やぱっと抱き着いたりする子供もいたりで紫吹は苦笑混じりにはいはい、と受け止めた。
やがてアニメが終わり、夕飯の時間となる。台所に立ち、いろいろ作り始める。
卵を割って入れたり野菜を炒めたり忙しい。
「紫吹ー、手伝おうかー?」
「んー、いいよ叔父ちゃんちび達の相手しててよ」
「はいよー」
ぱぱっと作り手伝いに来た子供達数人と一緒に夕飯を運ぶ。
それから夕飯を食べて風呂に入って眠る。
これが紫吹のいつもである。
紫吹には親がいない。随分と昔、紫吹がまだ小学校にも入っていない頃に亡くなったのだ。
当時紫吹は目の前で親を亡くしたのだが、ショックが大きすぎた為か大半を思い出せないでいある。紫吹を引き取った雲行はその事を思い出すのはもっと後でいい、と紫吹に言い、紫吹もそれに何も言わず過ごして来た。仕事であまりいない雲行に代わって家事をしていたらいつの間にか覚えていたし、雲行が連れてくる子供たちの相手をしていたら懐かれたし特に不自由も無く過ごして来た。
しかしそれでも、時折あの時の事が頭の隅でちらつく事がある。
あの時本当は何があったのか、自分は何を見たのか、覚えている事が少なすぎて何も断定出来ないのがどうしても紫吹に違和感を覚えさせていた。
「紫吹?どしたのぼーっとして」
「え、ああ何でもない。ちょっとぼーっとしてたわ」
ふと考え事に耽っていた紫吹は我に返り夕飯を食べ終わると、子供達の中でもたついている子がいないかを見始めた。
この子供たちもうんが仕事の都合で連れてきた子達である。様々な事情があるらしい。
子供達がようやく食べ終わり、皿を片付ける。ゴム手袋をして、なるべく早く終わらせるように。
洗い終わり手袋を外すと子供達が数人風呂から上がっていていた。
「よーし、私も風呂はいろ」
台所の電気を消した。