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第一章 初めてのダンジョン その5

「俺たちは依頼で街を離れることも多いが、こいつは近場しか回らないから何かあれば頼れ」

換金とその分配が終わるとあっさりと解散となった。

こういうことに慣れているのだろう。スドーンたちは次の予定があるからとそそくさと去っていく。

残ったのはサザキと、泣き止みはしたが目を真っ赤にしたナルだけ。

ナルを放っておくこともできず、スドーンに押し付けられる形になってしまった上に、去り際モモノに彼女をよろしくとお金を渡されてもいた。


うつむいたままのナルを観察する。

ショートカットで元々は活発な少女だったのだろうが、今は目に生気がない。

「まずは荷物の送り方だよね」

「はい」

そのままでは何もできないであろうナルを手引いてギルド窓口へと向かう。

荷物の配送に関しては、良くあることなのかスドーンたちがすでに説明をしているからなのか、後ろに泣き腫らした女の子が居る状況でも咎められることもなく丁寧に対応してくれた。

彼女の村の方へ向かう商隊が明後日街を出るのでそれに渡せば届けてくれるらしい。荷物は当日の朝に直接渡せばいいとのことだ。


「なんか食べに行くか」

ギルドでの用事が終わることには昼になろうとしていた。

ナルへの接し方が分からなかったサザキはこれ幸いと食事に誘うのだが……。


見ていて痛々しいほどのカラ元気だった。食事もその後の買いものも話せば答えてくれるのだが、会話の途切れた時などに表情が曇る。

それでも気丈に振る舞う彼女にどう接していいかわからず、結局サザキは気づかない振りをして過ごすしかないのであった。


「宿はどうするの」

そろそろ日も落ちようという時間になっていた。

一日街を回ってはみたが、結局彼女の表情が晴れることは無かった。

「南通りの宿をPTで使っていたのですけど、私一人になったから今日からはギルドです」

「ああ、同じなんだ」

結局、丸一日費やしてもサザキは彼女への接し方が分からなかった。

それはそうだ。

そもそも十代半ばの少女とのコミュニケーションなど日本でも全力で避ける。

そのうえ戦いで仲間を失った状況など正に異世界の存在だ。

寝床が同じなので分かれてお終いともいかず、逃げ場のなくなったサザキが最後に頼ったのがアルコールの力だった。


魔導ランプに照らされた店内では一日の疲れを洗い流すように各所でエールが飲まれていた。

その中の一組にサザキとナルもいた。

初めは顔をしかめたぬるさも雑味ももう慣れた。真理、酔えればいいのだ。

「ですかぁら、わあひはあんたいひあでう」

最初は無言で食事をしていたナルだが、1杯2杯と進めるにつれぽつぽつと語りだし、今は5杯目を片手にくだを巻いている。

ひたすら絡み酒なのは辟易するが、それでもナルが胸の内に溜めていたものを吐き出してくれたことにほっとして口元が緩くなる。

「ひょっと、ひまのぁわらあとこじゃありひゃせん」

空になった5杯目の杯が持ち主の感情を表すように勢いよく置かれるのであった。


「頭が痛いです」

翌朝のナルの一言目だ。

「あれだけ飲んだからな」

サザキはようやく起きたとベッドから体を起こし、大きく伸びをする。

「昨日の事覚えているか」

「・・・だいたい」

二日酔いで頭が痛いせいか、ほかの理由があるのか仏頂面で答えてくる。

昨日は結局ナルが酔いつぶれたので近くの宿に放り込んだのだ。

ナルだけのつもりだったのだが、最後まで面倒を見ろと宿屋のおばちゃんに二人部屋に押し込まれたのだ。

当然料金は二人分採られたのだがいらない気を効かせて用意されたお湯とタオルは、酔っ払いの後始末という思惑とは違うところでとても役に立ってくれた。

挙句ようやく寝たと思ったら夢現でぐずりだし、仕方なく添い寝して一晩中背中を撫でてやったのであった。


完全に子供の世話をするパパである。こちらの世界では成人が15歳と早く、子供でも一人前に生活しているから大人のイメージを受けていたが所詮は中学生なのだ。

最初から子供をあやすつもりでやればよかったのだと明け方になって気が付くサザキであった。


ナルが起きだしたのはお昼を回ってからだった。

「昨日揃えられなかったものを買いに行きたい」

ナルの希望で、午後は昨日と同じ買い出しとなる。

宿は荷物も多いからとナルが主張し一晩延長することになった。

昨日と違ったことは、昨日はサザキがナルを連れまわしたが、今日はナルがサザキを連れまわしていた。

店を回る間ナルはそれまで話さなかった分を取り返すかのように他愛無い世間話や愚痴をずっと話をし続けていた。

故郷での話から街に出てきて冒険者になった話、クラスアップをしてダンジョンに挑むようになった話。

まるで刻み付けるように、もしくは吐き出すように亡くなったパーティメンバーの事を中心に話していく。


それは宿に戻っても変わらなかったが、話す内容は懺悔に近いものへと変わっていた。

「冒険者なんて嫌だったんだ。土にまみれた生活が嫌で故郷を出てきたのに、街に来ても結局森とかばっかりで。ユルグたちはクラスアップして、強くなるために訓練とかもしてたんだけど私はその間洋服やアクセサリーを見て回ってたのよ。戦いなんてやりたい人に任せればいいって」

ひどい話でしょとナルが笑う。

「けど、罰が当たったのよ。熊に襲われた時ユルグたちはきちんと対応を取れていたの。わたしだけ突進してきた熊を避けることも防ぐことも出来ずに吹き飛ばされた。わたしが居なかったら助かったかもしれないのにね」

何も言えないサザキにもう寝よっかと笑って、ナルは当然のように同じベッドに潜り込んできた。


何か言おうと潜り込んできたナルを見ると見上げるような姿勢のナルと視線が合い、ニッと悪戯を成功させたような笑みを浮かべて抱きついてきた。

しかし、その行動とは裏腹に体は強張っており震えがサザキにまで伝わってくる。

文句も言えずに仕方なく昨日と同じように背中を撫でてやるのであった。


サザキは無言でナルの背中を撫で続けていた。

ようやく震えが収まり体も弛緩したと思ったらナルが一際強く抱きしめてきた。

ナルは抱き着いたまま体をひねり馬乗りになると、そのまま勢いに任せて唇を押し付けてくる。

キスをする前、互いの息がかかる距離で一呼吸分だけ躊躇があった。

その時見詰め合ったナルの瞳には女の色が浮かんでいた。


ナルから勢いに任せてされた幼いキスを、そのまま口を割り舌をすべり込ませて中から蹂躙する。

差し込まれた舌をからめ返すのに必死になっているところに体勢を入れ替えナルに馬乗りになる。

片手は尻をもみしだきながらもう一方で体が跳ねるのに合わせて服をはだけさせていく。

ナルを押さえつけながら露わになった素肌を口から喉、胸へと舌が蹂躙していく一方で、尻をもみしだいていた手を足の間へと進める。


ナルは息を荒げ幼く翻弄されながらも、もっと熱を求めるように必死に抱きついてきた。ナルが俺を包み込むように抱き締めているのか、俺が抱きつくナルをあやしているのか、互いにもっと深い部分に触れられるように、もっと熱が伝わるようにと体が絡まり溶け合っていく。


こちらに来てからご無沙汰だったこともあり獣のように求めた。

けれど、ナルの視線はサザキをすり抜け別の誰かを見るようで最後まで夢でも見ているかのように現実感を持てなかった。


翌朝、荷物を送るため朝一番にチェックアウトを済ませ町の入口に集まる商隊の元を訪れた。

「ここまででいいです」

先を進んでいたナルがくるりと振り返る。

「そうか」

予想はついていた。

「げんきでな」

「はい、お世話になりました。スドーンさんたちにもよろしく伝えておいてください」

頭を下げた彼女の表情は自分の意思を持った大人のものであった。

そして振り返ることなく商隊へと去って行った。


少女から大人の女性へ、それを成したのが自分だと自惚れる気は無い。

彼女は冒険者や自分の事は悪く言っても仲間の事は一度も悪く言わなかった。

俺は誰の身代わりだったのだろうか。

「ま、気持ちよかったからいいのだけど」

負け惜しみは朝の清涼な空気に掻き消されていった。

この話にて第一章終了です。

第二章からは仲間集めとチートの開花?予定。

よろしくお願いします。

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