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どっきり大成功!

 ドアを開けた瞬間、廊下の明るさとは打って変わって暗闇が星野の視界を支配した。


なぜ、暗い?


考える暇もなく鳴り響く、何かが弾けたような音、音、音。


声を出す間もなく聞こえてくる、誰かが奏でだした歌声。


それから、鼻をくすぐる煙と甘いケーキの匂い。


 星野は、きょとんとして立ち尽くす。吉田が電気を付けた瞬間、


「ほっしー、誕生日おめでとう!!!!」


教室内の装飾に気づく。


「そうか、今日誕生日だっけ」


驚きのあまり声がかすれる。

それでも、クラス全員がいることを確認して笑みが漏れる。


「これ、みんなから手紙のプレゼント!」


「ありがとう…これ、牛崎先生の字だ」


その一言でクラスの男子は駆け寄ってくる。


「牛崎先生がほっしーに手紙!?」

「ラブレター!?」

「俺らのほっしーが取られる!」


「いやいや、ないから」と否定しつつも、やはり美人な女性からの手紙に興奮しないわけがない。



『ローマは一日にして為らず。』



紙を開くと、これだけが書いてあった。


 前に、「給料日前で最近塩ご飯しか食べてないです」とふざけてこぼしたら、次の日に真っ黒な卵焼きと何かの虫のような形のウインナーをくれたことがあった。

多分料理したことないのに、一生懸命作ってくれたんだなぁと思いあごが痛くなるほど噛んだっけ、ふと思い出し微笑む星野。


最近綺麗な色の卵焼きを食べている彼女を思い出して、互いに切磋琢磨していこうと思った。



「この折り紙のわっかの装飾はいつ作ったの?」


一通りみんなからの手紙を読んで、あまりの褒め言葉の多さに赤面しながら聞く。


「数学の確率の問題で折り紙使ったから」


「へ?」


「その手紙も牛崎先生の授業の時書いたし」


「えぇえ?」


「ケーキすぐ食べろって金沢っちに言われたけど、みんなで頼みこんだし」

「ほっしーのサプライズさせて〜ってな」


笑いながら各々ここまでの経緯を説明してくれる。


「普通オッケーしないよな」

「マジ俺達の熱意ぱねぇわ」


そんなに苦労してまで、サプライズしてくれたのかと気づきまた目頭が熱くなる。そして高橋の何気ない一言。


「ほっしーみんなから好かれてるから」


星野は自分が好かれてもいい存在なのか、と悩みながらいつしか頬が熱くなっていたことに気づく。それは、涙で濡れていたからだった。


「高橋がほっしー泣かせた!」

「高橋ぃいい!」


「うわーほっしー」


「おいおい高橋も泣いたよ!ぶっせぇ」

「吉田も目が潤んでっぞ」


親から愛されなかったけれど、こんなにも素敵な子達に愛されている。星野は、幸せなのに泣いている自分が不思議で笑っていた。

 その後全員でケーキを食べながら記念写真を撮って、リスニング用のラジカセでバースデーソングを流した。

それから、毎年星野の誕生日サプライズは恒例になったとか…?

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