エタの依頼 1
ここはエデン最上階。エデンは大陸の中央に立つ巨大な塔だ。その中で人間、電脳人、天使が仲良く共存している。十一階層に分かれており、ここは十一階層目。十階層以下に住んでいる者は絶対に訪れることはない。そういう場所だ。ちなみに、十階層までなら自由に行き来できる。上の階程偉いわけではない。
最上階、神の住まう場所。神は何かの例えではなく本当の神だ。そういう場所だけあって普通とは様式がかなり異なる。とはいえ説明は簡単だ。ただ白い空間が広がっているだけ。他には何もない。今はその中空を歩いているわけだが、足に床らしき手応えを感じる。透明の床か、同調色か。一応、いろいろと強化されているのでその程度のことはわかるはずだが、結果はこの様だ。まったくわからん。ここまで白いとさすがの俺も病みそうだ。隣を歩くリオはそうでもなさそうだが。意外に肝が据わっている。道案内役は天使のロロ。見た目は俺と同い歳ぐらいだ。そして、やっと白以外の物が見えた。王座に座る8歳前後の少女、絶対女王エタ。通り名は有名だが、姿は伏せられている。こういう立場なら象徴、偶像として出て来てもおかしくないが、理由はこういうことらしい。と、いうか俺もびっくりだ。さすがに見た目と年齢は違うだろうが。
リオ「やっほー、エタっち。来てやったわよ」
エタ「ご苦労。本題に入る前に余興といこうか」
貫禄はさすがだが、やはり見た目はかわいい8歳の少女だ。ギャップがすごい。
ロロ「私の出番ね。もう、仕方ないな」
ロロが振り向き様に手刀を放つ。狙いは俺の首。かなりの速さだったが、後ろに下がり間一髪でかわす。
首にかすり傷が残っている。あの速さなら文字通り間一髪だ。
ロロ「へー、かわせるんだ」
優「引き篭もる程訓練したからな。今考えたら、引き篭もりというより修行だったな」
エタ「それはちょうどいい。ロロはトップクラスだ。物差しとしては十分だろ」
ロロ「正直、私の方が強いから。死なないように頑張ることだね」
優「まあ、単純にここで死ぬのは嫌だからな」
そう言い終わるや否や、ロロの手刀が再び放たれる。今度は突き。狙いは顔だったので首を傾げてかわす。もう次ぎの攻撃、膝蹴りが来ている。それを手で受け止める。ロロは翼で急上昇。その勢いと意外性に負け、呆気なく手が離れる。場所は空中、体勢は仰向け、真上にロロ。成す術もなくそのままロロに胸を踏みつけられ、地面に張り付け状態になる。所要時間約5秒。秒殺だ。
ロロ「全然ダメじゃん」
優「みたいだな」
エタ「そんなおまえに神の力をやろう。具体的に言うなら、私と同じゼウスの聖痕だ」
優「サービス満点だな」
エタ「答えは是か否でよい」
優「じゃあ、是で」
エタ「よかろう。手順は、私の依頼を十二回受ければいい。場所は全てこのエデン。簡単だろ?」
優「いいのか?」
リオ「お好きにどうぞ」
優「じゃあ、よろしく頼む」
ロロ「エタの為に精々頑張ってね、人間」
優「足どけてくれたらな」
ロロ「おっと、失礼」
エタ「では、さっそく一つ目といこうか」