復活
街の中央に建つ塔、アカシャ内。内装は『白夢』。白い空間が広がり、中空に複数のディスプレイが浮かんでいる。他は何もない。私が声を出して指示をすれば、電脳粒子や電子公告を通じて暗示が掛けられる。暗示を掛ける巨大な電脳能力装置ということらしい。洗脳とかそいう類ではなく、悪まで助言程度のものだ。
ネクラ「ふっかーつ」
飛鳥「さすがに丸一日持つとは思いませんでした」
ネクラ「何っ、私の絶対不可視が」
飛鳥「私には封印がありますから。見えてないと思っていたようですが、ずっと見えていましたよ。普通に」
ネクラ「普通にかよ。というより、そこじゃない」
飛鳥「残念ながら蘇芳から事前に聞かされていました。その時は驚いたけどね。どちらかというと、あなたの捻くれ具合に」
ネクラ「そこかい」
飛鳥「むしろそこ以外ないでしょ。すぐに言いなさい」
ネクラ「自分でもびっくりだったからね。反射的に能力を使ったけど、不可視になるのだから当然効かないわけだ。そして気付いたわ、このまま黙っていた方が面白い事に」
飛鳥「やっぱり捻くれていますね。結果は目に見えていますが」
ネクラ「うん、寂しかった。死ぬのは恐いね。ダン爺には素直に冥福を祈ろう」
ダン「勝手に殺すな」
と、一応一緒に隠れさせられていたダンが口を開く。ネクラ一人ならともかく、ダンも一緒の状態で丸一日放ったらかしていた私もそれなりに捻くれているようだ。
ダン「何気に盾にされたが、そのお陰で助かったのは皮肉だな」
ネクラ「感謝しろよ」
ダン「明らかに囮にされていたが、今となっては素直に感謝しておこう」
飛鳥「それはさすがに素直過ぎる気がします」
ネクラ「そういうのを馬鹿って言うらしいぞ」
ダン「まだまだ甘いな。人間幅の広さが大事だ。時には、というやつだよ」
飛鳥「その幅の広さ故に死ぬこともありますが」
ダン「やっぱり気になるか」
飛鳥「普通の器量ならあのままずっと疎遠になって無駄に死ぬこともなかった。正直、あの三人がいなくても成立する作戦でしたから」
ネクラ「ダンはどの道囮役だけどね」
ダン「年寄りは労れよ。それ以前に、普通に労ってほしいが。ギャグで死んだらシャレにならないからな」
ネクラ「しぶとい爺さんなことで」
ダン「それは置いておくとして、あいつらだって自分で決めたんだ無駄死には言い過ぎだと思うぞ。他人の気持ちはわからない、という程突き放す必要はないが勝手に解釈するのはよくないな。俺達がすべきはその結果どうするかだろ?」
飛鳥「優みたいなこと言いますね」
ダン「それはお褒めに預かり光栄だ」
飛鳥「結局、私が弱いということですね」
ダン「それも立派な強さだよ。漫画とかでも主人公は大抵そうだろう?」
ネクラ「そうそう、ジジィのは誤魔化してるだけだって」
ダン「そうだな、この歳で情けないとは思う」
ネクラ「ちっ、無駄に達観しやがって」
ダン「諦めてるだけだけどな。飛鳥はどうする?」
飛鳥「主人公に昇格するのも悪くないですね」
ネクラ「あの三人の為にもか?」
飛鳥「私はそこまで優しくないですよ。だしにさせてもらっただけです」
ダン「おまえは敢えて普通の方でいいんじゃないか?そっち側は優辺りにでも任せておいて」
飛鳥「ちょうど近くにも居ることだし、それもいいかもしれません」
ダン「ああ、確かに」
ネクラ「私か?私のことか?」




