序章 9
リビングダイニングにて。今こうして呑気にテーブルに着けているので、居着いても問題はなかったようだ。横のリビングでは桜花と勉、剛によるSMが繰り広げられている。テーブルの席順は俺とアルル、向かいに桃花と蓮華だ。
優「フレンドリーだな」
アルル「私達がちゃっかりいることも然り、何だかんだで一家団欒だしね」
優「結構冷めているらしいからな」
アルル「だいたい一人一人が違う作業してるからね」
優「忙しいことだ。俺は作業で一日丸潰れはごめんだな。ゆとりがないと」
桃花「暇過ぎてもこうなるけどな」
蓮華「まったくだ。暇過ぎて足にナイフ刺しちまった」
そして横のリビングでは変な喘ぎ声が聞こえる。
優「止血しなくていいのか?」
蓮華「これはワイの生きた証や」
アルル「台詞はかっこいい」
優「そうなると、やっぱり人殺しにはデメリットがあるな」
桃花「ほう、一応聞いてやろう」
優「単純に可能性が減る、ということだ。殺した奴がいい暇潰しを創るかもしれないだろ?」
桃花「気長なことだな」
優「将来性と言ってほしいな」
桃花「今が悲惨で将来もクソもねぇよ」
優「まあ、暇過ぎると精神が壊れるらしいからな。少し貶すような言い方をしたが、もはやその作業も生命線なのだろう」
桃花「じゃあ駄目じゃねぇか」
蓮華「そうだ、そうだ。寝ずに一日何もしなかったらやばいんだぞ。と、いうことで二本目」
優「失血多量になるぞ」
蓮華「これがワイの生き様や」
アルル「どちらかというと、死に向かっているけどね」
ちなみに、横は十八禁になっているので表現は控えておこう。
優「じゃあ、一緒に来るか?」
アルル「なんかもう安売りになってる」
優「俺はフレンドリーだからな」
桃花「そこまで言うなら何かアテでもあるのか?」
優「そうだな、例えばこれならどうだ?」
電脳印からレーザー銃を精製する。まあ、今はこれしか精製できないんだが。
それをこめかみに突き付け、そのまま撃つ。
威力は中々のものらしく、頭が簡単に吹き飛んだ。
ちなみに、仮想世界ならここで死んだことになって透明化するかそのまま頭を再生するか選べたが、蘇芳の言った通り後者しか選択肢はないようだ。イメージとしては、この状態でもまだ死んでいないということになるのか。選択肢と言っても勝手に再生するのだが。
吹き飛んだ頭は瞬時に再生される。ちなみに、そもそも血なんて通っていないし果ては内蔵もなかったりするので特にえげつない物は飛び散っていない。
優「すげぇだろ。ちなみに、手品じゃないぞ。まあ、精神的なこともあるからお勧めはしないが、こういう世界もまだまだあるということだ。俺もこの世界に来て間もないからな。知らないことは山ほどある。もっと面白いことが見つかるかもな」
桃花「そうやって強制的に感化されるっていう感動的な話だろ?確かに、涙はでるな」
優「それはおまえ次第だろ」
桃花「はっ、いいだろ。そこまで言うなら乗ってやる」
蓮華「姉者、マジか。それなら私も行くしかないな」
アルル「おー、一気に大所帯だね」
ナビ『対象三名のロックを完了しました』
と、機械音が鳴り響く。
音源はリビングの方だったのでそちらに振り向く。
そこにいるはずの三人の姿はない。衣類、ムチなどの所持品も含めて消えている。まるで初めからいなかったように。
そして縁側の窓ガラスを割って入って来たのは、電脳の翼を生やした飛鳥だ。
飛鳥は入って来る早々、迷わず桃花と蓮華に視線を向ける。
ナビ『対象二名のロックを完了しました』
そう告げられて間もなく、桃花と蓮華は電脳粒子の残滓を残して所持品ごと消滅させられた。
優「おいおい、冗談じゃねぇぞ」
飛鳥「不満があるなら相手になりましょう。そのぐらいの罪悪感はあります」
優「いや、それはいいけど」
飛鳥「……」
アルル「優しさは愛。つまりこの優しさは愛があるからこそ。そろそろ、その愛に応えてもいいと思うわけですよ、私は」
優「そうだぞ、素直が一番って言っただろ。それに、今回はやり過ぎだ」
アルル「お尻ペンペンだね」
優「お、今回はお色気押しだな」
アルル「あの十八禁、お色気だったんだ」
飛鳥「……帰ります」
優「まあ、一応正当な理由はある。殺してやった方が幸せ、とも言うだろ?ただ、折角いい返事もらえたしそれまでは待ってほしかったけどな」
飛鳥「それはありませんよ」
優「即答だな」
飛鳥「わかりきったことです」




