序章 5
その辺の道路。仮想世界でのお決まりパターンはここでも健在らしい。少し先で喧騒が聞こえ、人がものすごい勢いでこちらにすれ違って行く。しかし、いつもと違うところもある。
喧騒の他に熱狂の声が聞こえる。雰囲気からすると、あまりよろしくない方の。この状況で熱狂している時点で、ではあるが。
優「あれが噂の『無神教』か。生で見たのは初めてだな」
さらに噂では、もう公認されているとかなんとか。わかりやすく言うと先の出来事のようなことになる。
それ以前に止められる奴がいるかどうかが疑問だが。なぜなら、『無神教』とは組織名ではなく凪のことを指すからだ。この世界での実力はまだわからないが、弱い凪というのも想像できない。現に、大量虐殺できる実力はあるわけだし。
ちなみに、『無神教』のコンセプトは、神すらいない無の世界。この世界でも滅亡ネタはそれなりに受注があるようだ。
凪の性格からして、仮想世界の時より派手にやっているようだが群衆を囃し立てるようなことはしないだろう。思い当たる節は蘇芳かアカシャ。本当に公認らしい。
凪「また新しい女連れ歩いているのね」
『無神教』の教徒兼ギャラリーは綺麗に両脇に分かれているので、凪へと続く道には散乱した死体しかない。神聖化というよりは気安く近付けないだけか。結果はそうなっているのだろうが。
優「俺のモットーはフレンドリーだからな」
アルル「そうなんだ」
凪の武装は左右に刀とレーザー銃。凪は右手のレーザー銃を熱狂しているギャラリーの一人に撃ちこむ。
撃たれた者は即死。が、むしろ熱狂は激しさを増す。
凪「どう?」
優「喜んでいるし、いいんじゃないか」
アルル「そうなんだ」
優「もちろん俺は御免だけどな。まあ、若気の至り、という言葉もあるし人それぞれ、という言葉もある。こうやって言い換えていけば善悪なんて、だな。要は自分で決めろということだ。いや、自由だな。人間そろそろそこまでいってもいい頃合いだ。もはや善悪は過去の遺物だな」
アルル「なんか蘇芳風だね」
優「じゃあ、優男的なのを付け加えると、そこに愛と平和があれば混沌にはならないかもな。どんな奴でも愛し、共生できる心の広さが大切だ。心の広さか、単純な言葉だが深いな」
凪「それだけの度量がこいつらにあるとは思えないけどね。仮にあったらやめてもいいわよ」
優「まあ、努力はするよ。何か託されたし」
アルル「結構やる気なかったんだ」
優「どちらかというと、凪寄りだからな。だが、今決めた。そろそろ一皮剥けさせてもらうか。そしたら凪クラスにも勝てるかもな」
凪「そっちの方が格上ってことかしら?」
優「そういうことになるな」
凪「このまま殺されれば、とんだ捨てキャラね」
優「じゃあ、一緒に来るか?」
凪「遠慮しておくわ」
凪は話を切り上げ、一飛びで後ろのビルの屋上まで飛びそのまま去って行った。戦闘力はこの世界でも健在なようだ。
ちなみに、会話中も騒いでいたのでギャラリーは今の話を聞いてはいないだろう。
桃花「なんじゃこりゃ」
優「とち狂った殺人鬼とでも思ったか?おまえ然り、もうそういうのも古いのかもな。良し悪しは置いておくとして、今の時代一つのことに没頭できる人間は珍しいって話だからな」
アルル「多面性万歳」
優「単純に数として、一つだけじゃつまらないからな」




