序章 3
とある空き倉庫。その屋根を突き破り、少女二人が降り立つ。ちなみに、ここでもすべての建物が電脳粒子製なので壊された屋根はすぐに再生される。
倉庫には冷気が流れている。つまり冷蔵庫だ。保存されているのは人肉。ベタベタに吊るされていたり、アート風に積まれていたりとそこに罪悪感はまったくない。
シノ「終わりだ。派手にやり過ぎたな」
着地早々、目の前の男にそう言われる。見た目二十代前半ぐらい、服は警察の制服だ。役職にふさわしく、短髪のTHE正義漢。周りを見回すとすでに囲まれている。しかも、臨戦態勢。銃口がためらいなくこちらに向けられている。結構長く使っていた拠点なので、当然の結果といえばだ。とりあえず、人質は横に投げ捨てる。
と、屋上が再び破られ先の呑気な3人組が降ってきた。
ダン「ああ、そういえば対象になってないな。そういうことだから、ぜひ撤収してほしいんだが」
シノ「そういうわけにはいかないだろ」
ダン「まあ、おまえはそれでいいとしよう。しかし、連れの方はどうする気だ?少なくとも今は退くべきだろ。それともそこまで落ちぶれたか?そうだとしたらとんだ迷惑だな。お仲間はもちろん、こっちにもな」
シノ「……」
ダン「今のおまえじゃ無理だよ。それはおまえもよくわかっているだろ?」
シノ「……」
ダン「選択肢は一つだよ」
シノ「くっそ」
シノは感情を剥き出しにそのまま踵を返す。子供っぽいというよりは、抑えきれないのだろう。他の者もそれに続き、律儀に出口からぞろぞろと出て行く。
ダン「あいつらちゃっかり被害者のこと忘れてるよ」
ネクラ「根暗ですみません、根暗ですみません。私の名前、ネクラですよ。絶対親の嫌がらせですよね。でも、その通りだからいいんですけどね。こんな私にも役割はあるんですよ。今日も不良さん達を喜ばせてきました」
ダン「でも死ぬのは嫌だったから隠れていたわけか。それに、それだけしゃべれたら十分だと思うぞ」
飛鳥「もう行きますよ」
ダン「忙しいな、年寄りと被害者をもっと労ってくれよ」
ネクラ「すみません、お姉様すみません」
ダン「だってさ、お姉様」
優「そうだぞ、これでいいのか?今からでもいいんだぞ。正直、超暇だからな。なんなら、ダンもネクラもいっとくか」
飛鳥「ここぞとばかりに乗らないでください」
ダン「優には愛想いいな」
飛鳥「なぜ知っているのですか?」
ダン「おしゃべりが一人いるだろ?」
優「蘇芳だな」
飛鳥「とにかく、私はもう決めました。誤解を解くなら、正義の味方ではなく調停者とでも言っておきましょうか。今の私に死人の数は関係ありません。世界の為なら小の為に大を捨てましょう」
優「最後のはどっかの正義の味方みたいな台詞だな」
飛鳥「ああ言えばこう言いますね」
優「悪っぽく言ったところで善悪なんてそんなもの、ってことだ。まあ、やりたいことと言えばやりたいことなんだろうから止めはしないけどな」
飛鳥「そうしてください」
ダン「お、若干照れてるな。自分の選択が認められて嬉しい、というところか」
飛鳥「そろそろ本気で殴りますよ」
ダン「そうか、おまえは本当に本気だからな」




