「蛇」 6
4車線道路に肉が散乱している。人気はもうない。そして、その渦中にいるのはティアだ。
優「ここまできたらもはやネタだな。回数的な方で」
ヨナ「今回は大規模にいくらしいぞ」
と、後ろからヨナが声を掛けてきた。
優「こっちとしては一緒だけどな」
ヨナ「ついでに、ここで『蛇』全員を殺さないと木以外消滅するらしい。ああ、月羽はもう違うから除外な」
優「なんとかできないのか?創世者」
アルル「装置壊されたし、そもそも飾りだからね」
優「どこまでいってもそれだな、この世界は。まあ、当然といえば当然だが。母ちゃんならどうよ?」
月羽「今も昔も、私は姉さんの背中を眺めるだけよ」
優「せめて追ってくれ」
ヨナ「はは、息子に突っ込まれたな」
月羽「情けないことは自覚しているわ」
優「ならいいんじゃないか。じゃ、そろそろ相手してやるか」
アルル「がんばってね」
ヨナ「俺は複雑なところだが、任せることにするかな」
月羽「私は、正直やる気ない」
優「えー、まとめると、俺一人かよ」
アルル「行ってこーい」
優「やばくなったら助けろよ」
銃を錬成し、ティナに歩み寄る。
ティナ「妹じゃなくて姉だ」
優「ああ、そうなんだ」
ティナは一瞬で間合いを詰め、刀で銃を持っている方の腕を切り落とす。
優「うぉ、銃全然駄目だな」
霊子体なので腕はすぐに再生する。が、維持力はそれなりに減った。維持力とは文字どおり維持する力。そして何を維持するのかというと、存在だ。粒子だけでは何もない状態。結合させ、維持して形となる。そういう感じだ。再生にしか使わないが、再生すれば減る。ゲームで言うならHPみたいなもの。それがなくなれば霊子体といえどお陀仏だ。個人差は殆どない。耐久度は致命傷十発前後といったところか。ちなみに、今の攻撃は0.5ぐらいだ。
追撃で片足を斬られる。中途半端ではなく、すっぱり。切れ味は抜群なようだ。
後ろを確認してみる。暗に助けを求めたのだが、望み薄そうだ。
優「おいおい、ギャグで死にたくねぇぞ」
手榴弾を錬成し至近距離で爆破。威力は5人は軽く粉微塵にできる程だ。ちなみに、この攻撃は1。質ではなく、悪まで回数だ。
俺もティナも粒子状態となり、別の場所で再生する。どういう仕組かというと、維持力の塊の状態で足を使って移動しているだけだ。透明人間みたいなものか。
よって、ぴったりくっつこうと思えば余裕だ。残念ながら、相手の方が速い。
が、なんとか離れてくれたようだ。とりあえず、一端仕切り直しだ。
が、そこで毎度おなじみ次元の穴が2つ開く。
蘇芳「よう、おいしいところ取りにきたぞ。俺じゃないけどな」
優「じゃあそっちの飛鳥の方か。何気に一年ぶりだな」
飛鳥「そうですね。あなたが薄情なのはわかりました」
目が紅くなっている以外は普通だ。雰囲気は明らかに変わっているが。
蘇芳「もはやおまえより強いんだぜ。見せてやれよ、大好きな優君に」
飛鳥「言葉には気をつけてください。私が力をくれたからといって恩を感じるように見えますか?」
蘇芳「それは大丈夫だ。俺も恩を売る気はない。後は好きにすればいいさ。できたらだけどな」
飛鳥「そこは自己責任だから恨みませんよ」
蘇芳「そこまで精神が出来上がっているならそれでいい。俺は長生きしたいから高みの見物といこう。そういうことで、俺は除外だ。まあ、どうしてもというなら相手してもいいけどな」
優「俺は遠慮しとく」
蘇芳「おまえには期待しているんだ。しっかり頼むぜ、主人公」
と、言い残して蘇芳は次元の穴へと消えていった。
優「スケットってことでいいのか?」
飛鳥「いえ、引っ込んでいてください」
優「霊子体だから被弾も大丈夫だろ」
飛鳥「私の仕事です」
優「そうか、そこまで言うなら見せてもらうか」
飛鳥は剣を錬成し、さらに背中から天使の翼を出現させる。が、その翼は本来のものではなく半透明というか実態がないというか。例の薄緑のやつだ。まるでポリゴンで描かれているようで、生物的な躍動感は感じられない。
ティア「ふむ、弟よりは楽しめそう」
優「その設定、押すんだな」
と、言っている内に飛鳥はすでに攻撃を始めていた。
格ゲーの如く途切れのない剣による斬撃。
一度別の場所に再生しても、飛鳥は食らいついていく。
時間は一分も経っていないだろう。ティアは文字通り為す術もなく消滅した。
蘇芳「対霊子体を意識してみた。現実の方でも主流になるからな。いやー、さすが俺。ばっちりだな」
優「帰れよ」
蘇芳「説明しに来てやったんだろ。まあ、9割おちょくりにだけどな」
優「だろうな」
今度こそ蘇芳は帰って行った、はずだ。いや、高みの見物だからいるのか。今回は手を出す気がないようなので、そこはそっとしておくことにしよう。
ヨナ「じゃあ次は俺だな」
飛鳥「私はその人には手を出しません」
優「ああ、そういう基準か。ならいっそ、親子対決にでもするか」
その時、ヨナの近くで次元の穴が開く。そしてヨナが吹き飛んだ。
ヨナは次元の穴から距離を取り、再生する。
ヨナ「危ないな。一応仲間だろ?」
凪「思ってもいないことを言わなくてもいいわよ」
ヨナ「相変わらずぶっ飛んでんな。昔から」
凪「相変わらず普通ね。昔から。二人共。虫唾が走るわ」
ヨナ「えらい言われようだな」
月羽「そうね。そろそろ私も決めるわ」
ヨナ「さすが、げっちゃん。というか、普通に凪とは違う生き方だよな。凪は結婚しないだろうし。人を殺してもいなければ、憎んでもいないんだろ?」
月羽「そんなにいいものでもないけどね」
ヨナ「おいおい、そこで優にもその部分が遺伝したとか言いたかったのに」
月羽「事実だからね。でも、今は誇れると思う」
ヨナ「言い切らないな。まあ、その方がおまえらしい。そして、そんなところが好きだ」
月羽「ありがとう」
凪「確かに、身の丈ではあるわね」
凪が戦闘に移る。
結果は先と同じだ。
凪「敢えて否定しないとしても足りないのよ。それだけではね」
蘇芳「結局、聖痕は使わずじまいか。せっかく用意したのに。ちなみに、天使の力が使えるという効果だったんだがな」
優「ああ、手刀で人殺してたもんな」
ちなみに、先も凪がそれで暴れていた。
蘇芳「現実では天使はいないからな。いや、今創ったんだった。それでもここ限定だけどな」
優「いわゆるボツネタか」
蘇芳「ま、成功するのが目的じゃないからな。そういう時もあるさ」
と、また律儀に次元の穴へと戻って行く。
優「もうずっと居ればいいのにな」
アルル「そうだね」
優「そういえば、おまえ天使だから最終的には一緒に消えるってオチか?」
アルル「知らなーい」
蘇芳「天使ではなくなるが、消えることはない。中々融通が利くだろう?」
アルル「おう、それはよかった」
優「珍しく本当に融通が利いてるな。そして、もう突っ込まん」
蘇芳「じゃあ俺は懲りずに戻るか」
優「本当、懲りないな」
リオ「この世界の命運が懸かっているのに呑気なものだな」
向こう側からリオがやって来る。
優「カシやんファミリーもちゃっかり死んだか。確かに、これで最終決戦ってことになるのか」
アルル「仕方ない。私もいこう」
優「いけるのか?」
アルル「知らなーい」
優「マジでか」
リオ「とりあえず、おまえらはどいてろ」
凪「あらあら、そういう展開?」
リオ「いっちょまえに感化されたようでな」
凪「まったく、どいつもこいつも。それで、そっちの二人はどうするの?」
蘇芳「やめとけ、やめとけ。現実世界までは俺が囲ってやるからよ」
優「結局、やられっぱなしか」
蘇芳「ここで死んだらな。で、そっちはどうする?一応、あいつも対象だろ?」
飛鳥「やめておきます」
蘇芳「おまえも立派にこっち側ということか。よかったな同じ舞台に立てて」
飛鳥「……」
蘇芳「ちなみに、システムは対象として処理するだろうな。ここでは効果が薄いし、まだ馴染んでいないのもある」
飛鳥「わかっています。今となってはあなたよりね」




