回想:連
七年前。十一歳ぐらいの話。相変わらずというか、ここで生まれたようなものだがその時からずっとここは世界から切り離されている。さすがにそうではないだろうが、僕にとっては元々そういう場所ということになる。
電脳人領地内、丘の上の教会。その講堂兼居住区。
エレクレイン「明日からエデン入りなのに那綱は相変わらずね」
今那綱は教会に続く道で暴れているところだ。カインはそれを止めに行っている。相手はまあ、そういう輩だ。もはや因果関係というべきか。意地でも相容れないようだ。
連「正直自信ないけどね」
エレクレイン「ま、那綱は確実に駄目でしょう」
連「期待されても……」
エレクレイン「このまま放っておくつもり?」
連「……」
エレクレイン「かわいそうに」
連「このままここに居れば―」
と、言い切る前にグーで殴られた。とはいえ、続く言葉もなかったが。
エレクレイン「かわいそう、はさすがにないということよ。違う理由だと思ったでしょ?」
連「……」
エレクレイン「問題は境遇じゃなくて、それを受け入れられない世界の方ね。今は残念ながら一つの世界しかないから。つまるところ、それ以外を適当にかわいそうということにして拒絶しているだけよ」
連「今日は辛口だな」
エレクレイン「まあ、本音ね。薄汚い糞みたいな世界と思っているわ」
連「それはすごい本音だ」
エレクレイン「とはいえ逆も然り。つまり、今必要なのは愛ということね」
連「平和は、まあ、平和か」
エレクレイン「それは楽観的過ぎるけど、今はまだいいんじゃない」
連「それ以前に、僕も那綱と似たようなものだけどね」
エレクレイン「それは関係ないわ。極論を言えば皆同じ人間、何者にでもなれる。例えば、そんな大仰なことじゃなくても那綱が一般人になったりね。もちろん大仰なことも言える。連が愛と平和の使者、愛戦士になったりね」
連「その単語だと全然大仰に聞こえない」
エレクレイン「真面目な話よ、本当に。みんな自分の事だけで精一杯だからね」
連「柄じゃないよ」
エレクレイン「私の方が?そうでもないわ。むしろ、私は不向きね。一人のカリスマより、協調性があった方がいいみたい。さすがに一人で世界を創るわけにもいかないし、そういう意味でもそっちの方がいいでしょう?」
連「個性が薄いだけじゃ……」
エレクレイン「有り体に言えば、それが個性ということね。一般人なら常用しているみたいに見えるけど、あれはただの保身。もっと誇ってもいいと思うわ」
連「そもそも、そんなキャラじゃないと思うけど」
エレクレイン「じゃ、目指すも良しということで」
連「適当だな」
エレクレイン「頑張れ思春期」
連「まあ、とりあえずは那綱の為に」
エレクレイン「さすがシスコン」
連「それはどうも」




