回想:シオン
過去、そっち系の話によくある糞みたいな施設。そこも今は壊滅状態、そこら中に死体が散乱している。
蘇芳「ウロボロスの調子も良さそうだな、師匠」
シオン「それより何か面白いことはないんですか?」
蘇芳「あったらいいけどな」
シオン「くだらない、帰ります」
蘇芳「ちょい待ち、あったわ面白いこと」
シオン「一応、聞いてあげましょう」
蘇芳「もう1グループいるだろ、そいつが中々面白そうだ。帰る前に会うことをお勧めする」
シオン「三下の相手ですか」
蘇芳「とはいえ、俺の相手をしてもつまらないんだろ?変り種だし試してみたらどうだ?」
シオン「そうですね」
蘇芳「さすが師匠、柔軟性がいいな。ちなみに、俺は遠慮するけど。結果だけ楽しみにしてるかな」
シオン「あなたはそうでしょうね」
蘇芳「じゃ、期待してるぜ、師匠。気が向いたら協力ぐらいはするかもな」
蘇芳が去って行く。それと入れ替わるように、反対側から二つの人影が現われる。
天丈「愛と平和は俺達が護る」
ロッテ「天ちゃん、ここも駄目みたいよ」
天丈「マジでか、さすがにいい歳だし恥ずかしいな」
確かに、二人共見た目三十前後のいい大人だ。ちなみに、言葉遣い通り天丈が男でロッテが女。(名前はもう利便上知っていることにしよう)。特に普通なのはそういう部分だけのようだ。こういう変り種はいらないので、そのまま踵を返す。
天丈「あー、待て待て。話は聞いていた。とりあえず、一緒にどうだ?何、手伝う必要はない。邪魔はさすがに駄目だけどな」
ロッテ「私はこっちの方が合ってると思うけどな。少なくとも『蛇』よりはね」
シオン「それではただのクズですね。クズに付き合う程、暇はしていません。もっと具体的に三下なりの意志を示してほしいものです」
天丈「なるほど、ごもっともな意見だ」
ロッテ「それなら冒頭に言ったじゃない。愛と平和よ」
シオン「それはくだらない話ですね」
ロッテ「と、いうと?」
シオン「言い換えれば、一人にならない為の保険と怠惰です」
ロッテ「まあ、正直今はね。結局のところ、原型(基本倫理)が古いのが悪いと思うわけよ。正直、千年以上変わっていないからね。下手したらもっとかも。そこまできたら、もうあまり変わらないけどね。あなたからしたらまだまだかもしれないけど、一般人も着実に進化している。特に、精神面がね。そのギャップに耐えられず今はちょっと歪んでいる、というのが私達の解釈ね。つまり、変わるのは世界の方だと思うの。少なくとも、そうしてから結論を出してもいいでしょ?死んだら元も子もないからね。殺してもつまらないだけよ?いや、実際本当に。例えば『蛇』だけ残ったとしたら、それはそれで悲惨でしょ?共生なんてそんなものと思うわ。でも、それこそが愛。そして、それを成し得た世界が平和。って、天ちゃんが言ってた気がするわ」
天丈「気がすると言うなら、言ってないけどな。俺がリーダーぽくなっているが、今おまえの方がいいと確信した、今からでもどうだ?」
ロッテ「カリスマは大事よ」
天丈「ま、おまえがそう言うならいいが。具体例というよりは理想になってしまったが、生きている限り実現させるつもりだ。そうなると、死ぬ要素は減らしておきたいものだ」
シオン「確かに、あなた達では万が一にも勝てません」
ロッテ「それはどうかな、さすがに元は人間だよね?なら、同じ力を手に入れることもできる。そのくらいの可能性はあるはずよ」
シオン「そうですね、一応論破できたということで、付き合うぐらいはいいでしょう」
ロッテ「天ちゃん、私やったよ」
天丈「俺も単純に仲間が増えるのは嬉しいな」
数日後。
石畳と周りにある緑が美しい街。ここはあの二人が管理している街だ。助けた者達は大抵ここに住んでいる。そのこともあって街では好意的な意味で人気者だ。外を歩くだけで頻繁に声をかけられる。ちなみに、今はロッテとエレクレインとその辺を歩いている。ロッテとエレクレインは師弟関係(愛と平和の)らしく、エレクレインとはここで出会った。エレクレインはここに住んでいるわけではなく、この頃から電脳人の領地で活動していたようだ。
シオン「依存し過ぎですね。糞うざったいです」
ロッテ「演じるのも大変だからね。少しでもずれると離れていくし」
エレクレイン「うわー、すごいぶっちゃけた」
ロッテ「天ちゃんはそれが面白いみたいだけどね」
シオン「悪趣味ですね」
ロッテ「そういう変わり者がいないと、世界に色は付かないのかもしれないわね」
エレクレイン「どっちに転んでも一色なのは確定だからね」
シオン「私からすれば、まだ足りませんが」
ロッテ「厳しいな」
教会の両開きのドアを開ける。今はロッテと天丈共々ここに住んでいる。別に宗教というわけではないのだろうが、効果は覿面だ。今日も多くの人が教会を訪れている。が、少し様子が違うようだ。
教壇の方を見ると天丈が倒れている。
シオン「結局、器が足りなかったようです」
エレクレイン「人間の性ね。どれだけのことをしたところで痔命で死んでしまう。師匠には悪いけど、ここはもう終わりでしょうね」
シオン「くだらない話です」
エレクレイン「その結論は早計よ」
シオン「受け継ぐ、がどうたらですか?」
エレクレイン「私達には無い発想よね。大抵自分で何とかするし」
シオン「そこまで言うなら、邪魔ぐらいはしないであげましょう」
エレクレイン「初めからその気はない癖に」
話も終わったのでこの場を去ろうとすると、エレクレインに襟首を掴まれその歩みを止められる。
シオン「殺しますよ」
エレクレイン「まあまあ、ギャグじゃないからそこは勘弁で」
エレクレインはそのまま私を引き戻すと、入れ替わりで一歩前に出こちらに振り向く。
エレクレイン「後は任せた」
そう言うや否や、エレクレインは空へ飛んで行った。
数日後。教会内寝室。そこにいるのは私と実は妊娠していたロッテ、その赤ん坊だ。ちなみに、助産婦は私だ。技術的に問題はなかったが、まさかこんなことをするハメになるとは。しかも病気らしく産後の影響もありもう数時間程度の命だ。この後の展開を考えると嫌な予感しかしない。
ロッテ「名前は桜、後は頼んだ」
シオン「さっそくですか。あなたにはご立派な弟子がいるでしょう?」
ロッテ「別に役不足というわけではないけど、シオンの方が適任だと思ってね」
シオン「まあ、いいでしょう。少し興味はあります。敢えて私を選んだそのセンスに免じるとしましょう。引継ぎというのは確かにこちら側には無い要素です」
ロッテ「結構ノリノリね」
シオン「茶化すとやめますよ」
ロッテ「じゃ、よろしくお願いします」
シオン「それより気に食わないのは、天丈が死んでからのあなたの体たらくです」
ロッテ「最期の言葉がそれとは、相変わらず手厳しい」
シオン「私に言われて嬉しいですか?」
ロッテ「正直、めちゃくちゃ。棒読みでもいいよ」
シオン「それは寝ぼけ過ぎです」
ロッテ「残念。さっきの話に戻ると、そこは愛ということで」
シオン「そうだとしたら、くだらない話です」
ロッテ「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないと、経験者として言っておくわ。天ちゃんが死んだ後は確かにものけの殻だったけど、私は幸せよ」
シオン「理屈が全然成立していません」
ロッテ「ふふ、そうね」
その後、瞬く間に二人の街は普通の街へと変わっていった。
後はエレクレインにも手伝わせる為に電脳人の領地に行き、とりあえずその辺の孤児院に預けた。無論、普通の人間を預けるのは前代未聞だが、そこは力押しさせてもらった。「かわいい子には旅をさせろ」というやつか。まさかこんな役回りをするハメになるとは。確実に流血沙汰にはなるが、そこは知ったことではない。精々頑張ってもらうとしよう。




