リアルファンタジー第二章
エデン拠点(二階建て一軒家)。庭には墓が建てられている。無論、元々あったわけではない。というより、明の墓だ。ちなみに、建てたのは飛鳥で墓地にあるような立派なやつだ。キューブ式の墓なので、作業としては明の死体を埋めたぐらいだが。そして誰がといえば俺だ。何か、本当に優男になってきた気がする今日この頃というところか。まあ、ありえないけどな。
リビング。中央西向きのソファーに凪と飛鳥。西の壁に置いてあるパソコンに俺とアレン。南の壁に置いてあるパソコンにシオン。ちなみに、北は窓で明の墓が堂々と真ん中に映し出されている。
優「さすがに違和感ありまくりだな」
飛鳥「フリーダムです」
優「そういえば、掃除屋はもう廃業になるのか?」
凪「さすがに、そんな暇ないからね」
優「以外にあいつらがなんだかんだで一番はしゃいでるよな」
飛鳥「世知辛い話ですが、仮にはしゃいでいいと言われても、というのはありますね」
優「なんで?」
飛鳥「すごく不愉快な聞き方ですが、ここは素直に答えましょう。生き方まで決められていますからね。それを壊すのは怖いです。その先をどうしても考えることができない」
優「あー、少し外しただけで不安とか言うからな」
飛鳥「そもそもそれ以外がないですからね。なんだかんだで一択ですね」
優「俺に創れと?」
飛鳥「少なくとも、それで二択にはなります」
優「なるほど、覚えておくか」
飛鳥「そうしてください」
リビングの扉が開く。来客者は事前に予約済みの春だ。手にはユイを提げているが、気を遣って剣先を床から浮かせている。
春「あ、シオンちゃん、お久しぶりです」
シオン「……」
春「まだグロッキーみたいですね」
シオン「さっさと座りなさい」
春「では、よろしくお願いします」
春はシオンの隣のパソコンに着く。ちなみに、南側と西側それぞれに二台ずつ置いてある。
優「よし、じゃあやるか」
飛鳥「私もお母様と応援しています」
優「そこは普通に名前でいいんじゃないか?」
飛鳥「そうですか?」
優「一般常識では違うだろうが、そこは新しい選択肢ということだな」
飛鳥「そうですね、私は名前の方にしておきます」
実はパソコンを弄っていたアレンの隣に着き、超3Dメガネを掛ける。
アレン「俺はお父様でいいぞ」
優「遠慮しとく」
リアルファンタジー内。例の城。どうやら開始場所はここで固定らしい。
アリア「おー、やっと来た」
優「嬉しそうだな」
アリア「単純に一人は暇だからね」
優「なるほど」
アリア「寂しいわけじゃないけど、暇は毒だよね」
優「俺は乗り越えて新たな可能性を見出してほしいけどな」
アリア「ハードル高っ」
優「それはそうと、このエリアから出れば他のプレイヤーぐらい居ないのか?」
アリア「優君がいないと出れないよ」
優「それでぴったりくっついていたのか」
アリア「そこは愛にしてほしいな」
優「じゃ、それでいいんじゃないか」
アリア「軽いなー」
優「こうして会うだけでも愛、ということだ。いちいち大仰なことをしなくてもな」
アリア「つまり今、愛し合っているわけだね」
優「どちらかというと、愛し会うだな」
アリア「ダジャレかよ」
優「よし、行くか」
アリア「今回はタッグマッチ。格ゲー風にゲージがあるだけで文字通りだよ」
優「おまえとか?」
アリア「私と優君は一心同体だからね。そこはサプライズゲストを呼んでるよ」
場所はまさかの使い回し、この前の草しかない草原だ。そこで待っていたのは霞。ここでは関係ないのかもしれないが、一般人だったのは意外だ。
優「よう、その後どうだ?」
霞「おかげでギクシャクしまくりだよ」
優「そうか、漫画みたいにはならなかったか。いや、まだわからないな。ゼウスの本体が壊れたから暗示も解けているはずだ。そろそろエデン内でも抑止解放の影響が出る。そうなれば、と思ったけど二択だな」
アリア「二択だね」
霞「そこはもういい。遅かれ早かれというやつだ。まあ、むしろ感謝している」
優「正直、どうでもいいけどな」
霞「……」
アリア「大丈夫、ツンデレだから」
優「それはともかく、頼るなら別に頼ってもいいぞ」
アリア「優男キャラ推すね」
優「もういっそそうするか」
霞「もはや何の話だよ」
向こう側から対戦相手がやって来る。というか顔見知りも顔見知り、シオンと春だ。ちまにみ、これは国家戦。エデンに来てからやっていたゲームはこれだったらしい。
会って早々、シオンの隣に次元の穴が開き、そこから巨大な蛇が這い出て来た。
優「なんじゃそれ」
シオン「ウロボロス、というと蛇になりますが、正確には電脳龍です」
優「全然わからん」
シオン「じゃあ、死んでください」
ウロボロスが空中を高速に這ってこちらに近づいてくる。
優「よし、ここは任せろ」
霞「お、おう。正直あれは無理」
優「素直でよろしい。さっそく必殺技いくか」
アリア「はいよ」
優「あ、おまえが使うんだ」
アリア「まあね」
必殺技は一つで、一戦闘に一回。俺のは全ステータス上昇。
優「すぐ終わるから準備しとけよ」
ウロボロスの噛み付き攻撃をギリギリでかわす。速いが直線だ。そのぐらいはわけない。その際、踵を返し頭から目を離さない。その頭が間髪入れずに切り返し、こちらに向ってくる。ウロボロスの大きさは電脳人の竜と同じぐらいか。このぐらいの大きさが流行っているかは置いておくとして、表面積が大きいのはかなりの弱点だ。例えば、こういう大技をかわしにくい。
次元印を起動する。出力は最大。その力を拳に集め、そのまま横のでかい胴体にパンチ。
攻撃自体はただのパンチだが、そこに集めた力に技術の粋が集まっているわけだ。
結果は殴ったところに直径1m程の次元の穴が開き、ウロボロスは消滅。
本当はもう少しエグい画になるはずだが、ここはゲームなのでダメージのみだ。おかげで俺の腕も消滅せずに済んだ。まあ、今は霊子体だから結局同じ結果にはなるが。いや、ウロボロスも霊子体だから現実世界でもまったく同じになるのか。これが今の最先端。結構な時代に生まれたものだ。
優「背中熱っ。さすがにオーバーヒートしたか」
ちなみに、電脳印は負担が重くなるとオーバーヒートする。具体的には熱を発し使えなくなる。どうやら次元印も同じようだ。霊子印、そちらは大丈夫なようだ。使えなくなったらそもそも死んでしまうが。印はあるが別物ということか。
シオン「それではまだまだクズですね。ゴミは嫌いです」
優「手厳しいな。まあ、凪から貰った聖痕を霊子印で変質させて次元印にしただけで、基本スペックは上がっていないからな」
シオン「それでは幕引きですね。私は割りとゲーマーなんです」
優「勝つ気満々ってことだな。こっちの事情知ってる癖に」
シオン「クズの発言ですね」
優「言ってみたが、確かに都合が良過ぎるな」
シオンが次元印を起動させる。次元に干渉する程の力だ。見ればわかる。霞でもわかるだろう。
霞「瀕死はわかる?」
優「赤いのが点滅した状態だろ?」
ちなみに、ゲージは頭の上に表示されている。
霞「それになったら動きを止め……」
優「『ろ』でいいだろ」
霞「そうか。行くぞ」
優「はいよ」
アリア「それ私の」
シオンは霞を片手剣で地面に落とさないように何度も空中へ打ち上げている。格ゲーのコンボよろしく、霞は手も足も出ない。ゲージは順調に減っているようだ。
優「あ、俺武器ないわ」
アリア「今気付いたのか、おっちょこちょいね」
優「しゃーない、ミートシールドだな」
アリア「しゃーない、私が武器になるよ」
優「マジで」
アリア「超マジ」
と、いうことで何か剣になった。
優「おお、漫画風に使い方が流れ込んでくる」
アリア「わざとらし」
優「そう突っ込むと俺が嘘ついてるみたいだろ。ま、どうでもいいか」
アリア「どうでもよくない話といえば、ゲージそろそろだね」
優「たまにはあいつに一泡吹かしてやるか」
アリア「できるかな?」
優「とりあえずやるだろ?ゲームだから死なないし」
アリア「最後のいらないね」
優「よく言われる」
霞を俗に言うお手玉状態にしているシオンに向って走り出す。
さすがのシオンも今は無防備だ。シオンはあっさり体力の残っている霞を蹴り飛ばすと、すぐこちらに向き剣を構える。
俺は剣を振る。距離は全然届いていない。お決まりと言えばお決まりの剣から何かでるやつだ。
正確には少し違うが。剣は淡い緑色の風(色が付いているので見える)になりシオンに向って行く。
さすがのシオンも意表を突かれ、大人しく風に巻き込まれる。
風はシオンサイズの球となりその動きを止める。
霞「行くぞ」
アリア「ちなみに、霞の必殺技は瀕死状態で使える一撃技です」
優「その状態でしゃべれるんだな」
アリア「まあね」
霞は実は手に持っていた槍(手も足もと言ったが、若干槍で防御していた)をシオンに向って投げる。
槍はシオンに直撃。ゲージは見事になくなった。
はずだったが、すぐに全快まで戻った。
それに伴い、アリアがこちらに戻って来た。風から人間に戻る。
優「回復系かよ」
アリア「まあまあ、一回だけだから次ぎは大丈夫だよ」
春「いえ、その必要はないです。棄権します」
優「よっしゃー、勝ったぞ」
アリア「やったね」
霞「いいのか?これ」
そういうことで、国家戦は俺達の勝ちで幕を閉じた。
2人はその後すぐにこの場でログアウト。アリアも城に帰って行った。
とりあえず、シオンちゃんに向って走りだす。
まだ次元印を起動中のシオンちゃんは次元の力付きのハンドガンを私に向けて撃つ。
鼓膜を震わす程の大きな音。威力もそれに相応しい。
私はそれを真正面で受け止める。と、言ってもユイによるシールドでだが。
逆手に持っていたユイをそのまま正面にかざす。そしてシールドを展開。銃弾を受け止める。
銃弾は力をばら撒き破砕。シールドは無傷だ。
春「今はこれで勘弁してください」
シオン「記憶も受け継いでいるはずですが、それとも馬鹿ですか?」
春「失礼ですね。そこを何とか、という話です。今頃『蛇』に戻る気もないでしょ?」
シオン「腐れ縁ですからね、生まれる前からの」
春「それは衝撃事実ですね。そうなると、私の両親の話ですか?」
シオン「そういうことです。孤児院に入れたのも、エレクレインの所に誘導したのも私。これからもお守りをやれ、とあなたは言っているわけです」
春「これからもよろしくお願いします。腐れ縁ということで」
シオン「ここまできたらというやつですか。まあ、いいでしょう。死ぬまで付き合ってあげます」
春「シオンちゃん最高」




