リアルファンタジー第一章 2
草原。文字通り草以外何もない。空は青空。全体的に明るい景色だ。
優「うわー、何か多いな」
先まで草しかなかったが、対戦相手が次々と現われる。向こう側から現われるのではなく、何もない所から突然、ゲームの世界だからログインみたいな感じか。
アリア「葵が王でシャルが斥候、霞が砲撃でヘイが盾」
優「ちなみに俺は?」
アリア「勇者、私は王」
優「名前は強そうだな」
アリア「ギャグじゃなくて、ちゃんとそういう仕様だから大丈夫」
優「そこはゲーム、というところか」
アリア「馬鹿にしてるな」
優「現実で勇者に一人勝ちされても困るからな」
アリア「でも今はそういうのが必要かもね」
優「このままだと木と海だけになるからな」
アリア「それは知らなかった。大変」
優「まったくだ」
結構な数がいたはずだが、気付けば主要の4人だけになっていた。その4人を囲むように赤い長方形のコート。一番奥の縦の中央を陣取っているのは王の葵だ。
アリア「捕まったらそのユニットの軍勢と強制戦闘って感じでお願いします」
優「急にスポーツぽくなったな。攻撃したらどうなるんだ?」
アリア「動きが止まる。優君は一人しかいないから他の3人を避けて葵君にアタックがセオリーだね。
上の方にゲージが見えていると思うけど、王への攻撃が一番減って、盾はその逆。砲撃と斥候は同じ二番手。こっちは一人だから一定量必ず減らされる。先攻は先に触れた方になるけど、正直最後の止めくらいにしか使わないかな。戦闘はターン制だからね。攻撃は必ず当たり、必ず交互に行なう」
優「なんか不利だな」
アリア「キューブは使えないけど、電脳印は使えるから大丈夫。とりあえず、あの4人は持ってないし」
優「それは逆に可哀想なことになりそうだ」
アリア「おお、自信満々」
優「一応、おまえをここから出してやらなとな」
アリア「一応かよ」
アレン曰く、このゲームをクリアするとアリアが現実に出てこれるらしい。仕組みは謎だ。
優「じゃ、始めるか」
スタートラインは葵と反対側の縦線中央。正面には盾のヘイがいる。あっちのセオリーとしては、盾を当てていき最小限でこっちを削るというところか。
優「ここは心理戦でいくか」
アリア「悪だね」
優「まあ、そうだな。ショック死の加減がわからないから死人が出るかもしれないな」
アリア「過剰過ぎる痛みは、最高点に達する前にログアウトされるようになってるから大丈夫。人にもよるけど」
優「最後気になるな」
アリア「じゃ、やめる?」
優「それは寝ぼけ過ぎだろ」
線を踏み越えると葵の砲撃が迎え撃つ。数からして、今は隠れている軍勢の方のも反映されているようだ。つまり、砲丸みたいな物が無数に飛んできている状態だ。効果は牽制と当たれば動き止め。痛みは……どうやらないようだ。俺なら避け切ることもできるがその必要はない。案の定ヘイがシャルを引き連れてこちらにやってくる。そしてヘイとの強制戦闘に入る。
空間が一瞬で切り替わる。気付けば、目の前にいるのはヘイ、そのすぐ後ろにその軍勢、数は何かいっぱいだ。皆盾と剣を持っている。
優「ベタベタだな」
と、言っていると攻撃がきた。ヘイ+軍勢が一斉に剣を振り下ろす。それと同時、どでかい斬撃エフェクトが袈裟斬りできた。何故か一歩も動けなくなっている。まあ、そういう仕様か。ここは大人しく攻撃に当たる。無論、むちゃくちゃ痛い。痛みを堪えつつ顔を上げると上空にデカデカと『リンク追撃』と書かれていた。
優「おい」
アリア「説明は実地で、と言いましたよね。では、文字通り追撃です」
ちなみに、アリアはここまでずっと幽霊のように浮遊しながら俺の隣にいる。どうやら、キャラクターとは別なものらしい。
と、思っていると攻撃がきた。今度は斬撃エフェクトのみ。同じ袈裟斬りだ。そして同じくめちゃくちゃ痛い。さすがにその場で膝を着く。いくら戦闘慣れしているとはいえ、そもそも慣れている奴ほど攻撃は当たらない。なので以外に痛みには慣れていなかったりする。まあ、この痛みに慣れるのはさすがに人間では不可能と思うが。ゆっくり立ち上がる。俺のターンだ。焦る必要はない。
優「まさかこういう使い方をするとはな。ここは素直にゲーム的快楽に浸るべきか?」
アリア「その方がパパも喜ぶと思います。ああ見えて、結構真面目につくってるからね」
優「そうなると、本当に大丈夫か?と、言う話だな」
アリア「痛みはパーティー分分散するから大丈夫。実は4人以外NPCだったりするしね」
優「ここにきてすごい事実だな。それで他はこんなに扱いがおざなりなわけか」
アリア「まあ、ぶっちゃけわざとだけど『拒絶』ということで」
優「なるほど、仲良し4人組みね」
アリア「と、いうかそれ以前に『寝ぼけた』とか言ってなかった?」
優「人間『拒絶』せずに臨機応変にいかないとな。前に言ったことなんてどうでもいい」
アリア「無責任だ」
優「責任なんて取らなくていいんだよ。それよりも最善を選ばないとな。自分の意志で。と、いうことでそろそろいくか」
アリア「結局やるんだね」
優「おまえが出られないし、俺も力が貰えない。なら、ヘイには少し痛い目にあってもらう。そういう話だ。死んでも責任は取れないけどな」
アリア「悪だね」
優「正直、死なれると目覚めは悪いが、どこの馬の骨とも知らない奴に気を遣うこともないだろ。そもそも、こいつらに合わせたらこっちはどうするんだって話だ。正義の味方もそんな立派な名前が付いているなら話ぐらいは聞いてほしいものだな」
アリア「何か言い方が下衆っぽいけど、私は優君に任せる」
優「そこは臨機応変、この場面では中々いい言葉だ。ま、俺にとってはだけど。対するヘイには少し悲惨だな」
そうこう言っていると空間が切り替わる。切り替わり先は元の赤いコートだ。いつの間にか俺も元の位置に戻されている。
優「思ったより効果覿面だったようだな」
アリア「心理戦?」
優「ま、これで万事解決ってことだな。これなら寝覚めも良さそうだ」
葵が負けを認め、ユニット戦は『依存』の勝利で幕を閉じた。




