リアルファンタジー第一章 1
春とカインはエデン内でもまた教会に住むらしい。前はそんな気力がなかったようだが、今回は宗教的なことをするとかなんとか。そして俺達はエデン内の拠点、つまりあの二階建ての一軒家そのリビングにいる。俺達と言ってもメンバーは少し違う。俺と凪、今回のエタの依頼のターゲット、同い歳の十八歳男性アレンだ。桜とシオンは別件の方に向って行った。
優「学校押しでいくと思ったら、まさかのネトゲか」
凪「ブームだからね」
優「そうか、俺は流されないようにしよう」
ちなみに、凪はソファーに寝そべっている。この件に関しては我関せずらしい。いつもエデンに来た時は寝ている気がするが。もう歳なのだろうか。
凪「地の文で冗談はやめようね」
優「天使は元気だな」
アレン「そろそろよろし?」
優「おう、いいぞ」
アレン「じゃ、とりあえずこれ着けよか」
渡されたのはパソコンとコードで繋がれたメガネ。特にレア物ではなく、市販されている超3Dメガネだ。一言で言えば、漫画でよくある仮想空間に直接入るとかいうあれだ。仮想空間がわかりづらいなら、ゲームと言い換えてもいいだろう。実際ゲームの中に入るわけだし。現実で言えば3Dメガネのすごいバージョン。飛び出すどころか、自分視点の五感付きだ。ちなみに、着けている間も外の様子がわかるように配慮されている。
アレン「能力一つ増えるだけで後は現実と変わらんからすぐ慣れるやろ」
優「それは逆に残念だな。久しぶりにがっつりゲームするつもりだったのに」
アレン「それは聞き捨てならんな。考えておこう」
メガネを掛けるとタイムラグ0で王道ファンタジーの世界。電脳感はない。そもそも電脳粒子がばら撒かれた今現在、現実もここも文字通り同じ世界だ。そう考えると、現実世界は案外すごいことになっているのかもしれない。
ダイブ先は城のバルコニー。城の造りも王道、バルコニーの先には城下町ではなく森が広がっている。そしてそこに佇むのは、見た目十八歳前後の金髪碧眼少女。王道のティアラとドレスも外さない。
アリア「あなたが勇者様?」
優「そういうおまえはアレンの娘だな」
アリアは霊子体だ。ここではNPCということになるのか。アリアの創り手がアレン。それで娘というわけだ。
アリア「パパも相変わらず元気そうですね」
優「外が見えるのか?」
アリア「丸見えです」
ちなみに、ゲーム内だからと言って専用のアバターはなく、そのままの姿が反映されている。
優「さっそくだが何するんだ?」
アリア「ゲーム嫌い?」
優「好きか嫌いで言えば好きというところだな。仮想空間とはいえ、新しい世界というのはわくわくするものだ。ガキっぽいと卑下するには惜しい娯楽だな」
アリア「もうそれ、好きでいいんじゃない?」
優「二文字じゃ寒いだろ?」
アリア「場合によっては面倒臭いけどね」
優「俺は空気なんて読まない」
アリア「結局、それが一番ですね」
優「気が合うな」
アリア「いいことです。では、説明しましょうかね。このゲームの第一目的として他の三国、『拒絶』、『転嫁』、『妄執』と戦い勝ちます。ちなみに、私達は『依存』です」
優「まさかのメンバー2人だけか?」
アリア「その通り」
優「それ数的に大丈夫なのか?」
アリア「これ裏モードで参加人数少ないし、その辺りはパパが配慮するから大丈夫」
優「どの辺りが裏なんだ?」
アリア「アバターと痛覚」
こういうゲームは今では珍しくないが、無論痛覚は消されている。
優「俺でも致命傷は避けているわけだし(受けたら死にます)、ショック死しそうだな」
アリア「気合いでお願いします」
優「気合いかよ」
アリア「じゃ、説明に戻ります」
優「マジで気合いかよ」
アリア「今回の対戦相手は『拒絶』。主要メンバーは男2人と女2人。同じ高校に通っていて3年生ね。男が葵とヘイ、女がシャルと霞。主は葵で、それを倒すのが目的。戦闘方式はユニット戦。シャルと霞は葵のことが好きで、葵は霞に惹かれている、ヘイは蚊帳の外だね。高一からの仲良し4人組みだけど、最近そんな感じでギクシャクしているみたい」
優「すっごいプライバシー侵害してるな」
アリア「ゲームで人生変わるって素敵だよね」
優「反対意見としてはそんな安い人生送ってないとかだろうが、そんな安いことで変われるなら確かに素敵だな。まあ、変われる時点で安くない気もするが。で、まさかの俺が面倒見ないといけないオチか?」
アリア「そういうオチ」
優「一応、同い歳なんだけどな」
アリア「ゲームクリアの為、頑張ってください」
優「本当に関係あるのか?」
アリア「大アリ」
優「なら、仕方ないな」
アリア「物分りいいね」
優「俺の長所だ」
アリア「じゃ、ユニット戦の説明。は、実地でやった方が早いかな」




