回想:桜(後編)
坂の上の教会。すぐ後ろは隔壁だ。坂の入り口からその先の平地まで、切り取るように木が生えている。規模はそれ程でもなく、わざわざ周りと切り離す為に植えられたと思える程だ。外から見れば少し滑稽だが、中に入れば森林とは言えずとも林道くらいには言える。つまり、視界は木に遮られ外の景色は見えない。やはりそういうことなのだろう。さらにこの木は電脳製。意図的にこういう場所を造るのは容易だ。坂の入り口には相談所と書かれた看板。
エレクレイン「都合のいい時だけか、こんちくしょう。とか思うのは三流よ」
春「そうですか?」
エレクレイン「器は大きくしておかないとね。三流を馬鹿にすれば、その人も三流ってこと」
桜「やっべ、三流丸出しだ」
エレクレイン「これからたっぷり実感させてあげるわ。正直暇だし」
桜「なるほど、最後のが本音だな」
教会に入ると二十代前半の男性カインと十五歳前後の少女シオンがいた。シオンはこの頃から少なくとも見た目は変わっていない。
シオン「誰ですか?うざいですね。あまり私を失望させないでください」
エレクレイン「大丈夫、ちゃんと面白いから。シオンには桜かな」
シオン「まあ、いいでしょう」
シオンは桜に手に持っていた大剣を投げ渡す。大きさはシオンと同じくらいだ。一目で私とシオンを見分けられたのは大して不思議なことではない。私、暗いので。性格は見事に真逆だ。
エレクレイン「春は私とカインね」
春「あまりものですか」
エレクレイン「悲観的ね。そんなあなたには大役を担ってもらいましょう」
半年後。エレクレインからはいわゆる綺麗事を教わった。ちなみに、カインは付き添いみたいなものだ。始めはかなり抵抗があったが、今では慣れたものだ。いや、安らぎすら感じつつある。気の持ちようとまではまだ割り切れないが、この場所だけというなら悪くはないかもしれない。桜の方は意外にもシオンと仲良くしているようだ。仲良く何をしているのかというと、相変わらず血生臭いことのようだ。返り血を浴びて(なぜか桜の方だけ)帰ってくる時は多々ある。その度にエレクレインが小言を言うのは、もはや定例行事だ。
今日は全員教会内にいる。シオンが機械弄りをしている以外は特に何もしていない。
シオン「出来ましたよ人格強制プログラム、一週間前に」
エレクレイン「へー、なんでその時言わなかったんだろ」
シオン「で、どうするんですか?もちろん、仕上がりは予定通りです」
エレクレン「そうね。むしろノリノリで使おうかな」
シオン「本気でやるならそれが妥当ですね」
エレクレイン「冗談だけどね」
シオン「そうですか。それならこの辺りが潮時ですね」
エレクレイン「寂しくなるわね」
桜「よし、私も行こう」
エレクレイン「そうなると、春はどうする?」
春「私は残ります」
桜「さすが私。わかってもらっているようでなによりだ」
エレクレイン「一応、カインは?」
カイン「俺にここ以外の居場所はないからな」
エレクレイン「暗いし、突っ込みもなしか」
カイン「それは悪かったな」
その時、外の方から嫌な声が聞こえる。人数はそれなりだろう。汚い、憂鬱になる声だ。
シオン「まあ、存外持った方ですね。いや、あのゴミ共を誉めるのは不愉快ですね。腹いせに殺しておきましょう。では、次ぎに会う時はもう少しまともになっていることをお互い願うとしましょう」
桜「じゃ、私も行く。ああ、そうだ。ユイは春が持っていた方がいいかもしれないな」
春「いえ、保留にしておいてください」
桜「なんだ、気を遣ってるのか?まだそんなことを言ようなら、確かにまだ早いかもしれないな。それはそうと、デカ過ぎるだろ」
ユイ『今更ね』
ちなみに、大剣状態のユイは八歳の少女の身長より大きい。
シオン「まるで私が馬鹿にされたみたいですね。いいでしょう。もう少しコンパクトにしてあげましょう」
桜「おお、それはいいな。どうせなら銃にしてくれ。私はこういうのよりそっちの方がいいようだ」
エレクレイン「ええと、かなりタイミングがずれたけど、ここは私が出るわ」
シオン「結局、三下だったということですか。実に残念な結果です」
エレクレイン「私はね。と、いうことでカイン、シオンを失望させないように頑張ってね」
カイン「……」
エレクレイン「春なら見せてくれるわよ、きっと」
翌日。結論を言えばエレクレインは死んだ。桜とシオンもその日の内に出て行った、ちなみに、殺してはいない。あの一団はエレクレインを殺して満足したのか、殺した後早々に立ち去って行った。無論、エレクレインの方が戦闘力は格段に上だ。表向きは無抵抗の者を殺した罪悪感ということだろう。私の見解はやはり前者、ただ単に満足しただけ。少なくとも今はそうとしか思えない。




