掃除屋稼業 2
翌朝。
優「これ完璧準備されたよな。もはや百パー来るのはわかってるわけだし」
リオ「そっちの方が面白いでしょ?」
優「悪趣味だな。死んだらまぬけだぞ」
リオ「死ななければ最高よ」
優「まあ、最高かどうかは微妙だけどな」
ちなみに、結局凪以外は全員夜更かしだ。意地でも添い寝したかったらしく、俺の背中にしがみついている。形としてはおんぶだ。エロさよりも、これでちゃんと寝ることが出来ているのに感嘆を抱く。
優「しかも凪以外結局起きてるし」
桜「あー、ぶちぶちうるさい」
リオ「そうね。これ以上小言を言われる前にさっさと行きましょうか」
シオン「まったくですね」
優「おいおい、シオンもかよ」
カシヤス「残念ながら、そもそもシオンはそんなキャラじゃないぞ」
シオン「うるさいですよ、そこの糞ジジィ」
優「あ、本当だ」
五階建てのビル。一階はロビー。その役目に相応しく、応接セットが並べられている。ここは『狗』の事務所。経営は例の五人だけでやっている。ここより上の階は何もないワンフロアがそのまま四つ。特別な補強はされておらず簡単に壁をぶち破ることができるが、そこは電脳粒子製なので修復は一瞬で終わる。
リオ「対戦場ね」
イサラの説明だとそういうことらしい。イサラ以外のメンバーに一階ずつ割り当てられている。仕掛けなどのないワンフロアでのタイマン勝負。
イサラ「『狗』は殺しを嗜好と考えているからね。お遊びよ、お遊び」
私とカシヤス以外の掃除屋メンバーが今そのタイマン勝負をしているところだ。対戦の様子はロビーにある四枚のモニターでそれぞれ確認できる。
イサラ「中々好評でね。いい資金源になっているわ」
この映像を有料サイトに流しているというのはこの辺りで有名な話だ。
イサラ「しかし、今頃ケチをつける者がいるとは。まあ、慢性的にあなた達みたいなのは送られて来るから順当といえば順当だけど。案外、この動画を観ている奴の仕業だったりしてね」
リオ「お陰様でいい資金源になるわ」
私とカシヤスは立ったままモニターを観る。理由はどうせすぐに終わるからだ。優辺りが無駄に引き伸ばすくらいか。それでも用意されているソファーに座る必要はないだろう。
二階。ここの対戦カードはシオンとガズ。ガズの獲物は大きな鋏。片手で開閉出来るようになっている。
まだ隠し玉としてならわかるが、鋏なんて特殊な物を最初に見せ付けられたら対処はいくらでもできる。
効率より嗜好が上回ってはこちら側の人間としては終わりだ。殺し合いだ、その余裕は直接死に繋がる。
この程度の相手ならそれ以前の問題ではあるが。
ガズ「幼女か。そういう趣味ではないが嫌いではないな」
シオン「私は嫌いですね。あなたみたいな人種。最低、最悪。死ねばいいと思います。死んでください。嫌ですか?そうですか。じゃあ、殺します」
すべては会話中の出来事。
あれを会話と言うのは不愉快ですけど。
ガズが馬鹿丸出しで戦闘を始めず暢気に口を開いている時に電脳印を通じて手榴弾を精製し、すぐ目の前に投げる(ガズにはまったく届いていない)。これは普通の手榴弾ではなく爆発すると一帯に濃度の濃い静電気を撒き散らす。
一応、応えてやったのは時間稼ぎ。その必要もないが、変に粘られても不愉快だ。確実に死んでもらうとしよう。
私の目の前の虚空に黒い穴が開く。次元の穴だ。縁には例によって電脳粒子の装飾。裏話をするとフェイが使っているのも含めて私が造った物だ。
大きさは直径私の全長より少し長め。その中心点から電気の極太レーザーが発射される。
静電気によりさらに倍加。ガズに直撃する。
しかしこれは足止め用だ。
次元の穴から出て来たのは龍。手足がないので、どちらかと言えば蛇に近い。
龍は横からガズの胴体全てを食い千切るとそのまま消滅する。
先に言った通り三行の会話での出来事だ。
三階。対戦カードは桜とリリエラ。
リリエラ「よーし、準備いいよね」
子供故の純粋さを残した殺し屋。私もそういうキャラに思われがちだが、残念ながらと言うべきかとにかく違う。
リリエラ「突撃ー」
キャラに違わぬテンションの高さでこちらに向かって来る。獲物は大きめのショットガン。槍のように両手で抱える形だ。
リリエラは走りながら撃つ。散弾なので多少ずれても当たる。私を殺せる程には。さすがに慣れているらしく一撃目で死んだ。私は十回死ねるわけだが、意識は死んだ状態でも残る(もちろん十一回目の時はそのままお陀仏だ)。その状態は最高で十秒維持できる。ちなみに、肉体が完全に消滅しても復活できる。復活できる距離は死んだ場所から3メートル程度。回数は毎日午前0時にリセットされる。
話を戻すとカウンターは手榴弾。一般的な物より威力はかなり高い。撃たれる前に精製しておいた。
そして手榴弾がリリエラの目の前で爆発する。さらに具体的に威力を言うなら、床を余裕でぶち抜く程で、死体が爆散する程だ。
リリエラ「うわ、自爆?」
リリエラは後ろに大きく跳んで凌ぐが、ダメージはかなりでかい。思わず膝を着く程には。
と、言うには少し語弊がある。実際には膝を着く前にリリエラの頭は銃弾により吹き飛び、その反動で体は仰向けに倒れた。
タネは簡単。下の階で復活した私(ちなみに、幽霊みたいに壁抜けして復活することはできない)がユイでリリエラの頭を撃った。それだけの話だ。
桜「お、そっちも終わったのか。ふむ、結構グロいな」
私の目に映ったのは生首と両足だけのガズ。
シオン「桜も似たようなものですけどね」
ユイはハンドガンだが、一般的な物より飛距離も威力も高い。飛距離は約一キロ、威力は銃弾一発で人の頭を消し飛ばす程だ。つまり、リリエラは首なし状態というわけだ。確かに、ここまでくらば何をしても似たようなものだ。
三階。対戦カードは凪と篝。
凪「……」
篝「……」
こんな状態なのは話すことがない以前に、私が優を気にして思いっきり上を向いているからだ。
凪「本当、相変わらずね。仕方ない、面倒見てあげるかな」
篝に視線を戻し、人差し指で指を差す。それをそのまま横に。
篝は釣られて横を向く。
その隙に一気に距離を詰め、手刀で心臓を刺して終わり。
一応、フォローしてあげると、私がフェイ並に速過ぎるということで。
篝「台詞……なし……かよ」
凪「ギャグ要員ご苦労様」
四階。対戦カードは優とサルサ。
サルサ「そろそろ死んでくださいよー。てか、真面目にやれボケカス。そして死ね」
優「だって弱いからな。もう攻撃見え見え」
かれこれ2分間サルサのナイフ攻撃を避け続けている。
サルサ「調子こいてますねー、死んでください」
優「とはいえ、実際こんな状況だからな。ちなみに、暗に見逃してやろうって話だ」
サルサ「わかりました。死んでくれるという話ですね。では、さっそく死んでください」
優「仕方ない。バテるまで粘るか」
凪「さすがにそれはないでしょ」
そう言い終わる頃には、床を突き破って登場した凪がサルサの胸を手刀で突き刺し、そのまま俺の上空を飛んでいた。凪はサルサの死体を横に投げ捨てると目の前に着地する。
優「おいおい、殺すなよ」
凪「ごみ掃除が掃除屋の仕事だからね」
優「ああ、そういう意味だったんだ」
凪「そもそも、ああいうのには何をやっても何を言っても無駄なのはわかってるでしょ?」
優「まだまだ試したいお年頃、ということで」
凪「私とは天と地の差だからね」
優「もう諦めている感じか?」
凪「確かに私からはないけど、期待している感じかな」
優「じゃあ、もう少し辛抱してもらわないとな」
床に転がっているサルサの死体に視線を移す。
優「あれだけ騒いでいたのにこの様じゃつまらないからな」
一階。対戦結果はモニターでわかっている。
リオ「カシやん」
カシヤス「珍しいな。じゃあ、回収でもしてくるか」
カシヤスはリオの意図を悟り、階段を登って行く。
その間に、もうイサラは殺した。手段はただの早撃ちだ。
そこにタイミング良く例の次元の穴が開く。
中から出て来たのは『蛇』の一人月羽だ。歳は二十代前半女性、着物を着ていて腰に刀を差している。さらに赤目の電脳人。
月羽「お呼びですかい」
リオ「次ぎ、風助ね」
月羽「風助かい。大物じゃのう」
リオ「『依存』を使えば楽勝よ」
月羽「ほう、それはいい。して、掃除屋はどうや?」
リオ「そろそろ潮時ね。なんか飽きた」
月羽「相変わらず、飽き性じゃのう。では、わちはこれで」
リオ「あー、つまらない世界ね」
月羽「それは同感やね」




