エタの依頼2連3/12 4
翌日。ゼウスの記憶操作によりあそこは空き家となった。少しオーバーだが、二人共戻る場所がなくなったことになる。ちなみに、荷物は引越し用キューブの中だ。外での日用品。部屋単位で中の物を収容できる。だいたいワンフロアだからこれに瞬時に収容し、そのまま拠点を撤退という感じだ。これも六面で、一面に一部屋となっている。
そして今は那綱、飛鳥と通学中。
飛鳥「アイス買って行きましょうか」
優「朝から冗談きついな、それ」
那綱「はっ、仕方ない。貰ってやるよ」
優「仕方ない。たまには意に沿わないことをするのもいいだろ」
飛鳥「なんだかんだでいい人ですよね」
優「お人好しか、それもいいかもしれないな」
と、いうことで那綱と外のベンチで待つことになった。
那綱「さっさと諦めろ。親殺しじゃどうにもならねぇよ」
優「いや、まだまだいけるだろ」
那綱「どこにだよ」
優「生きていればどこへでもな」
那綱「臭い台詞だな」
優「いや、物理的な話だ。逆に死んだら何もできないわけだ、物理的にな。本音はどうなんだ?」
那綱「……このまま死んだら惨め過ぎるだろ」
優「決まりだな。まあ、俺がうまくやるよ」
那綱「勝手にやる分には許してやるよ」
優「じゃあ、そうさせてもらおう」
飛鳥がアイスを3本持って出て来た。
飛鳥「話が纏まったみたいでなによりです」
優「これでハッピーエンドだな、俺が」
飛鳥「そうなんですね」
優「いやー、最近すごいのばっか出てくるからな。このままじゃ置いてけぼりくらいそうだし、それ以前に殺されそうだ。ここは冗談抜きで本気ださないとな。ああ、どっちも生かす必要があるらしいから、俺がそういうオチにすることはない。安心していいぞ」
那綱「誰も心配してねぇよ」
飛鳥「お人好しですからね」
優「話噛み合ってないぞ」
飛鳥「いいんですよ、こういう時は」
優「へー、そうなんだ」
飛鳥「うわー、馬鹿にした言い方」
優「残念ながら声音通りだ」
飛鳥「ひどい」
優「でもまあ、今の感じならいいかもしれないな。定型文は勘弁だけど」
飛鳥「その話、押しますね」
優「突っ込みとしては、ギャルゲーか、だからな。そう考えると、頑張ってほしくもなる」
飛鳥「あー、以外と的を射ているかもしれませんね。頑張ります」
校門から校舎への道。その左側には運動場がある。そのど真ん中に佇むのは黒コート。フードを深く被っていて顔を見ることはできない。あれがエース様。まあ、蓮だけど。ちなみに、余裕で遅刻だ。今は授業中だが、校舎には野次馬が溢れている。公認のイベントということか。こうなったら、邪魔は万が一にも入らないだろう。校舎側からは。
優「見せしめか。悪趣味だな、蓮」
蓮は文字通り問答無用でこちらに向って来る。話し合いが無理とは、残念なことだ。と、思っていたらすぐ横で黒い穴が開いた。いわゆる次元の穴というやつ。縁には電脳粒子っぽいやつ(淡い緑色だから)で派手な装飾が円に沿って描かれている。蓮は構わずこちらに向かって来る。こういう時は様子を見た方がいいんだが。言っているそばから蓮はフェイに組み伏せられる。次元の穴からの特攻。正直ほとんど見えなかった。とりあえず、あの穴はワープの類だったようだ。おあつらえ向きに校門からヨナがやって来る。ちなみに、俺達はまだ運動場に降りていない。
ヨナ「サプライズ」
優「もはやうぜー」
フェイは文字通り問答無用で蓮のコートを無理やり脱がすと、俺の隣の穴からさっさと帰って行った。
ヨナ「あ、あいつ閉じやがった。まあいいか、ティナの土産でも買うかな」
そういうことらしく、ヨナもさっさとこの場を去る。
優「やったな、那綱」
那綱「いや、ひど過ぎるだろ」
優「まあ、結果オーライにしておこう。実際そうだしな」
飛鳥「そうですね」
那綱「……」
向かいのマンション。実は二階建てで明と蘇芳以外は住んでいない。つまり一室以外すべて空き部屋。その空き部屋、明と飛鳥の隣の部屋、そのリビング。面子は俺と飛鳥、那綱と蓮だ。
飛鳥「終わりましたね」
優「そうだな。後はゼウスが事後処理して終了だ」
那綱「ああ、兄様が私を殺して終わりだ」
優「もうこの流れならいいだろ。な、蓮」
蓮「そうだね」
那綱は勢い良く顔を上げる。
蓮「一緒に生きよう」
那綱は泣きながら兄の元に飛びついて行った。
飛鳥「萌えポイント1000」
優「もうそれに関しては突っ込まん」




