後日談
その日の夜。蘇芳とその父親の明は俺達の拠点の向かいにあるマンションに住むことになった。とはいえ、いろいろ荒れそうなのでアフターケアーとしてしばらくは拠点の方で一緒にだ。部屋は二階の空き部屋で、それぞれに一つずつ。そして、俺が今いるのは明の部屋。
優「しかしおっさんもはしゃいだな。年甲斐もなく」
ゼウスから参考資料として渡されたアルバムを開く。感想を一言で言うと、エロだ。
優「本当はしゃいだな。年甲斐もなく」
明「……」
優「ぐうの音も出ないか。しかし、こんなことしておきながらまともに話したことないんじゃないか?いや、話してないから出来るのか。そう考えると、下衆とか以前に寂しい関係だな。まあ、行為はともかく良くある親子関係ではあるが。血は繋がっていないが、俺はああいう関係でよかったよ」
明「……」
優「どちらかというと、こういう話をされるのは初めてでとまどっているというところか。普通は定型文だからな。ああ言えばこう言うってやつ。これからは本音で話したらどうだ?変わるんじゃなくて、この経験を生かしてな。罪悪感を感じているならそうした方がいいだろ。感動話でもよくあるだろ?とりあえず、それを真似ればいい」
明「……」
ゼウス「だんまりはいけないなー。そんないけない子には消えてもらわないと」
開けっ放しだった部屋のドアからゼウスが入って来る。いつの間にか、この家に来ていたようだ。ゼウスはそのまま俺の隣に座る。
ゼウス「暗示ってやつだね。今までのことは綺麗さっぱり忘れてもらって、別人になってもらおうかな
優「それは怖い話だな。頑張れ、おっさん」
蘇芳「仕方ないですね。こういう泣き落としみたいなことはしたくなかったんですが。ここは思い切って泣いてもらいます」
今度は蘇芳が入って来た。そのまま俺の隣に座り、一枚の写真を取り出す。家族3人、仲が良さそうだ。正直、アニメみたいな奴だったらゼウスに任せたが、わざわざこうして話ているのはこういうことだ。
蘇芳「いやー、本当にはしゃぎましたね。大人しく撮られていてなんですが、正直ドン引きです」
明「……」
蘇芳「嘘です。正直ノリノリでした」
優「すげー、それただの変態だ」
蘇芳「血は争えませんね。私はお父様似のようです」
ゼウス「この展開はちょっと以外だったね。じゃ、ご褒美」
ゼウスは立ち上がり、明の顔に正拳突きした。明はそのまま後ろに倒れる。
優「それ、ご褒美なのか?」
ゼウス「たまには神様らしく背中を押してあげないとね。あのままじゃ埒が明かないだろうし」
ゼウスはそう言って、さっさと部屋から出て行った。
優「とりあえずよかったな」
蘇芳「そうですね。少し腑に落ちませんが」
優「そうだな。どちらかというと、ノリノリだったていうカミングアウトがな」
翌日。今日は休日だ。とある写真館。ここが明の新しい就職先だ。今日は貸切り。まあ、自分の店だが。被写体はもちろん蘇芳。さすがにエロ過ぎるのはNGだったようだが、写真を撮られること自体は好きらしい。今もジャンジャン撮られていることだろう。結局はきっかけ一つということか。定型文ではなかなか本音は出ないからな。言わないとわからない。誤認一つでこの様だ。と、いうのが今回の話の落とし所だな。
しばらくして、外にある店のベンチに並んで座っている俺と凪の所に蘇芳が市販のアイスを人数分持ってやって来た。
優「こんなのも売ってるのか」
蘇芳「昔よく食べてましたからね、私が」
優「えらく庶民的だな」
蘇芳「あの頃は庶民でしたから」
優「金が人を狂わせた、というところか。まあ、実際は金持ち気取りだろうけどな」
凪「解説すると、金持ちはこうするべき、みたいな感じね。わかりやすく物で例えると、大きな家を買うとか、車を何台も買うとか。どっちも管理が大変だから、趣味じゃない限りいらないよね」
蘇芳「なるほど。解説ありがとうございます」
優「まあ、ここまで自我が確立すればもうその心配もないだろ」
蘇芳「そうですね。私もそう思います」
凪「今関係ないけど、再会して以来全然構ってくれないよね」
優「本当関係ないな。もうお互いそれなりの歳なんだから子離れしたらどうだ?」
凪「私は永遠に愛するのよ」
蘇芳「すばらしいです」
優「なるほど、ファザコンか。これ何気に二度ネタだな」




