優 解放者への道7
ドーム外、電脳の海、海上。
そこで梓の修行を始めて一、二時間程度。
ここにいるメンバーは俺こと優、アルル、マルタそして梓だ。
その梓はというと、今では空中を飛び回り機械の剣を振り回しながらそこかしこに水柱ならぬ電脳柱を上げている。これが梓の(の、と言っても一応は誰でも使える)電脳能力『重力操作』。ローブにもその機能は付いているが、その比ではない。
アルル「もはや、師匠超だね」
優「要はただのきっかけってことだな」
マルタ「あなたにはまだないのかしら?」
優「逆にそう願いたいところだ」
梓「師匠」
優「おう、もう卒業だ。よくやった。霊子体じゃないからあまり無茶は出来ないだろうが、これで援護ぐらいはできるだろ。ああ、こう言うと甘い評価に聞こえるかもしれないが、普通に俺より強いから大丈夫だ。自信ぐらい持ってもバチは当たらないだろ」
梓「お、おう、あっさりだな」
優「案外そんなもの、ってやつだな。電脳粒子もかなりぶっ飛んだ技術だが、基本誰でも使える。どっかのすごい存在に選ばれなくてもな。犬でもいけるんじゃないか。無論、犬でも人間でもそれなりの覚悟がいるわけだが。この場合の覚悟はイメージだな。現状を何とかする、あるいは変えるイメージ、覚悟だ。おまえにはそれがあった。それだけの話だが、それだけで十分な話だ。もっと砕いて言えば、ただのヤル気だ。おまえは優等生で何よりだったよ。俺はそういう類の面倒なのはあまり好きじゃないからな。見放したみたいな言い方だが、ヤル気ないなら別のことを探してくれって話だ。そういう意味で、おまえはこっち側に向いていたわけだな。これだけ言ったら納得出来ただろ?少なくとも、慰めや適当で言ったわけじゃないことぐらいは。まあ確かに、予想以上に短時間だったが」
梓「お、おう。とりあえず、あざっす」
優「この話はこれで終わりとして、さてどうしたものか」
アルル「ここは秘技壁壊しだね」
優「ちなみに、現実的にどうなんだ?」
マルタ「壁の維持力は一つのコアに集中しているから楽勝」
優「そっち的にはどうよ?」
梓「今やられると困るっす」
優「悪まで手伝いの為ってことか?」
梓「すまん、師匠。むしろ、私も反対だ」
優「で、実際はどうなんだ?」
マルタ「ボコボコね。あの壁を造ったのは私、つまりこっち側なわけだし。何もできないんじゃないかしら」
優「なるほど、さすがに死んでもらったら本末転倒だな」
マルタ「そうなの?」
優「他にもいろいろ言いようはあるが、ここは敢えてシンプルに言おう。つまらないだろ、こっち側だけでも逆でもな」
マルタ「今はその逆だけだけどね」
優「辛口だな。一応、居場所はないがこうして俺達も生きているだろ。そう考えると案外、ただ持て余している状態なだけなのかもな。話を戻すと、もう結果は出ているわけだ」
マルタ「確かにつまらないわね、今の世界は」
優「マイルドに言うと、もっと面白くできるだな」
マルタ「私の場合、壮絶な過去どころか嫌な過去もないからね。早めにこちら側に来た分、それなりには充実していたわ。それなりに、ね。と、言うことで結果が出るまでは気長に待つことにしましょう」
優「そうそう、人生気長にいかないとな。そんな諺もあっただろ?」
マルタ「その感じだと、君にもなさそうね」
優「俺は早めどころか生まれてすぐだからな。居場所がないとは言ったが、同じ仲間が集まっているという意味でなら、俺には最初からあったわけだ。さて、ちょうどいい流れだから本題に入るとだ、おまえはどうだ?梓」
梓「く、わかるか師匠」
優「まあな。マルタは違ったが、俺の知り合いほとんどこの世界に不満たらたらだからな」
マルタ「私も満足はしてない」
優「ま、確かにそこは妥協できないところか。とりあえず、遠慮せずに言ってみろ。むしろ、遠慮されたら困るな。おまえには起爆剤になってもらわないと」
梓「ってもあれだぜ師匠、予想通りのあれやこれやだからな。どうしょうもないところがある。それよりも私は親父と新しい世界を見てみたいな」
優「俺は向こう側から来たが、正直似たようなものだぞ」
マルタ「ちなみに私はさらに向こう側だけど、同じ意見ね」
梓「ぐ、さっさく私の夢が」
優「まだ諦めるのは早いぜ」
梓「そうか?」
優「そうだよ、こうして生きてるんだからな。俺の人生、実はたかだか十八年前後だがその短い間でも結構不満たらたらのまま死んだ奴はいる。生きてるだけで、というのも味気ないがチャンスではあるわけだ。おまえも不満たらたらだろ?そもそも我慢してやる義理もないしな」
アルル「生きてるだけじゃ何ともならない、ってことだね」
優「ヤル気出そうぜ、俺も協力するからよ」
梓「じゃあ、あまり血生臭くないなら」
優「よし、決まりだな。こっちの方がわくわくするだろ?」
梓「お、おう」




