優 解放者への道5
ドーム内。天井があるせいか、建物の高さは2、3階程度。一番高い物でも4階までだ。
照明は外と変わらない。むしろ、人工な分こちらの方が過ごしやすい。
造りはコンクリートベースとあまりあちらと変わらないが、ビル級の建物がないだけで斬新といえば斬新だ。後、あちらにはもはや絶滅危惧種の一軒家が普通にある。むしろ多い。
優「何か狭苦しいな」
アシェル「入って早々、いきなり愚痴ですか」
優「俺は解放者だからな、それだけでは終わらない。文字通り、解放してやってもいいんだぞ?」
アシェル「それによって死人が出ても?」
優「案外大丈夫だって。それに、俺は気にしない」
梓「いや、気にしろよ」
優「そっちの方がいいとは思うが、それを理由にやめる気はない。まあ、必要な犠牲とも思わないけどな。各々がんばれ、ってところか」
アシェル「みんな君のようにはがんばれないと思うけどね。僕も含めて」
アルル「出た、自虐ネタ」
優「そうそう、そんなもんネタだよネタ。そろそろ真面目にいこうぜ」
アシェル「真面目に、ですか」
優「向き合え、ってことだな。いつまでも惰性というわけにはいかないだろ、お互いの為にな。今は変化の時だ。いつまでも留まられると困るんだよな」
アシェル「こっちとしては、変化させられると困るんだけど」
マルタ「埒の明かない話ね」
エド『確かに、面倒臭い話っす。結局、どっちがこの世界を奪うかって話っすか?まあ、俺は先生に付いて行くから心配いらないっすよ、先生。そもそも人間じゃないけど』
優「それを言うなら俺もアシェルもだけどな。もうタンパク質=人間も古いということだ。一般常識=人間もな。俺はいっそ自我=人間と認識することにする。しかし、これは変化してこその発想だ。一般人、と言われている内は無理だろうな。が、こうして形だけでも受け入れることはできる。一般人でもな。いわゆる妥協だ。これは昔ながらの人間のいいところだな。機械的に考えれば、エドの言った通りなのだろうが、妥協すれば共生もできる。俺も別に皆殺しを望んでいるわけではない。少なくとも俺は妥協する用意がある。むしろ、その方が理想だ。おまえもガチガチになってないで妥協を覚えろ。いい加減と言えば聞こえは悪いが、実際はそういうことだ。ま、おまえがどうしてもと言うなら俺もそれなりの態度をとらなければならないが、その心配はないよな?」
アシェル「今のところはね」
アルル「ふー、今回長いね」
優「ここからの俺は長いぞ。まずは、俺を解放しないと話にならないからな。いやー、結構この世界にうっぷん溜まってるな、俺」
アシェル「とりあえず、僕の家です。ここにいる間はここを使ってください」
そこはごくごく普通の漫画などに出てきそうな二階建ての一軒家だ。
優「懐かしいな」
アシェル「それは肯定的な意味で?」
優「まあな。俺はこの世界を嫌っているわけじゃない。ただ、足りないんだよ。そろそろ足さないとな。結構昔から変わってないが、今まで何やってたんだ、とは言わない。むしろ、今がその時だからな。そうだな、この際全体の話ではなくアシェル一個人として手伝ってほしいものだ。俺、友達少ないんだよ」
アシェル「……考えておくよ」
優「本当に考えろよ、おまえ自身の経験と頭でな。もちろん、俺は考えたぜ。その結果が解放者だ」
と、そこで玄関の扉が開き二十代後半ぐらいの女性が現れる。
ルナ「えーと、長いから出て来てしまいました」
アシェル「いや、いい判断だよ」
優「おいおい、一応あそこで切るつもりだったんだぞ」
ルナ「ふふ、仲が良さそうでなによりです」
アシェル「そう、見えるか?」
ルナ「ええ」
アシェル「そうか」




