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FreeDom  作者: ユユキ
真・世界
108/138

優 解放者への道


隔壁の向こうには淡い緑色に発光した電脳の海が広がっていた。

文字通り線引きされているかの如く、隔壁があった場所よりこっち側には流れて来ない。横一直線に静止している。そもそもこの海に流れはない。

手で掬ってみる。どうやら液体ではなく、電脳粒子なようだ。

海へ落としてみる。従来はそのまま天上に昇り気化していくが、逆に海へと落ちていった。

エタとロロはすでにこの場を去っており、その際この海を渡って行けば街がある、と言い置いたわけだが。

 優「これ、沈んだら底なしか?」

 アルル「気合だ」

 優「気合で死にたくないけどな」

 アルル「何でもできる」

 優「他に手もないしな。死なない程度に試すか」

 マルタ「正直、霊子体なら普通に渡れるけどここは風情を重んじようじゃないか」

と、小船に乗った俺と同じぐらい二十五歳前後の女性が言った。

 マルタ「いやー、私のコート似合ってるね」

ちなみに、実はあれ以来ずっと着ていたりする。

 優「へー、製作者か」

 マルタ「今回の解説役マルタです。よろしく」

 優「おう、毎回いるんだな」

 マルタ「それ程君に期待しているということ」

 優「いっそ集まった方がやりやすそうだけどな」

 マルタ「みんなシャイだからね」

 優「まあ、癖はあるな」

試しに海へ足を入れてみると、足は海中に入ることなく地面のように海面を捉えている。

 優「電脳体同士的なことか?」

 マルタ「まあ、そんなところ」

普通に歩けるようだが、折角なので言われた通り小舟に乗り込む。

心のゆとりは大切だ。

すると、小舟は一人でに動き始め海の向こうを目指して行く。

 マルタ「意は決したみたいね」

 優「観てたのか?」

 マルタ「お家芸みたいなものだからね」

 アルル「ふぁんたすてぃっく」

 優「無理矢理台詞挟むと質が落ちるぞ」

 アルル「今までの話、ほとんど関係ないからつい」

 優「そうなのかよ」

 アルル「私は何でも受け入れるのさ。故に、変えることもできないけどね。そして、変わらなければ滅びてしまう。永遠はない、ってやつだね。頼むぜ、相棒」

 優「おう、任せろ」

と、そんなことを言っていると

目の前の海面から黒い球体が這い上がってきた。ちなみに、この海ではその際の衝撃で波立つことはないようだ。

大きさは直径四、五メートル。とりあえず、人間よりでかい。

 マルタ「天敵システム、こっちではクロ助、ここでは黒。意味は何の捻りもなくそのまま」

 優「俗に言うしゃべらない敵か」

 アルル「後人間じゃない、ね」

 優「確かに、そこが一番重要だな。最近は時々しゃべったりもするしな」

 アルル「ロクなこと言わないけどね、人間最高」

 優「まあ、天敵だからな」

 マルタ「コンセプトは平和ボケ防止、文明の向上」

 優「戦争でどうたらこうたらってやつか」

 アルル「うわー、微妙そう文明」

 マルタ「実際向こう側とあまり変わらなかったから、確かに微妙だったね。平和ボケ、つまり変化をつけるぐらいには期待していたけど、それもマンネリ化してしまえば成果はない。やっぱり環境よりも自我が重要ね。ちなみに、その天敵システム自体今では用を成していないけど。その原因というか、要因がこの先にいるわ」

 優「こっちには攻撃してこないのか?」

 マルタ「こっち側の街は大きいのが一つだけ。そこに向かって攻撃する。そういう物よ」

と、いうことなので余計なことはせず付いて行くと

十八歳前後の男が海上で待ち構えていた。

手には一本の機械でできた剣、海上に立てているということは霊子体だろう。

 エド『先生、今日もさくっといきましょうか』

 アシェル「そうだね。一体だけとはいえ油断は禁物だけど」

あの剣は王剣の類ではなく、懐かしの完全AIらしい。

 アルル「そういえば、二回目の時台詞なかったね」

 優「ユイ、か。桜が下手にカンフーにハマったからな。いや、それでも見事な背中語りだったよ。しゃべらないのが究極系だからな。今もこうして、俺の心に刻まれている」

 マルタ「なんか無理矢理っぽくない?」

 優「そうでもないさ」

 マルタ「そう。深いね、精神は」

戦闘はあっけなく終わった。クロ助から伸びた触手をかい潜り、剣で一刀両断。

 優「漫画みたいに綺麗に決まったな」

 アルタ「二百年のキャリアは伊達じゃない、ということね」

 優「それは伊達じゃなさそうだな。ていうか、そうなるとおまえらの方は何歳になるんだ?」

 マルタ「いろいろ面倒だから秘密で」

 優「そうか、そいうことならこれ以上深入りしないでおこう」

 アシェル「ええと、とりあえずお久しぶりです」

 エド『おお、大先生じゃないっすか』

 マルタ「かなりお待たせしたけど、この人が解放者。いや、人達かな」

 アルル「ここは私にもローブ造ってもらわないと締まりませんぜ」

 マルタ「そうね、考えておく」

 エド『先生的にはどうなんっすか?この二百年に終止符打つってことでしょ?』

 アシェル「僕がいなくなった時のことを考えるとね」

 エド『そこっすか。先生はお優しい』

 アシェル「どちらかというと役割、仕事みたいなものだけどね」

 エド『それでも立派ですよ。命のやり取りを抜いても、俺からしてみれば拷問みたいなものっす』

 アシェル「付き合わせて悪いね」

 エド『俺はいいんっすよ。先生と一緒なら』

 マルタ「仲良くしているようで何よりね。ここでネタばらししておくと、エドは私が造って王剣の試作品だったりする」

 優「マジでか、類じゃないって言ったばかりなのに」

 マルタ「世界は広いようで狭い。どちらがいいかは人それぞれね。広過ぎても把握できなくてつまらないし。じゃ、行きましょうか」


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