愛憎 6
引き続き、夜宵のマンション。飛鳥はすでにこの場を去っている。
そして夜宵はかなり弱っているが、なんとかソファーに座り元の手を繋いだ状態を維持している。
が、もはやこの手を解くことは容易だ。
ロコ「『愛憎』、パートナーに依存し他を廃することで自我を保つ。いや、他を廃する行為がそのままコミュニケーションに繋がっているのか。しかし、人の精神も捻れたものだ。昔から変わらない原型に基づいた安いヒューマニズム。いわゆる、一般的な道徳心だな。と、思っていたが少し了見を改める必要があるようだ。まだ発展途上とはいえ、確実に進化はしているようだ。つまり、そのコミュニケーションも間違いではないということだ。批判されるのは自分に害が及ぶからだろうな。おっと、捻れたというのも訂正しておこう。どちらかというと、未熟だな。この言葉だけだと淡白に聞こえてしまうか。まあ、熟す見込みがあるのはいいことだ、でまとめておこう。しかし、一般人とこちら側で差があるのは確実だ。違いは用意された世界か否かだな。用意された世界、もはや生き方から精神構造まで。まったく、お節介なことだ。今はその世界しかないからな。自ずとそれ以外は用意されていない真っ更な新世界になるわけだ。何も考えずに生きるのが幸せか、思考を常に働かせるのが幸せか。ちなみに、わたしの好みは後者だ」
優「とりあえず、解説ご苦労さん」
飛鳥が割った大窓から現れたのはロコとアルルだ。
アルル「長話キャラ取られたね」
優「もういっそ譲る」
ロコ「で、それが君のキャラということか。『解放者』には二種類いる。する者とさせる者だ。君はどうやら後者のようだ。これは中々貴重な人材だ。人間やはり自分勝手だからな。見てくれだけで言えば、わたしと蘇芳もそう見えるかもしれないが本質は違う。今は仕方なく、だ。さすがに全てを壊すわけにはいかないからな。君のような者が出て来てくれて素直に嬉しいよ。敬意を評してこれをあげよう」
ロコが錬成したのは白色のローブ。羽織るタイプでフードはない。背中部分にはローブにちょうどいい大きさの電脳印が刻まれている。
ロコ「『白夢』一度真っさらにし、また一から夢を描き直す。人間やり直せる、というところか。そんな感じのコンセプトだ。ついでにいろいろな機能も付いているらしいぞ」
ローブを受け取ると、ローブは電脳粒子の光の粒となり俺の体に吸収されていった。
これでいつでも錬成できる、ということらしい。
優「また蘇芳作か?」
ロコ「いや、別の者だ。そろそろわたしは失礼するよ」
優「なんだ、気になるな」
ロコは返答を控え、この場を後にする。ちなみに、大窓から出て行った。
話しの間に夜宵はもうすでに事切れている。が、手は俺の意志で繋いだままだ。
優「そういうことにやっと決まったわけだが、おまえはどうする?」
アルル「結局、優男ってこと?」
優「『解放者』らしいぞ」
アルル「それならよろし」
優「そうなのか?」
アルル「押し付けがましいのは、ね。フリーダムだよフリーダム」
優「確か俺はそっちよりだったか。それなら、問題なく自由を謳歌できるな」
アルル「おう、それはいいことだ。私も考える派だからね」
優「夜宵はどっちに惚れたんだろうな」
アルル「自由人の方じゃない?それが優なわけだし」
優「それもそうだな。じゃ、誠意として期待に応えるとするか」




