愛憎 5
大窓が割れる。そして、そこから現れたのは飛鳥だ。電脳の翼はもうないが、機械で造られた剣『王剣』を携えている。
優「ああ、わかった。前の反省点を生かして俺に協力しに来たんだな。おまえも今や王だからな。話術は割りと必須なんじゃないか?」
飛鳥「残念ながら反省はしていません。あれはあれでよかった、の方を取らせていただきました。いえ、もはやそんなことも言いません。私がそうしたいからです」
優「それはそれで自由なんだろうが、元に戻ったと思ったらまた変にやさぐれたな」
飛鳥「あなたは眩しいぐらい変わりませんね」
優「そう思うなら見習ってほしいものだな。その一歩として俺と一緒に説得してみるのはどうだ?」
飛鳥「一緒に、ですか?」
優「嬉しいだろ?ここは素直になっとこうぜ」
飛鳥「そうですね、素直が一番です」
飛鳥の王剣が銃に変形する。
銃口が狙うのは実はさっきから「殺さなきゃ」と連呼し続けている夜宵。
引き金は躊躇なく引かれる。
そして、そのレーザーに撃たれたのは俺だ。
夜宵はあっさり俺の手を離しこの場を離れ、すでに臨戦態勢に入っている。
どうやら、戦闘能力は俺より上らしい。
優「なんか俺、どんどん下にいってないか」
飛鳥「いつまでもそんなことをしていたら乗り遅れる、ということです」
優「いや、俺は大器晩成だ。人生急いでもいいことないぞ。むしろ、ゆっくりしていた方がいいことあるかもな」
飛鳥「私達一般人には荷が重い生き方です」
優「まだ言ってるのか。それこそ乗り遅れるぞ」
様子を伺っていた夜宵が動く。
見を低くし、飛鳥に突っ込んで行く。
その身のこなしは、とりあえず俺以上だ。飛鳥が対応する前に夜宵は王剣(今は銃)が握られている水平状態の右手をそのまま右手で掴む。
しかし、それ自体に意味はない。たまたま利き手だからだろう。重要なのは触れることだ。
つまり、それが夜宵の能力の発動条件。
飛鳥は夜宵の能力で身動きがとれなくなる。
ちなみに、指一本完璧に動かなくなる。
そして夜宵は飛鳥の腹部をひたすらナイフで突き刺す。ナイフの出所はその辺。電脳印は使えなくなったが、そもそも似たような機能があるようだ。俺の印はただのおしゃれアイテムになったらしい。
飛鳥は防御のイメージでひたすら弾いている。が、このままではジリ貧だろう。
優「助けてやろうか?」
飛鳥「その必要はありません」
と、言ったそばから夜宵の動きが止まる。
そして、飛鳥は右手の王剣を一度消し左手に銃のまま再び錬成。左肘を曲げ銃口を夜宵に向ける。
飛鳥「まずは例の能力で私にかかっている効果を封印。そして動けないのは夜宵の能力を私が真似たからです」
優「さらっと言ったが、後者すご過ぎないか」
飛鳥「意外にそういう才能があったみたいですね。さすがに自分でもびっくりです」
優「もうそれ一般人じゃないだろ。と、いうことでもう少し余裕を持ってみようぜ。ゆとりは大事だろ?」
飛鳥は返答せず、代わりに銃を夜宵に撃ちまくる。
しばらくは持ち堪えたが、すぐに夜宵の身体が吹き飛び始める。
優「そうなると、俺が相手しないとな」
とりあえず後ろから肩を掴み、夜宵を飛鳥から引き剥かす。
第三者には干渉しないようだ。難なく引き剥がすことに成功した。
飛鳥「相変わらずですね」
優「結局、このままでいくことにしてな。俺は乗り遅れてもゆっくりいくよ」
飛鳥「強いですね」
優「おまえはいつもそれだな。そう思うなら見習ったらどうだ?」
飛鳥「結局、私はあなたのようには生きられないようです」
飛鳥が俺の身体越しに(視界に入っていなくても霊子体のレーダー能力で位置がわかる)狙いをつけようとするのが右目に伝わる。
飛鳥の動作が終わる前にその右手を刀で切り落とす。
その次も、その次も。
結果としては先手だが、ある意味カウンターみたいなものだ。飛鳥の行動を悉く封じる。
飛鳥「なるほど、あなたらしい詰めの甘い能力です」
優「甘いのかよ」
飛鳥「激甘ですね」
飛鳥がまた行動を起こす。ちなみに、王剣は最初切り落とした時に消えので飛鳥は素手だ。
そして、例によってその前に刀で切り落とす。
と、同時に飛鳥は俺の左肩を左手で掴む。
優「いわゆるカウンター返しといったところか。カウンターということは、ある意味される側も攻撃が読めている。確かに、詰めが足りなかったようだな」
飛鳥「相変わらず嫌味なぐらい冷静ですね」
優「いっそのこと、俺のモットーにでもするか」
と、今まで大人しかった夜宵が俺の隣に立つ。
飛鳥「それなりには愛している、ということですか。その誠意には応えましょう」
優「最初からそのつもりだったんだろ?」
飛鳥「こんな時にもですか」
優「今の俺にはこれぐらいしかないみたいだからな。と、いうわけで考え直せ」
飛鳥「勘違いしているようですけど、この子の為でもあるんですよ?それを言い訳にする気はありませんが、少し無責任だと思います」
優「そんなに凝り固まったものでもないだろ。割りといいかげんだからな、人間は。意志の強さが強さなら、むしろ一般人にとっては得意分野だろ?短所ばかり見てないで、長所も見ないとな」
飛鳥「まったく、確かに口では負けますね」
飛鳥は夜宵の脇腹を撃つ。
夜宵は霊子体だが、その身体が再生することはない。
優「えげつない能力だな」
飛鳥「恨み言ぐらい言ってもいいですよ」
優「まあ、お互い受け入れるとしよう。いろいろとな」
飛鳥「そうですね、相容れることはないですけど」




