愛憎 3
一般的な二階建てのマンション。おそらく夜宵の家だろう。名前はもう知っているということで。ちなみに、この世界に一軒家はないようだ。土地の有効活用、こうしないと死活問題なのだろうが自由を愛する者としては寂しいところだ。
その一般的なリビング。両親は今のところ見ていない。
大窓の前でカーテンも全開だが、五階なので変態さんぐらいしか今の様子は伺えないだろう。
で、今の状態は二人仲良く手を繋いでソファーに座っているところだ。
間に人一人分ぐらいの距離が開いている。意外に奥ゆかしいようだ。
優「このまま二人で暮らすのもつまらないぞ。そんなに言うなら一緒に来ればいいしな。賑やかなのは歓迎するが、逆にこういうのは遠慮したいところだ」
夜宵「……」
と、いう風に何度か話しかけてみたが返答はない。無表情だ。
が、手は頑なに離したくないようだ。
優「さすがにずっとこのままは、な。今のが妥協線だ。特に問題はないと思うが、要望があるなら遠慮せず言っていいぞ」
夜宵「……」
優「何も要望はないってことか?じゃあ、意地を張らずに一度やってみたらどうだ?気に食わないなら後で直せばいいし。ゲームみたいに勝ち負けはないんだ、もっと自由にいこうぜ」
夜宵「……」
優「頑なだな。とりあえず、アルルのところに戻るか」
と、無理矢理立ち上がろうとしたが体が動かない。
優「便利な能力持ってるな。殺意がないのが不幸中の幸いか。おっと、つい本音が。このままだと、少なくとも俺は不幸だな」
と、罪悪感を煽ってみたが駄目なようだ。
とりあえず修行と割り切って、この能力を打ち消すことをイメージすることにした。




