序章
ここはとある施設の地下射撃場。銃は練習用とかではなく、電脳粒子を結合した電脳武器。弾は無制限、この世界の常識だ。後は横におっさんがいるだけで誰もいない。
が、上ではかなり激しく銃撃戦が繰り広げられているようだ。先から火薬の音がBGMとしてこの部屋に鳴り続けている。ちなみに、電脳製だからと言って性能が変わるわけではない。仕組みまでそっくりそのまま再現される。
優「まさか助けに行く、とかいう話か?」
隣のおっさんこと蘇芳にそう尋ねると、返事の代わりに、この部屋に設置されている脱出用のエレベーターへ向かう。
蘇芳「おまえも来るか?」
優「『蛇』には入らないよ」
蘇芳「そうか。割と気に入っていたが、データはもう取れたからこだわる気はない。結果を一応伝えておいてやると、量産性に欠けるが仕上がりは完璧だな。これなら副作用もないだろ。まさに、さすが俺、というやつだな」
優「若干、死にかけたということか。助かってよかったよ。それはそうと、せめて撤退命令ぐらい出していけよ」
蘇芳「そこは自分で決めろというやつだ。それが『蛇』のコンセプトでもあるしな。来る者は拒まず、去る者は追わない。少なくとも俺は、勝手に来た奴の面倒まで見る気はないな。じゃ、そういうことで」
エレベーターの扉が閉まる。蘇芳の表情はいつも通り、もうこの場のことは考えていないようだ。冷たいというよりは、さっぱりしているというべきか。
そこでタイミング良く来客者が来たようだ。階段の方に目を移す。そしてすぐに目を逸らす。二度見で確認したいが残念ながら俺にその勇気はない。
リオ「そう、私はノーパンだ」
優「そうか、変態か」
リオ「チッチッチッ、女の子は変態にならないのだよ」
年齢は二十代前半ぐらいか。ノーパンの癖にというのもあれだが、スカートでそれなりに短い。少なくとも、隠す気はないらしい。ちなみに、俺は約十八歳だ。育ち盛りの青少年なわけだが、そういう意味で目を逸らしたのではないことをここで断言しておこう。敢えて言うなら、やはり変態だ。その変態が階段を降りてくれたので、正面で向かい合う。
リオ「と、いうのは冗談で自由を体現しているのだよ、私は」
優「まあ、邪魔はしないよ。じゃ、俺はこれで」
リオ「まあまあまあ、だいたいわかるだろ?」
優「それなら直接来てもよかったのに。蘇芳の性格なら止めないだろうし」
リオ「殺す必要はなかったと、名前通り優しいのね」
優「いや、単純に必要ないという話だ。その方が効率もいいだろ?」
リオ「でも面白味がないのよね。ああ、それ以前に殺してないけどね。今の麻酔弾は良く出来ているから、技術の進歩に感謝だね。それとシオンにも。そして依頼主は凪。これで納得してくれるかな。少なくとも、凪の所まではお付き合い願いたいわね」
優「あいつも中々子離れできないな」