缶蹴り
続けて読んで下さる方々に感謝です。
「アンタ、何やってんの」
「――受け身の練習中だから、放っといて頂戴」
頭抱えて悶えてんのよ、察してください。
「へぇ、それってあれでしょ?」
明らか面白がっている友人は携帯を覗きこむ。
「誰も、見てとは言ってない」
「見るな、とも言ってないよね」
簡単にいえば、突然震えだした携帯が原因だった。
「お誘いなんて、隅に置けないわねぇ」
隣りのベンチに腰掛け、こちらを覗きこむ。
「何?コイツ、片思いしてるんだ?」
彼女がメールだけで判断できるのは予想の範囲内だ。
「えらく、自分に自信がないのね」
文章からでも読み取れるように、やはり学内の彼は演技なのだろう。
自分が言えたことではないが。
「で、兎ちゃんはなんて返事する気?」
何でこんなことに、と叫び出したい気持ちでいっぱいである。
見事に蹴り飛ばされた……缶蹴りかのように、思いっきり。
拾いに行くアタシは鬼で、待つ彼は……何だろう。
「来てくれてありがとう」
人に囲まれたあの人と違う顔をするこの人は確かに甲崎本人なのだろう。
「……いや、御礼を言われることでは」
嬉しそうに話す彼には申し訳ないのだが、了解メールを送ったのは友人なのである。
「どういう経緯があったとしても、キミと一緒に話ができることが嬉しいんだよ」
見透かされているのかとも思える発言に顔を上げた。
「やっと、眼を合わせてくれた」
ふわりと笑う穏やかな人、笑顔を見たのは初めてかもしれない。
いつも、青い顔でいるイメージのその人が微笑んだ。
「甲崎くん、笑った方がいいよ」
こんなにも、温かく笑うことができるなら、
「無理をしなくても、そのままの甲崎くんで、あの中で笑っていられるよ」
周りを賑わす、ムードメーカーではないかもしれないけど。
思わず吐いた言葉に誰よりも自分に驚く。
「……余計なこと、
虚をつかれたかのように固まった様子に訂正を入れようとする。
「余計なことなんかじゃない。ただ、そんなこと初めて言われたな、って」
今度は照れが混じるような表情で笑う。
わりと、表情豊かな人らしい。
「僕さ、君といると新しい自分に出会える気がするんだよ」
「気弱なだけの僕が優しくなれる気がするんだ」
えらく、自信がないのね――友人の声が蘇る。
この人は、そうなんだ。
「違うわ」
「え?」
「貴方は確かに気弱かもしれない。たとえ、そうであったとしても優しい。それは、アタシがそうさせてるんじゃないの。それが、貴方自身だから、できるの」
だから、もっと自信を持つべきだよ。
「楽に、無理せずって意外に難しいものだから、迷うことも多いと思う」
私だって、いつも自分の思うままに出来る訳でもない。
「でも、そんな風に笑えることが増えたら、いいね」
彼女が、僕の前で笑う。
あまり、笑わない彼女が、笑った。
初めて、僕に向けて笑ってくれた。
「そうだね」
たったそれだけ、でもふわりと凝り固まったものが解れる感覚。
そんな温かさに背中を押されて、言わなくてはならないと息を吸う。
その為に、今日は告白後話すことも戸惑っていたにもかかわらず踏み出したのだ。
「あの、さ」
「アンタ、降りる駅ここじゃねぇの?」
はい、残念なことに邪魔が入りました。
貴方の想像している方で間違いないと思います。
不憫な、と思いつつ、ここで切らせて頂きます。
まだまだ拙い文章ですが……次回も、ぜひ覗いてくださいね。