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そう、それでいい



週末は女性二人と式の準備の甲斐もあって、大方の決め事は終わりつつある。

千鳥さんは不参加と言うこともあり、余裕も出てきた今日は早めに式場を出て、式場が見える喫茶店に入った。


「私ね、言わなくちゃって、思ってたことがあるの」


ほわんとした印象の陽子さんの声が少し硬いことに気付いて身構える。

幸せの絶頂期な筈なのに、そんな顔をさせるなんて何があるんだろう。

……マリッジブルー、とか?

そんな話をされても受け答えはできないけど!


「最初はね、嫉妬してたの」


切り出された言葉が理解できなかった。

「嫉妬、ですか?」

顔にも声にも、困惑の色がありありと出たのが自分でも分かる。

「誰が、誰に、ですか?」

困ったように、形の良い眉を八の字に下げている、陽子さん。

それでも、頬は色づいて、口元は和らいでいて。

「私が、兎ちゃんに」

何より、眼の中に暖かな光が灯っている。

頭の裏に過ったようなことは無い筈だ。

カップを持ち上げ、中身を啜る。

「……今は、嫉妬する間も無いくらいに幸せなんですね」

龍兄がそんな状況をそのままにしておくとは考えられない。

何だかんだといってもぶっ飛んだ思考を持つ両家族の手綱を握るのは龍兄である。

そして、私達は彼に勝てた試しがない。

力は勿論、言葉でも言い包められてしまう。

「そうね、幸せだわ」

「それなら良かったです」

何かと張り合っていた虎も信頼感情はあったと思う。

素直に認めはしないだろうけど。


「で、龍兄にどんな話を持ちかけられたか聞いても?」


けれど、私達を舐められても困る。



「あ、そっちも駄目だった?」

帰りの列車の中で兎との話を陽子は申し訳なさそうに話す内容にまたかと笑った。

「この前、虎に断られた時に予想はしてたんだよなぁ」

―――アイツ等、似てるからさ。


「誰が頼むか」

そう言って視線を上げた時には、らしい顔があった。

兄である俺に懐くことはなく、それどころか敵愾心を燃やすばかり。

可愛くない、何度思ったことか。

それが通常、元気な証拠。

「そんなことするくらいなら玉砕覚悟で行動するっつうの」


常々、可愛くない弟だ。

昔から兄の俺には敵愾心燃やして、兎だもんな。

そう、お前はそれでいいんだよ。




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