おやすみ
駅前で座り込む私を横目にまばらな人混みは動き続ける。
パーカーで防寒対策はばっちりな筈なのに震えは止まらない。
駅員の家出少女扱いに笑いながら心は大きく動揺する。
「あの子も大きくなったってことなのかしらね」
22時を過ぎても帰ってこない虎におばさんはそこまで心配の色を見せない。
「どこに居るの」
今、誰といるの。
街中で見かけた後姿に向かって人混みを掻き分けながら進む。
たった一瞬、見えた。
「そっか、……そういうこと」
同じ年頃の女の子の嬉しそうな横顔が隣を見上げるのを見てしまった。
人混みは視界から消え去って、見えているのは二人だけ。
言葉では理解していたつもりだ。
ずっと、一緒に居るなんて無理だと知っていた。
幼い約束だと、笑っていたではないか。
「あの約束を信じていたかったのは、私だったの」
聞き間違えることなど無い、その声が私を呼ぶ声で意識が浮上する。
ジーパンに着いた染みを見せないように少しだけ顔を上げる。
「帰ろうか、虎」
そう言いながら、置き去りにされた自分を誤魔化す。
差し出された手を無いものとして扱うのもそう。
思った以上に子供だった自分に呆れているんだ。
その手を取ったら、言ってしまう。
「怒ってないよ」
「虎も、もう、子供じゃないでしょう?」
守らなければならなかった、小さなあの子はもういない。
「もう遅いから」
何もかも、気付くのが遅かった。
「おやすみ」
それなら、もう一度眠らせてしまおう。
口約束も二人を見た時の痛みと共に。
勘違い発生です。