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閑話休題2

とうとう10話を超えました。

読み続けてくださっている方、ありがとうございます。

これは本編の陽子さん視点となっています。

閑話休題にはなっていますが、本編に入っていても問題ないとも思うので読んで頂けたら嬉しいです。




 「そんなに不安なら、会ってみるか?」


 龍さんにプロポーズされたのは半年前。

 結婚式の準備も着々と進む中、義弟となる虎君とセットで話に上がる『兎ちゃん』。

 私はその子が羨ましかったのかもしれない。

 その子の名前が上がる度、不安になるのだ。

 龍さんに似合いの人は私ではないのではないか、と。


 顔に出したことは無いつもりだったのに、いつ知れてしまったのか。

 恥ずかしい思いで一杯で、断ろうとしたのに。

 「陽子の可愛い嫉妬見せてもらっちゃったからな」

 なんて、からかいながら、

 「陽子によそ見されるのもアレだし、妹分の兎にも俺の嫁さんをお披露目しとこうか」

 抱きしめてくれる。

 今更その腕を手放すことができないのだけど、マリッジブルーかしら。

 広い背中に手を回しながら、頭の中はやっぱり、不安だった。


 龍さんのご両親にはすでに顔合わせを終えていたけれど、弟の虎君には初めて会うことになっている。

 一応、婚約者がいるということは事前に話して貰っているから一から話す必要は無いのだけど。

 「こんなおばさんだって知ったら、どう思うかしら」

 実は、私は龍さんの4つ上の28歳。

 これも不安を煽るひとつの原因。

 今更、乙女を気取るつもりは無いけれど、気になるものは気になる。

 女はいつまでも綺麗だって思われたいものじゃないかしら。

 そんなことを言ったら、また、笑われた。

 「そんなの、虎はどうこう言うようなことしないさ」

 太陽みたいな笑顔に惹かれたのだけど、今はそんな笑顔も眩しすぎる。


 移動は新幹線と電車。

 隣り合う県だから車でも良かったのだけれど、一泊して次の日はお互いに仕事だからって話し合いをした。

 出発時間が結構遅かったから、車だったら帰宅ラッシュに巻き込まれていたかもしれない。

 午後5時、電車の中を席を探して歩いている時だった。

 「あれが兎だよ」

 二人分空いた席を見つけ、声をかけようとした時だった。

 視線を追いかけると、肩を過ぎたあたりまでのストレートの黒髪の少女がいた。

 外の景色でも見ているのか、遠くを見ている姿はどこか儚くて。

 「降りた後にでも声かけて一緒に帰るか」

 あまり、話した内容を覚えてはいない。


 「次、降りるぞ?」

 覗きこまれて、慌てて返事をする。

 「あら?」

 先程から様子の変わらない彼女を見て、疑問に思う。

 大丈夫かしら、あの子。

 遠くを見ているというよりは上の空で何も見えていないような気がする。

 「龍さん、兎ちゃんに声かけて降りた方がいいかもしれないわ」

 身支度をして、人の多い車両を龍さんが掻き分けていく。

 下車する様子の無い彼女の手を引き、降り立つ。

 名前を呼ばれてようやく意識が浮上したらしく、驚いているようだった。

 「ちょっと、実家に挨拶しに、な」

 さらに、眼を見開いて、数回瞬きをする。

 やっぱり、私なんかよりという感情がこみ上げる。

 「おめでとう!!」

 そんな薄暗い感情が吹き飛ぶ程の笑顔で祝福された。

 きゅ、と力がこもった手を優しく包まれる感触にほっとする。


 「さっきは、おめでとう何て言っちゃったけど。陽子さん、ホントに龍兄何かでいいの?」

 既に、疑惑が晴れた今となっては疑うことも無くて、笑うことができた。

 じゃれあう二人は、本当の兄妹のようで。

 「聞いていた通りだわ」

 「だろう?」

 繋がれた手にきゅ、と力が込められて、私も思いを込めて、握り返す。

 あぁ幸せってこういうものなんじゃないかなんて思った。

 

 「結婚式には絶対呼んでよね?」

 光り輝く表情が本当に祝福してくれていることを確信させる。

 隣で、照れたような笑みを浮かべる人が愛しくて、身を寄せる。

 きっと、彼女にはちゃんと伝わったと思う。



 「お帰り」

 意外にも出迎えてくれたのは弟さんの虎君だった。

 「はじめまして。龍の弟の虎です」

 お話は両親に聞いています、と丁寧に始められて慌てて背筋を伸ばす。

 「で、ホントにウチの馬鹿兄貴でいいんですか?」

 さっき、兎ちゃんに聞かれたこととほとんど変わらない質問に思わず噴き出す。

 「虎にしても兎にしても、何でそんなこと言うんだろな……」

 ぼそっと呟くその声を聞いて、笑いが止まらない。

 落ち着かせてから、はっきり答える。

 「私は、龍さんがいいんです」

 今更、この人を手放すことは無理というものだ。


 あとで、二人きりになった時に聞いたことだが。

 虎君は兎ちゃんのことが好きで、よく龍さんに一方的に張り合っていたらしい。

 『俺が兎のことを好きだなんて言った日には一生口きいてくれないと思うぞ』

 なんて、冗談半分に言っていた。

 年の差はほぼ、5歳。

 大人びた言葉の中に年相応の顔がのぞくのは兎ちゃんとの年の差を気にしてのことかもしれない。

 

 私に似た、未来の義弟の為に何かしてあげたい、なんてちょっとお節介かしら。




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