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黒点  作者: フィア
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8章 轟くは雷鳴の――

 背中に感じる狂気が、刺さるように痛い。

 そこにいる生き物全てが、僕らの敵なのだ。

 空気まで僕らを狙っているようで、こっちの気が狂いそうだ。


「何でだ!?何であいつら入って来れたんだ!?」

「そんなの後でいいわ!今重要なのは…」

「あいつらをどうやって倒すか、だね」


 僕が言うと、キイは頷いた。


「そうね。逃げるなんて論外よ。相手には犬もいるし」


 後ろのドーベルマンざっと4体を睨みつけながら、僕らは作戦を立てる。

 食堂のテーブルとテーブルの間を走り抜けながら、ハレ君は聞いた。


「どうする?」

「……担当を、決めようか…」

『担当?』


 僕の作戦はこうだ。

 まず、潰しておく必要があるのは犬だ。

 速いし、数も多い。

 しかし、キューバボアも放って置いたら危ない。

 致死性の毒をもっているし、あの巨体だ。打撃を喰らったらひとたまりもないかもしれない。

 つまるところ、どちらとも危険なのだ。

 だから…。


「全部、一度に相手をしよう。その為の担当」

「相手に出来るか?あんなにいっぱい」

「アカ達は、たぶんこっちまで戻ってくると思う。だから、それまで足止めを……できれば、殺しておこう」

「……戻ってくるのか?」

「必ず、ね。問題は時間よ」

「弾も無駄遣いできないな…」


 そういって銃を構えるハレ君。

 僕も、自分の得物を固く握る。


「ドーベルマンは、キイとハレ君にまかしてもいいかな?」

『え゛。』

「あ、やっぱマズイ?」

「いや、そうじゃなくて…」

「アンタ、一人で蛇の相手をするの?」


 そりゃ、そうなりますな。

 僕がしれっとした顔で頷くと、キイは頭を抱えた。


「アンタって、いつもそうよね……。自分から危険な場所へ飛び込んでいくの。他の人には楽な事させて」

「いや、そんな事ないと思うけど……。ドーベルマンの相手だって大変だよ?」

「あーもう!そうじゃなくて…」

「……なんか俺、クロっていう人間を完璧に理解できた気がする」


 二人とも、僕に残念そうな視線を送ってきた。

 な、何その「この子世渡り大変そうだなぁ~」みたいなカンジの空気。

 そんな天然だったのか、僕………?


 急遽発覚した自分の性格に悶々と頭を抱えていると、背中に衝撃が走った。

 あの化け物共、もう追いついたのか……!?

 だけど、違った。

 ただキイが大きく平手打ちをしただけだった。

 よろよろと、足がふらつく。

 それほど、痛かった。

 ……マジで、あいつらにちょっと近づいて気がする。


「な、何だよ………?」

「アンタのその性格は、もうどうしようもないわね……」

「はぁ!?」

「いいわ、頑張りなさい。………無理だとこっちが判断したら、嫌でも私と交代よ。いいわね!?」

「まぁ、はぁ…」


 何でそんなに心配してくれるんだろう、彼女は。

 後でなんかおごらされるのだろうか?

 そう思って、その旨を伝えると、彼女はフフっとらしくもない笑い方をした。


「それも、いいかもね……」

「え、ほんとに奢るの、僕?」

「私だけじゃないわよ、全員よ。ハレ君にも、シロにも、アカにも、ミドリにも、ムラサキにも。全員に奢るの」


 ひょえーーーー!と、間抜けな声が食堂に響く。

 ……僕、今月パソコンを自宅に買って、あまりお金ないんだけど!

 横を走るハレ君に助けて信号を送る。もう僕の経済状況は破綻寸前です!

 だけど、ハレ君は…。


「なぁ、何奢ってもらおうか?」


 てめええええええええええええ!


 後ろの軍勢は、徐々に僕達との距離を近づけてくる。

 だけど、そんなのはお構いなしに|(ある意味意図的に気にしてないのかも)、彼らは話を続けた。


「じゃあ、奢ってもらうのはねぇー…親子丼!」

「は?」

「……キイの好物、だけど……それ……」

「ええそうよ?商店街の一角に存在する「parent and child」の幻の一品、「究極親子丼DX」7800円」

「鬼か!」

「じゃあ、そういうことで」


 キイは小悪魔的な笑みを浮かべ、最後にこう言った。



「じゃあ、生きて合流しましょ」



「……………『それがキイの最後の言葉になるなんて、僕は思いもしなかったのである』…」

「フラグ立てるな」


 拳銃突きつけられた。怖ええ。


 ……さて、そろそろ遊んでもいられない。

 おっぱじめるとしますか。


「じゃあ、二人とも…気をつけてね」

『そっちこそ』


 二人の笑顔を見て、僕は決心がついた。

 まだいくらか恐怖はある。

 が、僕には仲間がいるから。

 大丈夫だろう。

 ……何クサい事言ってるのだろう僕は。


「……いいか、たまには」


 僕は蛇と犬という不思議な集団の中に突っ込む。

 まず、犬が噛み付いてくるが、それを軽くかわす。

 かわす。かわす。

 最後の一匹は、避けられない位置に飛んできたので。


 そのまま後ろに吹っ飛ばした。


 そして、目の前の蛇の胴を。

 野球のスイングよろしく。

 ぶん殴る。


 KISHAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA


 警棒が微振動を響かす中、それに共鳴するように蛇が掠れた声を響かした。


「キミの相手は、僕だよ」


 おお、言ってみたらなんと中二臭い事か。

 と、言ってる合間に犬が近づいてきた。

 反応しようと振り返ると、銃声。

 4発ほど聞こえた。

 それは全犬に命中したらしい。


「アンタらの相手は私達よ!」


 そういって銃を構える二人。

 ………………………。

 背中は、任していいみたいだね。

 じゃあ、頼んだよ。

 そして、僕らは。

 二手に分かれた。


 勝つためじゃない。

 生き残るために。




 ☆=======




 ――SIDE  『KURO』――



「さて、どうしましょうかね。こいつ」


 睨みあう蛇と人間。傍から見ればさぞシュールな事だろう。

 僕とコイツは食堂のど真ん中、両サイドに長いテーブルを挟んで相対している。

 キイとハレ君は入り口周辺、ここから20メートルほど離れた位置でわんこ達と向き合っている。

 …僕もこいつを片付けて、そっちの手伝いをしなければ。


 と、言いたいのだが。


「……死角ないのは、きついなぁ…」


 そう、奴の体中には鱗という鱗の間に赤外線を感知するビット器官が備わっている。

 後ろから頭を狙おうとしてもばれてしまうだろう。

 それに加えて、例のウィルス。

 もしライオンの時のように肉体強化を遂げているのなら、こっちも死ぬ気でやるしかない。


「おっと」


 毒を吐いてきたので、軽くバックステップを取る。

 今までつっ立っていた石製の床は瞬く間に溶けた。

 こ、これは喰らったら即お陀仏だね…。

 冷や汗の量が、異常に増える。

 これと戦うの、僕?


「電池残量がどれだけ持つことやら」


 僕は手元の棒を見つめる。

 実の父の形見。

 父さんだったら、どうするのだろう?

 こういう、絶対的ピンチに陥ったら。


 ……………簡単だ。

「やれるだけやる」

 それが父さんの口癖だった。

「やれるだけの事をして、やれなかったら誰かに頼れ。なーに、お前がいい人間なら自然と手を差し伸べてくれる奴が現れるさ」

 そんなわけで僕も。



「やれる事をやるよ」


 警棒のスイッチをOFFからONへ。

 丸いボタンの赤が、青に変わる。


「音声認識システム、起動」

《OK。音声認識システム、起動》


 手元のスピーカーから機械音声が聞こえる。

 僕は声により電気信号をこのハイテクマシンに送り続ける。


「モード:『スピア』、アビリティ:『ライボルト』」

《よろしいですが…、残り電気残量が僅かなので、『ライボルト』ではすぐ機能が終了してしまいますよ?》

「どれくらい起動していられる?」

《6分と27秒》

「なら充分だよ」


 そう言って、槍術の構えを取る。右手を腰へ、左手は軽く肘を伸ばして。

 これから、タイムアタックだ。

 5分以内にケリを付ける。


「『ハルバート』、モード:『スピア』、アビリティ:『ライボルト』、起動」

《OK。音声認識システム、正常。…『ハルバート』、始動!》





 バリバリバリィィィィィィィィィィ!




 電熱による気温上昇と、雷光による光芒の広がりと、雷鳴による轟音が、食堂中を包んだ。

遂に特殊武器を出してしまった。

だけど後悔はしてない。


そろそろVS.キューバボア編は終わると思います。

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