13章 脱落するは友――
第二章開幕!
…すごい。
思わず零れたのは幼稚園児でも口に出来る単純な言葉。
しかしそのたった3つの文字の重みは、子供の物と天と地、いやマントルほど差があった。
目の前で倒れているのは蛇。
彼らは誰一人失う事無く、傷つく事無く、勝利を手にしてみせた。
……どんなに強い武器を持っていても…。
やっぱり僕は…。
「弱い、よ……」
「弱くないよ!」
びっくりして、顔を上げる。
元気な小柄な少女が、僕の前で胸を張っていた。
「ムラサキ…」
「だって、クロが頑張ったから、キイもハレも無事だったんだよ! それはじゅ~……ぶん!
強いって事じゃん!」
「そうだ」
気付けば、僕の周りをみんなが囲んでいた。
「何かに勝利する事が勝利じゃない。
何も失わない事が、勝利なんだ」
アカは続ける。
「だからクロ、俺はお前を怒らなきゃならない。
自分の命を投げるのは、勝利じゃないからだ」
「…………」
「でも、お前は
生きてる。
……それを忘れんなよ」
「……うん」
僕は涙を堪えて、自分の命を救った仲間を見る。
アカ、ムラサキ、ミドリ、キイ、ハレ、全員が僕を見て……。
全員が……僕を……?
「…シロは?」
ここにいる全員で、辺りを見渡す。
散らかった部屋、埃、蛇、瓦礫、シャンデリアの残骸…。
シロは…?
シロはどこだ?
「シロ…!?」
「おい、シロー!!」
反響する声。
だが、声は返ってこない。
代わりに。
通路から、
黒犬が現れた。
『!』
「ドーベルマン!?」
「さっきのよりデカ……っ!」
大きい、という意味の形容詞は、途中で途切れた。
その血ぃ滴る口には。
見覚えのある銃が――――
「あれってシロの…!?」
「おいクロ!!!!」
分からなかった。
ただ、体が動いていた。
自分の脳で制御してた訳じゃない。
12年間、シロと共にしたこの体が。
シロとの思い出が染み付いたこの体が。
叫んでいるようだった。
――一閃。
充電の切れたハルバートで、怪我の痛みも忘れてただ切った。
僕がじゃない、僕の体が。
「どこだよ…!?」
突く。
「おら、どこだ…!?」
潰す。
「どこなんだよ、おいっ!!」
串刺す。
そこで、ドーベルマンは生命活動を終えた。
だが、僕はそれでも刺した。
足元の死体を、ただ刺した。
「シロは…」
粉塵が、完全に止み。
不意に嫌な汗を掻いて、横を見た。
この犬が通ってきた、僕達が走ったあの通路。
そこにはシロがいた。
赤い派手なシャツ。
お洒落なベルトにダメージジーンズ。
腕にはお気に入りのブレスレット。
間違いなく、シロだった。
首はなかっ……。
―――――――ぅぅぅぅぅぅぅぅぁぁぁあああああああああああああわあああああああああああああああ
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
肉片を頭から真っ二つにする。
脳がとろける感覚。
頭蓋を割り終え、俺は全力で倒れているシロに近づく。
いや、シロじゃない。
シロと全く別の人だ。
そうだ。そうだよ。
何を焦ってるんだよ僕は。
シロが死ぬはず……。
な。
無くなかった。
このブレスレットは彼だけの物。
他の誰かが持ってるはずが無い。
なら、コレは誰なんだ?
誰なんだ?
だれなんだ?
だ…れ…?
シロだった。
そう判断せざるを得ない状況と材料は、もう用意されていた。
………。
みんなのバタバタとした足音が聞こえる。
そしてみんなが息を呑んで、叫んで、喚く中。
僕は後ろにいる人物に話しかけた。
「ねぇ、アカ…」
涙は出なかった。
感情がいまだに制御できない。
頭がおかしくなっていた。
「これは勝利?」
「…………」
「みんなが生きてるのが…勝利だよね…?」
「……。
いや、勝利なんて…
初めから…死人が出た時から、無かったのかもな…」
「………」
「でも…」
パリイイイイイン!
「! こんな時にチーター!?」
「くっそ! おい立てクロ!」
「……クロ…?」
シロ。
シロ。
シロシロシロシロシロシロシロシロシロシロシロ…
「ミドリ! 手榴弾準備して!」
「う、うん!」
「ハレ! コイツ運ぶわよ!」
「お、おお!」
――――――。
シロが死んだ。
それしか、頭になかった。
どーも。フィアです。
ちょっと御祓い行ってきました。
正直、このシリーズはあくまでサバイバルとして銘うってます。
誰かが死ぬ事を前提とした物語です。
いまさらですが、正直読んでいられない方はブラウザバックお願いします。