12章 反撃の仲間達――
久々の更新。
久々すぎて何度クロの一人称を「俺」にしてしまいそうになった事か・・・!
僕は、死ぬのか。
そう悟ったのは、目の前が真っ白になったから。
しかし、この白は僕の体力が少ないとか、目の限界が来たとか、そんなものじゃなかった。
これは、れっきとした光景だった。
僕の目の前で映る光景。
なんともまぁ、味気の無い光景だ。
だけど。
この白さは希望だ。
僕の仲間の、心と同じ。
眩しくて、思わず目を細める、光。
キーン…と、高音が止んでいくと、そこには悶える化け物。
そして横には……
「……よぉ」
「…元気そうなツラ、してるね」
「こっちはこっちで大変だったんだぜ?」
何でもいいよ。
僕が思う事は、ただ一つ。
「ありがとう…」
「まだ早い気もするが…まぁいいさ。とにかく」
生きてて良かった。
その言葉は一度死を受け入れた人間としては、皮肉にも感じたし、聞くに堪えなかった。
だが。
素直に、嬉しかった。
また会えた事が。
甲高い金属音が止む。
それに応じて、他の仲間も動く。
「おいシロ! 何ボサっとしてんだ、早くクロを下がらせろ!」
「ミドリー! なんか武器ー貸してー!」
「え、持って来なかったの!?」
「あは、やっぱ武器は剣よねぇー」
「…俺の疎外感が増してるのは言うまでも無いな…ハァ…」
目標は、まずコイツ。
このクソ蛇め…。よくもブン投げたり骨折ったりしてくれたなぁオイ。
僕は立ち上がり、固く握り締めていたハルバートで、体を支える。
が。
「クッ…」
「止めとけ。お前、相当血ぃ出てるし……。それに、左腕も折れてるんだろ?」
「……うん…」
「今は下がっとけ。すぐ終わるから」
クソ……!
肝心なときに役に立てないのか、僕は。
これじゃあまるで…。
「『能無しだよ……!』」
「とか思ってるんでしょー」
「うを!? ふ、2人とも…」
ムラサキとミドリだった。
ずりずりと体をテーブルと壁の間に移動させられる。
「ぐ…おぉ……? ちょ、もうちょっと手柔らかに運んでよ!」
「うるさい」
「NO!?」
ぎゃー! 傷口に、消毒液が直接でぬおおおおおおおおおおお!?
ミドリは大きな肩掛けバッグから、包帯を取り出す。
「包帯巻きますよ。応急処置なので、動いたら出血多量で死にますから、気をつけてくださいね」
「護衛はあたしがやるから!」
「……なんか2人とも、すごくアグレッシブになってない? もっとうろたえたりとか…」
「しませんよ」
ミドリが、はっきり言う。
ムラサキがショットガンを手に周りを警戒する中、僕の体中に包帯を巻きながら彼女は話続ける。
「ロッカーには、いくらか生存者がいました。
共にここから抜けようって、お互いを励ましあったりもしました。
化け物共に襲撃されるまでは」
………そうか。
彼女達も死線を乗り越えて。
その上で、覚悟を決めたんだ。
絶対に助かる、助けるって。
僕は折れてない右腕を伸ばして、彼女の小さな頭を撫でた。
彼女は、何の動きも見せなかった。
いや、見せていた。
僕に顔を見せずに包帯を巻きだした時から、彼女の体は震えていた。
「ごめんね…」
「何で、謝るんですか…」
「……何でかな。その時に傍に居てあげられなかった事に対する謝罪…かな」
「っ!」
「ごめん。ごめんね…」
「………うっ…くっ…んくっ……ずる…っ……」
ミドリは顔を上げなかった。
ただ雫を僕のジーンズに落とすだけだった。
僕はそれを汗と思い込む事にした。
そうでもしなきゃ、今の自分の無力さに僕は自己嫌悪で心臓を潰してしまいそうだった。
―― SIDE 『HARE』 ――
「アイツのああなっちまった具体的な概要はさっき話した通りだ。
たぶん犬の遺伝子情報入っちまってるから、早いし匂いに敏感なハズ」
「隠れたり、っていうのはオイシイ作戦じゃ無いって事か」
私秋山晴は、この中でリーダー格のアカと、作戦を練りながら巨大黒蛇と直接向かい合っております。
今しがたミドリという少女に貰った武器はショットガン。
型はSKB Uplade。
使いやすい銃とは聞いているが、戦闘向きじゃない俺はどうもこういうのは駄目だ。
体術になら自信はあるが、連中には効かなそうだしなぁ…。
因みにアカの武器はマグナム、キイの武器が日本刀、後ろで出入り口を見張っているシロはハンドガン二丁。
どれも本来それぞれが愛用している武器だそうだ。
(愛用ねぇ…)
どうもピンと来ない。
こいつらはただの清掃員とかじゃないのか?
どうしてこうも戦闘能力が高い?
(……考えてもしょうがない、か)
後で聞けばいいか。
どれだけ後になるかは別だが。
「なぁ管理局の司令塔さん」
「ハレでいいよ」
「じゃあ…ハレ。お前なら、アレ、どうやってアイツ潰す?」
「……キツイだろうなぁ…」
俺は想像してしまう。
ここにいる戦力をフルに使って、アイツと立ち向かった光景。
勝算は…。
「――――アレの大量出血、グロくって見てられなかったんだよ…」
「へー。そりゃあ…
ご愁傷様だな」
大いにあった。
☆=======
第一段階。
「やっぱ私にはコレが合ってるの…よね!」
キイによる肉片大幅カット。
GURAAAAAAAAAAAAAAAA!
キイの一振り一振りで黒蛇の複数に増えていた胴は切断されていく。
もちろん反撃が無いわけじゃない。
自身を守るための防衛反応は、あんな姿になった今もしっかり働いていた。
何本とある尾を揺らし必死に抵抗していた。
――――キイはその猛攻を全て避けていた。
おかげで蛇の体の4割は削る事が出来ただろう。
速攻による強攻。
敵の戦力を削ぐのにここまで活躍する一番手はいない。
「うわっ! とっとっと!?」
しかし敵も重りを失えば素早くなる。
2、3本の尾は彼女のドタマを捕捉していた。
「シロ!」
「おっけー! だ!」
第二段階。
ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!
2丁拳銃使いの急所ピンポイント早撃ち。
「あぶなっ!」
奴の唯一残っていた生物らしい物は、目。
それだけは残っていた。
激痛で体を揺らし、キイを狙っていた尾は本来あるべき軌道から逸れた。
これでキイは何の躊躇も無く、胴体を切り続ける事が出来る。
さて。
第三段階。
「ホントここが食堂でラッキーだったな」
アカは立つ。
堂々と、蛇の真ん前に立つ。
それが作戦。それが勝利への布石。
そして彼の手元には。
パック入りの納豆。
『…………………』
「おい無言は止めろよそこの2人! なんか俺空気読めてないみたいじゃん!」
『…………………』
「いや、あの、だから、無言は~その~…えっと…」
『話しかけないでください』
「うぅ、何で俺がこんな目にいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
……アカ。
ごめんなちゃいww
……そろそろ俺も仕事をしよう。
胴を切り続けるキイ。
援護狙撃のシロ。
納豆持って逃げ回るアカ。
そして俺のやるべき事は?
……そもそも何でコイツが突然変異してしまったのか。
キューバボアには全身にピット器官がある。
ピット器官とは危険をいち早く察知する物だ。
だが、それでも各部重要な部分に応じて器官の数は比例…とまではいかないが、増えていく。
なら、一番重要な場所はどこか。
「頭、だよな…」
俺はその頭に登って、呟く。
もしシャンデリアが落ちて来る事にピット器官が反応して。
避けられないと判断して。
少しでもダメージを減らそうとして。
そこに俺達がそうだと予想する黒点が作用してしまったら。
その緊急なガードをする為に黒点が過ぎた効果をもたらしたとしたら……!
「コイツをこんなにしちまった原因は、ここに存在する……!」
俺がここまで登れるように神経を切り、コイツに気付かれないようにする為キイが。
目を潰し、俺の存在を認識させない為にシロが。
強烈な臭いで、俺の匂いを少しでも察知させない為にアカが。
そしてコイツの弱点とも呼べるだろう場所を潰すため俺が……!
「お前を止めてやるッ……! 安らかに逝けよ…!」
引き金を引く。
確実に脳にブチ当たるように、至近距離広範囲の散弾だ。
乱射できるようポンプアクション無しのな…!
引く。
引く。
引く!
「あああぁぁぁぁああぁぁああぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!」
そして。
咆哮が木霊し、館内が震える中。
今度こそ、一つの命がようやく地にひれ伏した。
やっとVSキューバボア編、終~了~!
長かった…。頑張ったよ…俺…。
天国のじっちゃん…俺、やりきったよ…!
まぁ、まだ彼らは園内から出られないんですけどね(笑)
負傷したクロ君。
暗躍する謎の人物。
舞台は爬虫類園を抜け、水族館へ…!
そして遂にこの中にも犠牲者が…?
それっぽい感じの予告で締めたいと思います。ノシ