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黒点  作者: フィア
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始局

新作です。いろいろ短編とかの構成練り直していたら何故か連載を作るって言う・・・。


さて、今回はコメディじゃありません。ので、緊張感を出すために前書きをこのシリーズで書くのはこれで終わりとします。


では、ごゆっくりー。


といっても、この1話目、まだ怖い部分無いけどな!ww

 黒点。

 15年前、全人類の3割に感染した謎の病原体、また、病気そのものの俗称である。


 感染の発祥場所は不明。最初に確認されたのはドイツの30代の男らしいのだが、正確な情報ではないため、誰も真実を知らないのである。


 正式名称はbsp。

 Black Star Pointの頭文字が、名称の由来である。

 その病原体に感染した時の症状は、大きく分けて二つある。


 一つ目は、体のいたる所の皮膚が黒ずみ、感染が体中に行き渡ると全身が黒く染め上げられる。


 二つ目として、肉体、身体能力の向上。これにより人類は地球最強種になり、その能力値は百獣の王であるライオン百体を相手に戦闘しても生き残ることができるという実験結果が出ている。


 双方とも抗体を血管に直接打ち込むことにより感染率を抑えることができる。感染率と症状の具合は比例する。


 そして重要なのはこの身体能力向上が体が変色すること意外、ノーリスクということである。これをうまく利用しようと考えたのは何も政府だけではない、同じ事を世界中の人間が考えた。

 政府公認の病原体となった「黒点」。危険な病原体であるため、政府が完全管理をし、満20以上でないと使わせてもらえない。


 満二十歳になると感染者専門職になり、ランニング式自家発電や研究、公務員的な仕事に職を移す。

 それ以外の仕事は小学校を卒業して就職した12歳以上の子供達が働く。


 そう、この日本人の4割が子供のこの国では、子供が経済の発展を担っている。


 それは、これからも続くはずだった。


 全ての人間が笑いあい、働く意味を達成感とし、永遠の繰り返しだと考えていた。


 そう、考えていた。



 ☆=======



「クロ!何やってんだよ!早く食料運べ!」

「ごめん!で、でも、重くって……」

「はぁ?…ったく、お前はホント非力だよなぁ」

「うるさいなぁ…」


 ここは世界巨大生物園「eternal world」。

 世界の未確認生物意外の生物が存在する、我らが木市もくしの観光業者が一番最初に宣伝する娯楽施設だ。

 北に出入り口、東に動物園、南に水族館、西に爬虫類館、中央に分類として微妙な生物が用意されている。


 そんな世界でも有数の施設で働いている僕。15歳。

 ここには従業員が50を越えるほどいる。あまり多い人数とは言えないが、だいたいがコンピューター制御なため、手が足りていないわけではない。


「ほら、片方のバケツこっちによこせ。俺が持って行ってやるよ」

「あ、ありがと…でも、シロの担当のライオン小屋清掃は…」

「いいんだよ、適当にやっとけば。いつも雑用やらされているお前が憐れで憐れで…」

「そんなに上手に嘘泣きするほど憐れに見られてるの僕…」

「ほら、いいから行くぞ!」


 親友のシロは、お客さんの目が痛い中、そう言って僕の肩を担ぎ、笑顔で僕の手伝いをしてくれた。



 ☆=======



 休憩室。昼休みとして休憩時間を取っている僕を含めた5人。

 他の従業員は今もなお、炎天下の中汗をかいて働いている。


「しっかし、あっついわねぇ……地球温暖化が何だとか言ってるけど、南極周辺の海なんて凍らせればいいじゃないない?」

「いや、キイ……どれだけ電力がかかると……」

「えー、だってどうせ人力発電機あるからどーってこと無いジャン?だったら……」

「アホ。ミドリの言う通りだ。だいたい、どんだけ人員用意するんだよ。いくら黒点感染者でも限界はあるんだぞ?なぁクロ?」

「考え方は悪くないんだけどね。どう思うアカ?」

「そうだな……ペンギンが住む場所無くなるのは可哀想だよな……」


 瞬間、ここにいる全員の表情が場の空気もろとも凍る。溶けた時にはみんなの顔は苦笑と化していた。キイだけは爆笑してた。


「な、な、何でそこでペンギン〜!?ぷっ、は!じ、冗談だよね〜!あははははははは!」

「ん?何だ?どこか変な所あったか?」

「ウソマジかよ冗談じゃないの〜!」


 あははははと腹を抱えて壊れた様に笑いだすキイ。僕らと言えば、ただただ口を綻ばすだけだった。


「何だよお前ら、俺、別に変な事言ってないよな?」


 さらに笑いを大きくするキイ。その様子を見て、不思議と僕たちも笑いだす。


 お調子者のシロ、おっとりまったりのミドリ、小悪魔小娘キイ、僕らより2つ歳が上のアカ、そして僕。

 この5人の笑いは、しばらく止まる事は無かった。


 それは、これから起こる事の、嵐の前の静けさに酷似していた。



 ☆=======



「それにしても、業者さん遅くないですか?12時にはここを訪ねるって聞いてたんですけど……」

「ん?業者さん?何の話だったっけ?」

「またお前は……。今日は新しい動物用鎮痛剤が届くから、休憩室で待ってろって園長が言ってたろ?」

「そだっけ?すっかり忘れてたわ」

「まったくキイは……。でも、本当に遅いね」


 僕は壁に掛けられた時計を見る。針は約束の時間から30分も過ぎていた。


「俺、ちょっと様子見てくるぞ」


 そう言ってクーラーの効いた部屋から暑そうに出ていくアカ。

 時間を潰すように、シロが他愛ない会話を再開させる。


「今年はみんなで海にでも行こうぜ」

「はぁ〜?何でアンタなんかと行かなきゃいけないの?馬鹿?行くとしても、ク…アンタ以外で行くわよ」

「ひっっっっでえ!」

「でも、行く時間なんてあります?毎年、この時期はここ、混みますし」

「別に、わざわざ行かなくてもいいんじゃないかな?」


 僕の呟きにみんなが此方を向く。少し恥ずかしかったが、ちゃんと自分の想いを伝えようと思った。


「僕は、みんなで楽しく何かが出来れば、それで幸せだから、さ」


 みんな、笑顔で聞いていてくれた。今はここにいないが、アカも同じ表情をしてくれるんだろうな。


 そう、こんな日々が、ずっと続いていけばいい。

 みんな笑って、冗談を言い合って、馬鹿やって……そんな日々が、いつまででも続いていけばいい……。



 そう思ったのに。





 ズガーーーーーーーーン!



「な、何だ?何が起こった!?」

「分かんない、ケド……何処かの檻にぶつかった気が…」

「アカさん、どうなったのでしょう?」

「俺達も行こうぜ!」


 みんなが幸せになればいい。


 そんな願いさえも、神様は聞き入れてくれないのだろうか。

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